25.エン魔の雷
今回も、お付き合いよろしくお願いします。
やっぱり、みんな地獄送りだろうね……。
それでは、ごゆっくりどうぞ。
「……」
「……」
「……キミたちの善業悪業は、すべて自業自得。キミたちのまいたタネは、キミたち自身で刈り取るの。」
エン魔の声が、頭の中に響きわたる。
「キミたちは、絶対、地獄送りだけどね」
個人的な恨みを付け加えるエン魔。
そんな声を感じ取りながら、昏睡状態の中から、徐々に意識が浮かび上がる。
なんとか意識をとり戻したオレではあったが、目の焦点は合わず、とにかく、聞こえてくる声をたよりに視線を移してみると、ぼやけた視界の中にエン魔がいた。
「閻魔帳が揃うまで、キミたちは審判の間で待ちなさい。」
エン魔は、両手の指を複雑に組んで印を結ぶと、呪文を唱え、四方に梵字のようなものが施された魔法陣を浮かび上がらせた。
その中に沈んでゆく、いかつい警備員二人。
警備員たちは、オレが初めてエン魔と出会った、あの空間――審判の間に送られるのだろう。
どうやらオレは、警備員もろとも、エン魔の落とした怒りの雷に打たれて、気を失っていたのだ。
霊体であるオレの意識を飛ばすほどのエン魔の雷は、どれほどのものなのだろう。
視力がはっきりしてくると、エン魔に起こった異変に気づき、オレは、自分の目を疑った。
なんと、エン魔はどう見ても、低学年くらいの幼女になっていたのだ。
ただでさえ、小ぶりな胸は、もはやペッタンだ。
どれくらい気を失っていたのか、すでにエン魔は、服――というか、例の小悪魔風コスチュームを着ていた。
服のサイズは、体形に合わせて伸び縮みするのだろうか。
「ちょっと、そんな高いところから見下ろさないでよ」
エン魔は、ひどく不機嫌な様子で、オレを見上げる。
ひどいはずかしめを受けたうえに、この有り様、そのすべてがオレのせいだとでも言いたげな表情。
オレは、やむを得ず膝立ちになるが、それでも目線の高さは、立っているエン魔とさほど変わらない。
知らずと、幼女エン魔の頭をなでようと、手をのばすオレ。
「ちょ、ちょっと、キモイ、キモイ、や、やめなさい!」
奇声を上げながら、のけぞるエン魔。
――おおーと、あぶない、あぶない。
パープルサファイアの輝きを宿したつぶらな瞳、さらりと長い銀色の艶やかな髪、もともとエン魔は、性格を抜きにすると――本当は言いたくないのだが、はっきり言ってかわいい。
それはもう、この世のものとは思えないくらいだ。
いや、そもそも、この世のものではないのだが……。
それがもう、幼女のように小っちゃくなってしまうと、可愛いのなんのって、思わず子猫にじゃれつくように、なでまわしてしまいたくなる。
オレは、エン魔の奇声で、我にかえる。
姿は幼女でも、中身は何も変わってはいない。
エン魔の雷は、かなりの霊力を消費するらしく、霊力を消耗すると幼子のようになってしまうようだ。
エン魔は、遊び疲れた子のように、瞳をしばたたかせ、眠たそうに涙目をこする。
顔の前に、ちいさな手のひらをパッと開き、小さな口で大きなあくびをする。
あまりにも眠たげなエン魔に、さすがのオレも気がかりで仕方ない。
霊力の回復には、睡眠が必要なのだろうか。
「おい、エン魔、大丈夫かよ。少し、休むか?」
エン魔が目を真っ赤にして、ふさぎかかったまぶたを気力で引き上げる。
「だれにいってんの。わたしは、冥界の王、閻魔よ。」
眠たいせいもあるのだろうか、かんしゃくをおこしたように続ける。
「先に行ってるから! ソースケこそ、はやく追いついて来てよ!」
小っちゃくなったエン魔は、もはや駄々をこねる幼女のようにしか見えない。
幼女エン魔は、フラフラした足取りで、ビルの中に入って行ってしまった。
小っちゃいエン魔、かーいー。
次回、VS巫女さん
お楽しみに!!
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