48.燃える列車
読みに来ていただきありがとうございます。
今回も、お付き合いよろしくお願いします。
線路に沿って進んで行くと……。
それでは、ごゆっくりどうぞ。
線路は続くよ、どこまでも……。
オレは、疲労する夢野の気を紛らわそうと、どうでもいい歌を口ずさむ。
オレたちは、エン魔が見つけた線路に沿って第六天魔の暗冥門へと足を運んでいた。
地面が隆起することによって路面には亀裂が入り、高い崖のような断層が至る所で道路を分断している。
もちろん、電気、ガス、水道などライフライン復旧の兆しも見えない。
このことによって交通は分断されてしまっているのだが、この辺りは比較的無事のようで線路も見える範囲では途切れることなく続いている。
さらに、都合のいいことには、線路は暗冥門のある方角に続いているのだ。
しばらく進むと、線路上に一両の電車が放置されているのが見えてきた。
オレは一瞬ではあるが、気持ちが軽くなるのを感じて色めき立つ。
少しでも電車が動くのであれば思いのほか早く暗冥門に近づくことができるかもしれない。
夢野にしてみても、少しは体力の消耗を抑えることができるだろう。
当の夢野は、オレが電車を見つけたことで休息の機会を得ることができたようで、脇にある建物の陰に腰かけて荒い息を整えている。
車両は、電力が途切れたために停止してしまっただけなのか、車両の周りや内部には特に異常は見当たらないように思えた。
とは言っても、直感で言っているようなもので、整備士でもないオレの素人判断だった。
ただ、当然といえば当然なのだが電力は必要なのだ。
オレは、レールの上を子供のようにバランスを取りながら歩いてくるエン魔に手招きする。
エン魔は、オレの意図に気付くとレールから飛び降り、枕木から枕木へと跳ねるようにしてこちらに向かって来た。
オレは、手を上げて電車の架線を指さしながら、なるべくエン魔に伝わるよう言葉を選ぶ。
「この上にあるロープのような部分に小さな雷を落とせない?」
エン魔が渋い表情でオレをにらむ。
「そんなことは簡単なことだけど、わたしは、閻魔よ。大王なの。『どうか落としてください』でしょ」
オレは、セリフを棒読みするかのようにして言い直す。
「どうか雷を落としてください。お願いします」
どこか腑に落ちないといった表情の閻魔。
「なんか心がこもってないけど、まあいいわ」
ズッバーン、ビシビシビシ……。
一瞬、周囲が真っ白になる。
エン魔の雷が架線に落下したのだ。
目を細めなんとか光の中に目を向けると、ゆっくりと列車が動いている。
――イケるか?
そう思いかけたオレだったが、視力の回復したオレの目が見たものは、車内から煙を立ち上げ黒焦げになった車両だった。
列車の中に人が乗っていたらと想像すると、背筋が冷たくなる。
エン魔は、嬉々とした表情で瞳を輝かせる。
「これ、動くよ。動くよ」
俺はただ、そんなエン魔を冷ややかな目で見つめ、苦笑いするほかなかった。
それから、何回か試みてみたものの、エン魔が不器用なのか雷の力を適切に調整できず、列車が動いたとしても、とても人が乗ることができる状態にはならなかった。
「元々、こういうことのために使うものじゃないんだからね」
最後は、癇癪を起したエン魔が手加減なしの雷を放ち、列車は燃え尽きることとなってしまった。
そして、エン魔がちびっ子になって眠ってしまったことにより、やむを得ず列車の残骸の中で一晩野営することになるのだった。
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見事に消し炭と化した列車。
次回、「49.けも耳の餓鬼」
お楽しみに!!




