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32.烈火の禍事

今回も、お付き合いよろしくお願いします。

聡亮は、絶体絶命の危機から逃れることができるのか……。

それでは、ごゆっくりどうぞ。


 オレのひたいに向かって、強烈な勢いで飛ぶ錫杖。


 ――!!


 オレのひたいを錫杖がつらぬく直前、オレは、着火用ライターに火をつけた。


 もの凄い轟音と共に、オフィス全体が大爆発を起こす。

 同時に、強風が炎の渦となって大黒山伏に吹きつけ、着ていた修験装束は一瞬で燃え尽き、真っ裸で床に崩れ落ちた。


 錫杖は、爆風で粉々に燃え尽き、方々に飛び散る。

 辺りは、何もかもが木っ端みじんとでもいうような壮絶なあり様となった。


 ピッ。

『アクリョウポイントガ、カサンサレマシタ』


 倒れている大黒山伏に、恐る恐る近づいてよく見ると、毛という毛はすべて燃え尽きて、多少やけどしたり、すすけたりしてはいるが、死んでいるわけではなく、気を失っているだけのようだった。


 さすが強靭に鍛えられているだけのことはある。

 もしかしたら、法力によって、多少炎をかわしていたのかもしれない。


 恐るべし、大黒山伏。


 オレは、念には念を入れ、全裸で突っ伏している大黒山伏の手首や足首などをガムテープで固定する。


 オフィスを出ると、エン魔が壁にもたれてこんにゃくゼリーをほお張っていた。

 霊力が回復したのか、エン魔の姿は、最初に会った時の状態――十八、九くらいだろうか?に戻っていた。


 こんにゃくゼリーを口にしながらも、暗い顔で、ふさぎこむように足元を見つめている。

 不用意に雷を使って眠り込んでしまったことにより、オレが一人で大黒山伏と対決しなければならなくなったことを悔やんでいるのだろうか。


 エン魔も感じたのだと思う。

 さすがにオレ一人では、あの強力な法具を使う大黒山伏は絶対に倒せない。

 それどころか、オレ自身の存在をも危ういと……。


 オフィス内に入ってこなかったところを見ると、大爆発の爆音で目が覚め、同時にオレが消滅したと思ったのかもしれない。


 ――大爆発を引き起こしたのがオレだという発想は、まったくもって、ないのかーい。


 オレに気付いたエン魔は、顔を上げ、驚きの表情をかくしながらも目を向ける。

 そこにかすかな涙が見て取れたような気がしたが、気のせいだろうか。


「そっ、ソースケ、大丈夫なの?」


 死んだ者でも見る様な目で見つめるエン魔。


 ――そもそもオレは、もともと死んでいるのだが……。


 オレは、これまでのいきさつを簡単に説明する。


 エン魔は、オレの存在の無事を確認して気が抜けたのか、いつもにない笑顔ではしゃぐ。


「すっごーい! 烈火の禍事(まがこと)が使えるなんて、ソースケもいよいよ大怨霊ね!」


 ――烈火の禍事とやらが使えたんじゃなくて、多少、頭を使っただけだけどね。


 烈火の禍事とやらが、なんのことなのかさっぱりわからないが、たぶん、オレは、偶然とはいえ、それと同程度には強烈な爆発を引き起こしたのだろう。


 そういえば、エン魔のこんな笑顔を今まで一度も見たことがなかった。

 でも、もともと、エン魔は、笑顔がよく似合うのだと思う。


 パープルサファイアの輝きを宿したつぶらな瞳、さらりと長い銀色の艶やかな髪、口元からのぞく八重歯も――鬼歯はちょっと危険な香りもするのだが、はっきり言ってかわいい。


 そのエン魔のまっすぐな笑顔が、似合わないわけがあるだろうか。

 ただ、いつものエン魔は、不敵な笑み、ほくそ笑む、にが笑い、あざ笑う、といったゆがんだ笑顔しか見せない。


 初めて見るまっすぐな笑顔のエン魔を、そんな思いで、ほほ笑ましく見つめるオレ。


 その視線に気付いたのか、突然、エン魔が耳まで真っ赤して視線を逸らす。

 そして、いつもの高飛車な態度に戻り、悪態をつき始めた。


 ――まぁ、だからこそエン魔なんだけど……。


「ソースケのことだから、『閻魔大王様、お願いします。助けてください』と泣き叫んでくると思ったのに、なかなかやるわね」


 ケラケラと、早速とばかりにあざけり笑うエン魔。


 ――だいたい肝心なところで、居眠りしていたのは、どこのエン魔さまだったっけ。


 エン魔がいつもの調子をとり戻してきたところで、オレは、両の手を軽く握ると、風の流れを、意識の奥底に描き出すように強く念じる。


 空気に動きが生まれ、どこからともなくそよ風が舞い込む。

 そして、次の瞬間、一陣の突風があたり一面に吹き荒れる。


「ちょっ、ちょっと、ソースケ。いい加減にして!」


 スカートをおさえながら、風とたわむれるエン魔。

 小っちゃなエン魔もかわいいが、やっぱり今のエン魔の純潔、潔白、白パンツは最高だ。


 エン魔の白パンツを見ながら、オレは、自分でもやや引きそうなくらい変質的な笑みを浮かべていることに気付くのだった。


 そして、そんなオレに、衝撃的事実が告知されたのだ。


実際は、アルコールが気化しても、それほどたいした爆発はしないかもしれないけど、悪霊効果プラスということで……。

次回、一難去ってまた一難。

お楽しみに!!


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