表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/99

4.勝手放題

「キッ、キミ。それは、非常に危険なものなの。取りに行くから絶対に動かないでね」


 エン魔が打って変わった猫なで声で言う。


 オレがエン魔の胸元から、ポロリと落ちた古めかしい書物を手にした瞬間、エン魔の顔から血の気が引くのがはっきりとわかった。


 オレは、しげしげと書物を見まわす。


 ――この古ぼけたのが、そんなに大事なのか?


 エン魔は、玉座から飛び降りて、慎重な足取りで近づいてくる。


「そのまま、そのまま、なにもしない、なにもしない……」


 オレの一挙一動に気を配りながら、心配そうな表情で、ブツブツとつぶやくエン魔。


 エン魔の凍りつくような表情を尻目に、ニヤリと口角を上げるオレ。


「これって、紙っぽいから破けるよね」


 オレは、その書物を真ん中あたりから開き、両手で裂くようなふりをする。


「ヒョエッ!」


 悲鳴を上げながら、またしても、一瞬固まるエン魔。

 両手を前に出し、なにやら上下に振りながら、少々パニックにおちいっているようにも見える。


「ほんっとに、いい加減にして! いっ、いいわ、地獄行きは勘弁してあげるから、手を放して! 下に置いて!」


 オレは、書物を引き裂くように、両手に力を込めて言う。


「この際だから言うと、オレは、欲望のままに、勝手放題生きるときめたんだ。それができる能力をくれ!」


 エン魔が呆れたように眉をひそめる。


「キミねぇ。やっぱり地獄行き!」


 オレは、その言葉を聞く間もなく、さらに両手に力を込める。


 ビリッ。


 書物から破壊のきざしを告げるかすかな音。


 エン魔がパープルサファイアの瞳を大きく見開き、愕然とした表情を向ける。


「わかった、わ、か、り、ま、し、た! 無限の力が発揮できる能力を与えてあげるわ!」


 エン魔が慌てふためいて、書物につかみかかる。


 オレは、つかみかかるエン魔を、ヒョイとかわす。


「とか言って、返した途端、地獄送りとかしようとしてない?」


 小さな舌をペロッとだすエン魔。


「ばれたか」


 小さくつぶやき、そして、深くため息をつくと、両手の指を複雑に組んで印を結ぶ。

 エン魔が呪文を唱えると、四方に梵字のようなものが施された魔法陣がオレの足元に浮かびあがった。


 と同時に、オレの体に不思議な力が満ちてくるのがわかった。

 約束通り、エン魔がオレに、何かしらの能力をくれたのだ。


「さあ、キミの好きなところへ行くといいわ!」


 言い放ちながら、書物をつかむエン魔。


「さあ、放しなさい!」


 エン魔の言葉に逆らい、オレは、放すまいと渾身の力を込める。

 中ほどから開かれた書物は、オレとエン魔とに引っ張られ、今にも引き千切れる寸前。


 オレの体が魔法陣の中に吸い込まれるように沈んでいく。


「能力も与えたのに! 放しなさいよっ!」


 半べそで叫ぶエン魔。


「ヘッヘッヘ! 残念だけど、好き勝手ついでにもらっていくぜ!」


 真面目だけが取り柄のオレは、もうやめだ。

 これからは、不真面目上等、欲望のままに、勝手放題生きてやる。

 オレは、そう決めたのだ。


 ビリリリッ!


 今度こそ、豪快な破壊の響きとともに、あたり一面に頁を散らしながら、書物が真っ二つに砕け散った。


「な、な、な、何てこと……」


 エン魔が半狂乱になりながら、乱れ散る頁を拾い集める。


 オレは、そんな光景を夢の中での出来事であるかように見ながら、魔法陣の中に沈んでいった……。


いやー。聡亮も思い切ったことをしたもんだ。

でも、そもそも、これが悲劇の始まり……。

また、読みに来てください。

お楽しみに!!


【応援よろしくお願いします!】


「面白そうな話だな」と思ってくれた方、下にある☆☆☆☆☆から、作品への応援お願いいたします。


 面白かったら星5つ、つまらなかったら星1つ、正直に感じた気持ちで大丈夫です!


 ブックマークもいただけると本当にうれしいです。


よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ