6.悪霊転生
今回も、お付き合いよろしくお願いします。
聡亮の特殊能力が明らかになります。
それでは、ごゆっくりどうぞ。
「キ、キミ。わたしを見下ろすなんて一千億年早いわ。ひざまづきなさい」
エン魔が上目遣いにオレをにらみつける。
オレとエン魔とでは、普通に立っても頭一つ分くらいの違いがありそうだが、エン魔はベッドに腰掛けているので、当然上から見下ろす格好になる。
立って歩く時などは、どうすればいいのかという疑問を問い詰めたかったが、これ以上、面倒なことになるのもどうかと思い、やむを得ず、家来が国王の前でするように、エン魔の前に片膝をつく。
「分かればいいのよ、分かれば」
エン魔は、急に機嫌を直すと、ニヤニヤとした笑みを浮かべる。
オレは、混乱した頭の中を少しでも整理できないかと、率直に尋ねる。
「……で、これは、どうゆう状況?」
「悪霊」
オレの質問に、一言で返すエン魔。
「ん……?」
余計に混乱する頭の中。
「だから、キミは悪霊なの!」
じれったそうに語気を強めるエン魔。
もうオレの頭の中は、混乱の激流にかきまわされていた。
「えっ! 異世界への転生は?」
怒りのボルテージをさらに上げるエン魔。
「もう、いい加減、そこから頭を切り替えてくんない」
最後の願いくらい叶えてほしいと願うオレ。
「のっ、能力、無限の力は?」
「本来なら天変地異を引き起こせるほどの力があるはずなんだけーどねー」
人を小バカにするような、呆れた態度をとるエン魔。
「たぶん無理だと思うけど、一度やってみる?」
まったく期待できないといった様相で言う。
少々切れ気味で、突っかかるオレ。
「やってみるって、どうすんの?」
エン魔が、当たり前でないことを当たり前のようにサラッと口にする。
「思うだけ、思いのまま、思いどおり」
意味不明なエン魔の言葉に、よけいに混乱しながらも、とにかくなんでもいいからやってみることにする。
――よ、よっし!
オレは、両手を軽く握ると、竜巻がまき起こす、すさまじい風の流れを、意識の中心、そのさらに奥底に描き出すように強く念じてみる。
しばらくの間、意識が乱れないように集中していると、いかにも怨霊的な感じのする青黒い炎がオレの体を包み込み、周囲の空間に異変を生じさせ始めた。
――おっと、これ、いけるんじゃない。
その瞬間、体から立ち上る炎は消え、そよ風のような柔らかい風が室内にめぐり始めた。
ニヤリと不敵に口角を上げるエン魔。
「て、天変地異どころか、そ、そよ風じゃない」
あまりの不甲斐なさに、おなかを抱えて笑い転げる。
その姿を、複雑な思いで見つめるオレ。
すると最後に、一陣の強烈な風が吹く。
バタバタバタ。
春一番を思わせるその風は、エン魔のスカートを見事にめくり上げ、パンツ丸見え。
気付いたエン魔は、顔を赤らめてスカートをおさえる。
「悪霊の後は、絶対に地獄行きだからね!」
半べそで、言い放つエン魔。
――さすがエン魔、やっぱり、パンツは、純潔、潔白の白。
そして、またもや頭の中に響きわたる謎の音声。
ピッ。
『 +5 アクリョウポイントガ、カサンサレマシタ』
『ポイントノゴウケイハ86デス』
エン魔の話によると、どうやら悪霊には、その悪霊の怨念の深さや強さ、そして、悪霊を悪霊ならしめる所業――要は、どれだけ悪事を働いたかによって、悪霊ポイントというポイントが付くらしい。
ポイントが多ければ多いほど、天変地異を引き起こせるほどの強烈な力を発揮することができ、いわば、悪霊の力を示す指標となるポイントなのだそうだ。
日本の三大怨霊の一人に数えられる平将門の怨霊などは、3000ポイントを下まわることはなかっただろうと伝えられているらしい。
「なんだかんだと恨みつらみを並べていたから、すごい怨霊になるのかと思ったら、80ポイントよ。80ポイント。これじゃあ、イタズラくらいしかできやしない。」
人の気も知らないで、オレの不幸を本当に楽しそうにケラケラとあざ笑うエン魔。
エン魔こそ、一度地獄に落ちればいいのにとオレは思う。
「わたしのパンツで+5ポイントなんて、ほんとふざけてる……」
とまあ、最後はそれこそ恨みがましく、ブツブツとつぶやくエン魔だった。
聡亮は、悪霊となってしまいました。
ただ、それだけでは、収まりません。
次回は、さらなる事実が発覚します。
お楽しみに!!
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