36.修羅
読みに来ていただきありがとうございます。
いよいよ、夢野救出のくだりとしては、大詰めです。
それでは、ごゆっくりどうぞ。
「ソースヶー! やっんめぇっえー! きゃしゅっおんじゃーよー!」
ろれつのまわらないエン魔のさけび声を脇におき、結界に思い切り突っ込む。
空間のカベが一瞬、青い光を放ち、体を押し縮めていくような圧力がオレを襲う。
苦しくともなんともないのだが、ただ、強い圧力だけが全身を包んでいく。
結界に触れたオレの体からは、キラキラと輝く光の粒のようなものが、フワッと噴き出し霧散して辺りに舞い始める。
どうやら、オレの体は、少しずつくずれ始めているのだろう。
結界がオレを押し戻そうとするのと同時に、オレの体を破壊しようとしているのだ。
ピッ。
『 -5 アクリョウポイントガ、ゲンサンサレマス』
『ポイントノゴウケイハ10デス』
エン魔が眼尻にあふれんばかりの涙の玉をためて、前に乗り出す。
「バカ、ソースケの、バカ、バカ、バカ」
オレを止めようと、這うようにしてオレの足首をつかむ。
オレは、そんな閻魔をひきずりながらも、修羅から閻魔帳を奪おうと、めいっぱい手を伸ばす。
結界の奥に深く入りこめば入りこむほど、体への圧力は強烈なものとなって跳ね返る。
伸ばした腕から噴き出す光の粒の勢いが増し、キラキラと光を反射して消えてゆく。
修羅は、閻魔帳を奪われまいと、体を引こうとするが、エン魔の雷のダメージで動くこともままならない。
ピッ。
『 -5 アクリョウポイントガ、ゲンサンサレマス』
『ポイントノゴウケイハ5デス』
オレの腕が光の粒となって霧散し、やせ衰えるように徐々に細くなっていく。
オレは、構わず閻魔帳に手を伸ばす。
たとえ、この世界からオレが消えたとしても、夢野を餓鬼などにはしない。
『アクリョウポイント、ノコリアト4デス』
――こっのー!!
修羅の持つ閻魔帳にオレの指がかかる。
『アクリョウポイント、ノコリアト3デス』
オレの体が、光の粒子となって消えていくのが見るにたえないのか、夢野はうつむき、狂ったように首を左右に振っている。
オレは、そんな夢野に向かって、全身のそれこそ全霊で叫ぶ。
「夢野! 呪符だ!」
『アクリョウポイント、ノコリアト2デス』
オレの声に反応し、夢野が涙でぐしゃぐしゃにした顔をあげる。
オレに目を向けると、瞳に強い光を取りもどし、軽くうなずく。
と同時に、すばやく呪符を手に取ると、修羅に向かって駆ける。
『アクリョウポイント、ノコリアト1デス』
オレの手が閻魔帳を確実につかむ。
夢野が、襲い来る修羅の腕をかわし、高く跳ぶと体をひねり、呪符を持った手を修羅のひたいに伸ばす。
しかし、呪符が修羅のひたいを捉える寸前、夢野は強烈な力で弾き飛ばされた。
そして、そのまま壁にたたき付けられる。
忘れてはいけない、修羅の腕は、もう一本残っている。
『アクリョウポイント、0デス』
瞳に涙を浮かべる夢野の愕然とした顔と悲壮な声に見送られながら、オレは、輝く光の粒となって七色に輝きながら、キラキラと溶けるように消えていった。
「センパイーッ! う、う、ぅ、ぅ、ぅ……」
さすがのエン魔も肩を落とし、オレが消えゆくのをただただ見守るしかないようだった。
「ソ、ソースケー! ソースケー? な、なんてこと……」
オレの消えていった空間を、唖然とした表情で見つめるエン魔。
肩を震わせながら、うなだれるようにうつむく夢野。
修羅は、オレの消滅を確認すると、ニヤリとあざ笑う。
そして、夢野につかみかからんとばかり、壁を背に身動きができない夢野に向かって、麻痺する足を、それでも、ゆっくりと進めていくのだった。
な、な、なんと、ここに来て、聡亮、消滅。
次回、打開策は、あるのか。
お楽しみに!!
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