51.解放と死
読みに来ていただきありがとうございます。
今回も、お付き合いよろしくお願いします。
夢野がデスしそうです。
大丈夫か?
それでは、ごゆっくりどうぞ。
それからさらに三日、オレたちの道のりは、さらに過酷なものになっていた。
いや、オレたちではなく、夢野にとってと言うべきだろう。
高い断崖絶壁の数々。
さらには、地面の亀裂が大きく裂け、底の見えない谷となっていたりする。
オレは夢野に声かけする。
「大丈夫か?」
「……」
夢野にオレの声は届いていないのだろう。
意識を保つのが精一杯といった様相で、ただ無言で歩き続ける。
代わりに、エン魔の不機嫌そうな声が響く。
「だーかーらー。わたしを誰だと思っているの?」
――いや、お前には聞いてない。
親鳥が子にするようなけも娘の餌付け?のおかげで、一時は少し元気を取り戻した夢野だったが、今はもう足取りもおぼつかなく息絶え絶えの状態だ。
さらに、辺りが白くけむり出し、だんだんと視界が悪くなってきている。
最初それは、霧のようにも思えたのだがそうではない。
濃くなるにつれて焦げた匂いが鼻を突き、何かを燃やした煙だということを確信する。
今はもう、数メートルほどの視野しかない。
幸い夢野はある程度呼吸することができているようで、煙による呼吸困難という心配はないようだった。
――んっ?! そう、人のないところに煙は立たずだ。
それを言うなら、「火のない所に煙は立たぬ」だが、これが今、オレの考える希望的思考だった。
そんなことを思いながら、夢野に目を向ける。
すでに、ヨロヨロと引きずるようにしか足を進めることができなくなってきている。
苦しむ夢野を思い、自然と目を細めるオレ。
すると突然、夢野は足をもつれさせ、顔からバタンと地面に倒れこんだ。
オレは、驚いて夢野のそばに駆けよる。
とは言っても、今のオレには肩を貸すことすらできず、ただ見守るほかない。
「夢野! もう少しだ! もう少しだけガンバレ!」
夢野が目を閉じたまま、小さく口を動かす。
「うん、私、ガンバルよ」
言葉とは裏腹に、夢野は、それきり立ち上がることなく目を閉じて眠ってしまった。
夢野を見つめるオレの視線に、エン魔の視線が割って入る。
「もうこれ以上、苦しめないほうがよくない?」
エン魔が指を複雑に組み合わせ、印を結ぶ。
夢野をこの世界から解放しようということなのだろう。
だがそれは、人にとっての死を意味する。
エン魔の強い視線にも、わずかに悲しみの色が見え隠れしていた。
丁度その時だった。
夢野のくちびるがふるえ、消え入りそうな声を発した。
「う、うん、ガン……、バル」
オレとエン魔は、夢野をおいて煙の濃くなる方向へと足を進めた。
煙の濃くなる方向、その火元にこそ人の営みがある。
希望的に考えればそうなのだが、ただの大火災と考えることもできるはずだった。
ただこうなってしまっては、少しでも可能性のあることにかけるほかない。
それにしても、ここまで煙が濃いと周りは一面真っ白といった光景で何も見えない。
夢野はというと、今のところかろうじてこの世にとどまっている――よって、死んではいない。
夢野のうわ言のような一言を生きる意志と感じたエン魔は、審判の間へ送ることを踏み止まり、印を解いたのだった。
夢野には、なんとかシュラフを着せてきたが――オレは夢野に触れることができないのでかなり大変だったのだが、そんなに長い時間放置するわけにはいかない。
そのとき、白い闇に閉ざされた風景のある部分をエン魔が指さす。
「ソースケ! 見て!」
それは、よく目をこらして見ないと煙の濃淡と勘違いしてしまいそうな微妙な光だった。
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淡い光は、聡亮たちの希望の光となるか?
次回、「52.白い闇と光」
お楽しみに!!




