38.分霊
読みに来ていただきありがとうございます。
とりあえず、話が一段落つきます。
では、ごゆっくりどうぞ。
ピッ。
『ポイントノゴウケイハ425デス』
そして、ファンファーレが鳴る。
チャララ、ラッチャラーン!
『300ポイントヲ、コエマシタ』
『ブンレイデキマス』
『ブンレイシマスカ?』
オレは、烈火の禍事のごとき爆発によって、大黒山伏との対決に勝利したのち、新たな能力?を手に入れていた。
「ブンレイ」は、「分霊」。
読んで字のごとく霊を分けること。
わかりやすく言えば、分身の術といったところだ。
そして、オレは、二つに分裂したのだった。
オレとオレは、二手に分かれて行動することにした。
一人のオレは、エン魔と共に正面から、もう一人のオレは、爆風でガラスの吹き飛んだ窓からビルの外壁をつたって四階に上がり、背後から侵入するという計画だ。
誤算は、三つ。
一つ目の誤算は、主霊のオレと分霊のオレは、別行動を取っているときはお互いの状況を知ることができないということ。
なにかテレパシー的なもので、情報が取り合えると勝手に思っていたのだが、いざ、別行動になって、気付いたものの後の祭りだった。
いや、そもそも、これもオレの力不足なのかもしれない。
それに輪をかけ、お互いがまったくの個人――個霊?といった感覚で、思い思いの行動をする。
まあ、どのみちオレなのだから、考えることは予想できるのだろうが、しっかりとした打ち合わせをしておかなければ、他のオレが何をやらかすのか定かではない。
実際、消滅覚悟で結界に飛び込んでいたし……。
二つ目の誤算は、窓の鍵を開けられないと侵入できないということ。
霊体のはずのオレは、壁なんかは通り抜けることができても良さそうなものだが、普通に窓を開けないと入っていけない。
もしかしたら、これも、オレの力不足なのだろうか?
それとも、なんらかの結界が作用しているのかもしれない。
ちなみに、窓枠などに指をかけ、四階の壁になんとか貼り付いていたオレだったが、体を支えていた指には、まったく重量を感じなかったので、負担もなく、たぶん転落しても痛くもかゆくもなかっただろう。
ただ、下を見ると地面までは途方もなく遠く、やはり恐怖だけはハンパなかった。
痛くないにしても、転落するという恐怖の経験など絶対にしたくない。
三つ目の誤算は、分霊すると悪霊ポイントも分けられることを知らなかった俺は、どちらにどれだけのポイントが割り振られたのかを、まったく気にしていなかったということだ。
後でわかったことだが、本元のオレ、主霊と、分身のオレ、分霊に分けられたオレは、指定しない場合、分霊に10ポイント、残りのポイントが主霊のオレに割り振られるのだ。
そうであれば、これまでのポイント計算も納得がいく。
そもそもオレは、どちらのオレが主霊なのかですら、考えずに行動を起こしていたのだ。
もし、主霊と分霊が逆だったら、もう少し違う結果だったかもしれない。
四階の壁でなかば立ち往生の状態となり途方に暮れていると、突然、もの凄い轟音とともに、四階の窓という窓のガラスが吹き飛んだ。
エン魔の雷だ。
そして、オレは、やっとのことで四階のオフィスに侵入することができたのだった。
ちなみに、このエン魔の雷で、オレは、一度、四階から転落し恐怖の体験をしてしまった。
フリーフォールという直角に落ちていくジェットコースターに乗ったことがあるが、当然、まったく比べ物にならない恐怖だった。
痛くなくても、二度とごめんだ。
そして、もう一度、四階まで登らなければならなかったのは言うまでもない。
「センパーイ」
動きの止まった修羅の手から滑り落ちると、安心したのか、ぺたんと座り込み、泣き出す夢野。
「ソースケ、ほんっともう、いい加減にして!」
オレの消滅にそうとう気を落としていたのか、むくれ顔で目をそらすエン魔。
オレは、きまりが悪く、頭をかく。
「悪りー。悪りー」
言いながら着ていたジャケットを、夢野にかける。
夢野が顔をあげ、泣きっ面でほほ笑む。
エン魔が、オレに横目を向けて、口角を上げる。
オレも、そんな夢野とエン魔を見つめながら、知らず知らずのうちに笑みを漏らしている自分に気付くのだった。
夢野救出、大成功!! パチパチパチ。
さあ、ここから、いよいよ暗冥門に向けて、本格的な閻魔帳探しが始まるのですが、今ある原稿はここまでです。
以降の話は、原稿がある程度まとまったら、またアップしていきますので、しばらくお待ちください。
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