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35.変異

今回も、お付き合いよろしくお願いします。

手をかざすと、その者の思いによって、閻魔帳は書きかえられます。

それでは、ごゆっくりどうぞ。


 渡良世が閻魔帳に手をかざす。

 すると同時に、渡良世の体に異変が生じ始める。


 全身が膨張を始めたかのように筋肉が増大し、ジャケットやシャツが弾け散る。


 目は、真っ赤な血の色に染まり異様な光を放つ。

 口角は耳まで裂けて鋭い牙をのぞかせる。


 髪は逆立ち、枯れ枝のような奇妙な物質へと変貌し、牛のものとも鹿のものともつかない不気味なつのが頭部から生え始めた。


 まさに、鬼の形相。


 渡良世の異変はここまでにとどまらず、肩から腕がムクムクと生えはじめ、右二本、左二本の新たな腕が生み出される。

 元からの二本の腕を加えると、合計で六本。


 渡良世の姿は、もはや、人間とは言いがたく、まさに、巨大な魔物といった有様だった。


 エン魔がその姿を悲しい目で見つめる。


「修羅ね」


 修羅とは、六つある輪廻転生を繰り返す迷いの世界で人間界より一つ下の修羅界に生まれた者を言うらしい。


 修羅界とは、常に神々に戦争をしかけ続け、敗北し続ける世界。

 常に、怒りと恐怖、悲しみ、苦しみに心をえぐられ、安らぐことすらない。


 閻魔帳が書き変えられたことによって、この世の理がゆがめられ、人間界に修羅を呼び起してしまったのだ。

 渡良世は、知らず知らずのうちに、自らを修羅におとしめてしまっていた。


 エン魔が視線を落とし、小さくつぶやく。


「支配欲の闇」


 修羅と化した渡良世は、閻魔帳に手をかざしつつも、残りの腕を伸ばし、夢野につかみかかろうとする。


 ズバッシャーン!!


 次の瞬間、轟音とともに、強烈な閃光が視力を奪い、オフィス内にあるすべてのものが、一瞬、真っ白な世界の中に飲み込まれた。

 オフィスにある窓という窓のガラスがすべて割れ、飛び散る音が響き渡る。


 視力が回復してくると、左肩からわき腹にかけてを失いよろめく、修羅と化した渡良世の姿が目に入ってきた。


 グォー。


 苦痛にゆがむ修羅の顔。

 エン魔の雷が、猛威を振るったのだ。


 左肩から新たに生えた二本の腕は、見る影もなく消し飛んでいた。


 閻魔帳を持っていた元の腕ともいえるもう一本の腕は、ちぎれてはいるものの何とか原形をとどめた。

 二本の腕は失ってしまったものの、閻魔帳を握っている一本の腕は、他の腕によって肩に押し付けられ、早くも再生が始まっていた。


 かのエン魔はといえば、小さな幼女エン魔となって、クラクラと目がまわったかのようにふらつき、ペタンと床にすわり込んでしまう。


 瞳に涙をため、眠たそうな幼女エン魔。


 強力な破壊力を持つエン魔の雷だが、残念なことに、何度も自在に使えるというわけではなさそうだ。

 それでも、修羅へのダメージは、かなりのものらしく修羅の体の動きがおぼつかないものとなっていた。


 血の赤に染まった修羅の目が、オレを見下すように、にらみ付ける。


「高槻! お前、詩織がどうなってもいいのか」


 修羅は、麻痺の残った体をなんとか動かすと、おぼつかない指で、閻魔帳の頁をパラッ、パラッと、ゆっくりとめくっていく。


「詩織が醜い姿になるのは、見たくはないのだけれど……」


 夢野を餓鬼に変えようとでもいうのか、修羅と化した渡良世が閻魔帳に手をかざす。

 閻魔帳の頁から柔らかな青白い光が、ゆらゆらと立ち上がり始めた。


 ――ま、まずいだろコレ。


 考えるより、行動が先に出ていた。


 幼女エン魔は、オレを止めようと前かがみになって手を伸ばすが、足腰に力が入らないのか立ち上がることもできない。


「ソースヶー! やっんめぇっえー! きゃしゅっおんじゃーよー!」


 頑張ってまぶたを持ち上げてはいるが、よほど眠たいのか目を真っ赤に充血させ、ろれつすらまわっていない。


 オレは、気付くと全力で結界に突入していた。


捨て身の聡亮。夢野を救えるか……。

次回、閻魔帳をとり戻すことができるか。

お楽しみに!!


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