34.激怒
読みに来ていただきありがとうございます。
渡良世とふたたび対峙します。
それでは、ごゆっくりどうぞ。
エン魔が前に出てくれたおかげで、結界の罠を無事やり過ごすことができたオレは、今、まさに、四階のかつての仕事場であったオフィスで、渡良世とふたたび対峙していた。
渡良世は、前回同様、豪華な椅子にふんぞり返り、長い足を大げさに組みなおす。
「よぉ。また来ると思っていたよ、高槻」
夢野もまた、うつむいたまま、渡良世のかたわらの床に、ペタンと座っている。
犬猫のように首輪でつながれ、その鎖の先は、しっかりと渡良世に握られている。
心なしか、以前よりやせ細った印象で、瞳には、もはや光すら感じられない。
どう考えても、今の夢野が幸せなはずはなかった。
「渡良世。夢野を自由にしてやってくれ」
やや強い口調で、にじみ寄るオレ。
「ソースケ、目の前、あるよ」
結界の存在に気付かず不用意に前に出るオレを、たしなめるようにささやくエン魔。
オレは、寸でのところで足を止める。
廊下に張られた結界ほど分厚くはないとはいえ、悪霊ポイント15の危険レベルにある今のオレにとっては、すこし触れただけでもダメージは計り知れない。
オレは、両手を軽く握ると、風の流れを、意識の中心、そのさらに奥底に描き出すように強く念じる。
渡良世が口角をあげ、ニヤリと不敵な笑みを向ける。
「高槻。勘違いしちゃいけないよ。俺たちは愛し合っているんだ」
夢野をつないでいる鎖を外側に引き、夢野に合図を送る渡良世。
「そんなに、俺たちの熱いところを見たいのかな」
夢野が光を失った瞳を渡良世に向ける。
渡良世は、夢野に笑みを返すと、自分の首元を指さす。
しかし、夢野は、ただその光景を夢でも見ているかのように、ボーっと見つめ続けているだけだった。
渡良世は、すこしムッとした表情を浮かべると、猛烈な強さで思い切り鎖を引っ張る。
夢野は、首が折れてしまうのではないかと思われるほどの衝撃に耐えながらも、ヨロヨロと立ち上がった。
夢野の姿は、もはや渡良世の奴隷としか思えなかった。
夢野は、プログラムされたロボットのように渡良世のひざに腰掛けると、渡良世の首筋にキスをしようとでもいうのか顔を近づけていく。
渡良世は、腰に手をまわし、夢野を力強く抱き寄せる。
室内にやわらかい風が流れ出し、つむじ風が巻き起こり始める。
夢野のくちびるが渡良世の首筋に触れる直前、強烈な竜巻が渡良世の顔めがけて吹き荒れた。
オレは、なかばヤケクソ気味に、わけもなく何かもわからない錠剤をまき散らす。
荒れ狂う風と錠剤が、渡良世を襲う。
ジャリ。
渡良世が風と錠剤をさえぎろうと手を顔の前にあげたそのとき、夢野をつないでいる鎖が渡良世の手から離れた。
オレは、ありったけの力を込めてさけぶ。
「夢野!こっちに来い!」
オレの声で、すこし正気を取り戻したのか、夢野は悲しい笑みを浮かべて首を横に振る。
結界がある以上、夢野がこちら側に来てくれないことには、手も足も出ない。
風がやむと、渡良世は髪を整えながら、鋭い目でオレをにらむ。
「優しい俺も、いいかげん怒るよ」
渡良世は、ジャケットに忍ばせたバックから、薄い書冊をおもむろに取り出した。
それは、妖気を放ち、緑がかった白い光に、包まれている。
そう、それは、間違いなく閻魔帳の一部分だった。
エン魔の持っている閻魔帳が呼応しているのだろう、胸元の閻魔帳に手をそえるエン魔。
渡良世は、閻魔帳をパラパラとめくると、ある頁に手をかざす。
すると同時に、渡良世の体に異変が生じ始めた。
閻魔帳の書きかえによって渡良世の体に異変が……。
次回、渡良世、人間やめます。
お楽しみに!!
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