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3.閻魔大王

「わたしは、冥界の王にして死者の生前の罪を裁く神、閻魔」


 少女の言葉に、耳を疑い口ごもるオレ。


「ん……?」


 いきなり「閻魔だ」と言われても、「おれはライオンだ」と言っている猫のようにしか思えない。

 だいたい、一般的に想像する閻魔大王といえば、鬼のような真っ赤な顔の恐ろしい男神だ。

 いや、偶然、名前がエン魔というだけなのかもしれない。


 それとも、不思議の世界の不思議ちゃんなのか?

 オレが頭をめぐらせていると、少女が涙目になりながら訴える。


「だから閻魔。分かるっ、閻魔よっ!」


 オレは確認のため、もう一度たずね返す。


「エン魔って、あの閻魔大王のこと?」


 少女――いやエン魔が小さな胸をそり返し、指を通して髪をサラッとなびかせる。


「やっと気づいたか、愚かな亡者よ。さあ、私の前にひれ伏しなさい。畏れ、奉りなさい」


 いまいち、納得のいかない気持だが、やむを得ず、頭を下げる。

 エン魔が、先ほどからの調子をとり戻し、勢いづく。


「かといって、今さら崇めても、キミの地獄行きは決定だからね!」


 オレとしては、地獄、地獄と言われても、いまいち、ピンと来ない。

 当然、行ったこともなければ、見たこともない。

 ただ、なんとなく火で焼かれたり、針を刺されたりしているような古い絵を何かで見たことがあるくらいだ。


 でもそれが、本当のことなら、痛みと苦痛の絶えない世界なのだろうと思い直し、すこし背筋に冷たいものが走った。

 異世界への転生どころか、オレは、地獄で苦しみ続けることになるのだろうか。


 エン魔がきめ台詞とおぼしき言葉を発する。


「キミの善業悪業は、すべて自業自得。キミのまいたタネは、キミ自身で刈り取るの……」


「ちょっ、ちょっと待った!」


 オレは、なんとか地獄行きを食い止めることができないものかと、なかば言葉をさえぎるように、割り込みを入れる。


「さっきから気になっていることがあるんだけど……」


 ほおっておいてもよかったのだが、この際、すこしでも話を引き延ばして、逃れる機会をうかがうしかない。


「な、なにっ!」


 やや切れ気味なエン魔。


 オレは、エン魔の胸のあたりを、指で指し示しながら言う。


「気のせいだったら悪いんだけど、その右胸、下着丸見えじゃない?」


 どれほど急いで着替えるとそうなるのかわからないが――そもそも閻魔大王が着替えをするのかが疑問だが、右側の衣服がずれ落ちていて、さっきからブラが丸見えなのだ。


 急いで、胸元を確認するエン魔。

 エン魔の顔が見る見る真っ赤に染まり、頭から湯気が立ち上るのが見えるのではないかというぐらいに上気する。


「最下層の阿鼻叫喚地獄にたたき落としてやるーぅー」


 どう考えても、今のは、オレに何の落ち度もないと思うのだが……。

 いや、どちらかというとこのまま恥をかき続けることを考えれば、早く気が付いて良かったはずだ。

 オレとしては、地獄行きの妨害といった理由がなければ、別に敢えて指摘しなくても、ほっとけばいいことなのだ。

 感謝されることはあっても、阿鼻叫喚地獄とかなんやらは、筋違いな気がする。


 ――阿鼻叫喚ってなんだぁぁぁー!


 予想に反して、結果、オレは、火に油を注いだ状態となってしまったのだった。


 エン魔が、慌てふためきながら、半べそで衣服を整える。

 そのはずみで、胸元から、またもや何かが転げ落ちた。


 それは、玉座のかどでバサッと音を立ててはじかれると、ふたたび、バサッと地面に落下する。

 見ると分厚い書物が落下の勢いにあおられ、無造作に開かれた部分を下にして転がっていた。


 エン魔は、そのことにまったく気付くこともなく、自分の胸元を気にしている。


 和綴じで装丁された、分厚い古文書のような、その古めかしい書物は、妖気とでもいうのだろうか、うす緑のかすかな光に、包まれているように見える。


 色あせた灰青の表紙にタイトルの書かれた紙片――題箋が貼られている。

 題箋の文字は、草書というのか崩し字で書かれていて、オレには読むことはできなかった。


 オレは、おもむろに近づき、それを拾い上げる。

 そして、何気なく目線を上げると、胸元に手をそえたエン魔がそのまま凍り付いたように固まって、射るような視線をオレのほうに向けているのだった。


古文書のような書物が出てきました。

エン魔と言えば、アレですよね。

お楽しみに!!


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