39.断層の絶壁
連載再開しました。
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では、ごゆっくり。
※「陰陽の大柱」は、「第六天魔暗冥門」と名称変更しました。
――これは、思ったよりタイヘンだ。
そこらで見つけてきたロープを肩にかけ、オレは、10メートル近くはあると思われる崖の中程で、周囲を見まわす。
第六天魔の暗冥門に近づくほどに、街の状況は、よりひどく、倒壊したビルが道路をふさぎ、今オレのいる崖も地割れによる断層部分だ。
片側三車線ともなる主要道路に亀裂が生じ、分断し、根こそぎ隆起したのだ。
そんなことが一瞬のうちに起こるなんてことは、にわかには信じられないが、これが今、目の前にある現実だ。
もちろん、この高さの絶壁を越えることができる車など、存在するわけもなく、数多の車があちらこちらに乗りすてられている。
それは、車があっても、使用する道路がないのだということを、十分なくらいにうかがわせていた。
主要な広い道路であれば、比較的進みやすいと考えたのだが、数々の障害にはばまれて一向に前進できていない。
常に、登り下りの連続で平坦なところにいることすら錯覚で分からなくなってきている。
非常に厄介な状況ではあるが、唯一の救いは、オレ自身もともと死んでいるし霊体なので、疲れを一切感じないということだ。
さらに言えば、登るときに手足にかかるはずの身体の重さすら、まったく感じることがない。
ただ、霊体であるのなら、瞬間移動まではいかなくても、飛んだりできても良さそうなものだが、霊体としての能力不足なのか普通に登ったり下ったりしなくてはならず、それはそれなりに時間を費やしていく。
上を見上げると、分断された水道管かガス管らしきものを足がかりに、緋色と黒を基調にした小悪魔風コスチュームを身にまとった女神?――「めがみ」じゃなく「じょしん」と読んでなお「?」なのだが――が先へ先へと進んでいく。
そう、ウソかホントか、冥界の王にして死者の生前の罪を裁く神、オレは、エン魔と呼んでいるのだが、自称、閻魔大王様だ。
エン魔もオレ同様、まったく疲れを感じてはいないはずだ。
オレは、聞く必要などまったくないだろう質問を頭上に投げかける。
「エン魔! 大丈夫かー!」
エン魔が虹色に光る髪を軽くはためかせながら、下方にいるオレをのぞき見るように振り返る。
「ソースケ! 何度も同じことを聞かないでくれる。大体わたしを誰だと思っているの? ちょっとは、畏怖の気持ちを表しなさい!」
エン魔が頬をぷくっとふくらまし、パープルサファイアの瞳を細める。
ピッ。
『 +2 アクリョウポイントガ、カサンサレマシタ』
エン魔は、気付いていないようだが、実はエン魔が下にいる俺の方を振り向くと、スカートがひるがえり、エン魔の純潔、潔白の白パンツがプリッと顔を出すのだ。
オレの位置は、崖を這うように登る格好のエン魔を真下から見上げる形となる。
透き通るように白くてムチムチな太ももにムギュッと挟まれて……。
――この構図、めっちゃエロいぞ、エロエン魔。
ゲスな企てとよこしまな心が、悪霊ポイントを生み出す。
オレは、登っては下りるという単調な行動の暇つぶしに、わざとエン魔を振り向かせて、地味に悪霊ポイントを獲得していた。
オレは、にやけそうになる顔をなんとか制して、エン魔に促す。
「もう少し、ペースを落としてやってくれ」
下方を見下ろすと、分断された崖下の道路に、疲れ切った様子でうつむく背中。
切り立った崖に手をかけ、腰を折り、肩を上下に揺らして息をしている。
巫女装束を動きやすいようにアレンジした、緋袴というよりは、もはやミニスカートといった、一見コスプレとも思える姿の女性。
彼女の名は、夢野詩織。
職場の後輩だったはずだが、この世界では、なぜか代々続く夢宮神社の巫女らしい。
でも、夢野自身もオレを職場の先輩として認識している。
世界は、なんといういびつな方向に変貌を遂げてしまったのだろうか。
とにもかくにも、夢野は、巫女であり、オレの後輩でもあるのだ。
そして、夢野だけが正真正銘の――というのも何だかおかしいが、生きた人間だ。
連日のように続く、登り下りを繰り返す果てのない登山のような日々の中で、夢野の体力は明らかに削り取られていた。
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