43.緊縛鬼地獄
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――お、お、おい。ゆ、ゆ、ゆめ、ゆめ……。な、な、なに、何やって……。
崖の上まで無事夢野を引き上げ、その無事を確認するために近づくオレを、夢野の声が制止する。
「いやー! センパーイ! み、み、み、見ないでー!!」
見るなと言われても、驚きのあまり身体が凍り付いたようにまったく身動きがきかず、逆に目が離せない。
ここまで、虚を突かれたことが人生の中であっただろうか。
決して長い人生だったとは言えないが……。
「いやー! おねがーい! センパーイ!」
夢野は、叫びながらも転がることくらいしかできない。
なんと、夢野は、エビぞりになった格好で、手首、足首をまとめて後ろ手に縛られ、まったく手も足も動かせない状態だった。
そのうえ、手足にはどう考えても必要ないと思えるほどロープが巻かれ、さらに、胸から太ももにかけては、複雑に結ばれたロープがいくつもの幾何学文様を身体に刻み付け、きつく身体を縛り上げていた。
――こ、これ、俗に言う、きっ、亀甲縛り……!?
突如現れた、夢野のSMプレイ?に動転したオレだったが、徐々に落ち着きを取り戻し、同時に身体の自由もきくようになってくる。
気を取り直して改めて見ると、太ももや二の腕にロープが食い込み、みだらに開かれた手足は強引に縛られることによって、夢野の身体を痛々しいほど弓なりに拘束していた。
きつく縛り付けられた亀甲縛りは、着衣ごと夢野の身体に食い込み身体のラインを強調していた。
救いなのは、亀甲縛りが着衣の上からなされていて、肌に直接ではなかったことだ。
――いや! 巫女風コスチュームの上からだと、めっちゃエロいぞ。夢野ぉー!!
そんな気持ちは微塵も顔に出さず、オレはロープをほどくため夢野に歩み寄る。
そう、ロープをほどくためにやむを得えないわけで、そのためにあんな所やこんな所、間違ってあそこが見えてしまっても、それは不可抗力だ。
だいたい、おれは、ロープには触れても、夢野には触ることができない。
――なんて、健全。
オレの下心を知ってか知らずか、夢野が半ば半狂乱になって暴れまくる。
とは言っても、見事な拘束で、もがくようなことしかできはしない。
「センパ~イ! 見ないでー! やめてー!」
オレは、精一杯の優しい笑みをたたえながら夢野に歩み寄る。
夢野の表情は、オレの笑顔を不気味としか受け取っていないようだった。
――大丈夫、夢野。オレが隅々まで、しっかりと拝んで、いや違う、ゆっくりと優しく丁寧にほどいてあげるから。
ピッ。
『 +8 アクリョウポイントガ、カサンサレマシタ』
オレの卑わいな妄想が悪霊ポイントを生み出す。
ビシッ。
そんなオレをはばむかのように、突如、強い閃光が走り視野が真っ白になる。
身をかがめ後ずさるオレ。
エン魔の雷だ。
警告のための小さなものだったのか、エン魔自身は心なしか若くなった程度だった。
「この、むっつりソースケ。ほんっと、衆生の考えることは愚かねー」
オレの心を読んだかのように、呆れ果てた表情。
オレは、嫌味を含んだ言葉を返す。
「閻魔様の考えることは、衆生にはわからないね」
緊急時ともいえるこの状況で、なんでまたSMプレイなの?という批判を込めたオレの言葉を、エン魔はまったく嫌味とは取らず、見下すように目を細めると、胸元から雑誌を取り出す。
「わたしは、キミたちと違って一度見たものは、瞬間、覚えちゃうからねー」
下まぶたを指で下げると、舌をチョロッと出し、あかんべえをするエン魔。
――いったいどういった精神年齢なんだろう?
エン魔の取り出した雑誌の表紙には、『緊縛鬼地獄』と題されていた。
コンビニの雑誌コーナーなどによく置かれている、言うなればエロ本というたぐいのやつだ。
――地獄で、なにかの参考にでもしようと思ったのかー?
エン魔は、それがそのようなものだということを理解していないようだった。
結局、オレはエン魔に追いやられ、エン魔が夢野の拘束を解くことになった。
少し惜しい気持ちはあったが、先輩としての体面を失うよりは良かったのかもしれないと、オレは思うのだった。
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次回、「44.最後の食事」
お楽しみに!!




