23.水鉄砲
読みに来ていただきありがとうございます。
なんと、ビルへの侵入が前回の様にはいきません。
それでは、ごゆっくりどうぞ。
「お願い、お願い、たすけてー!!」
夢野の涙のさけびが、まるでオレに助けを求めているように感じる。
渡良世が閻魔帳を持っていることも間違いない。
オレとエン魔の意見が、ここまで一致したことは今までない。
オレとエン魔は、もう一度、あのビルに侵入し、夢野詩織を救い出し、閻魔帳を取り戻すことを、心に決めたのだった。
オレは、念のため、第六天魔の暗冥門へ出発するために準備したバックパックとヒップバック、さらにはレッグバックを装着する。
――何が、いつ、何の役に立つか、わからない。
大量の荷物を持てる限り、背負いこんでいるのだが、重量などはまったく感じないうえに、身動きにすらまったく支障がない。
騒霊化の効果は、どうなるのかと心配したが、オレの体にある程度密着したものは、オレと同様に見えなくなるようだった。
エン魔はというと、大量のこんにゃくゼリーを胸元にしまい込んでいた。
どれだけ入るのかと、いつも不思議に思うのだが、エン魔の胸元には、国民的アニメの猫型ロボットが持っている「四次元なんとかしゃん」のようなものが、あるのかもしれない。
前回の経験から、たやすくビルに侵入できるものと、高をくくっていたのだが、ビルの正面に立ったオレとエン魔は、大きな誤算をしていることに気が付いた。
ご多分にもれず、ビルの前には、門番ともいえる監視役のいかつい警備員二人が、入り口の左右に立ち、目を光らせていた。
オレは、やつらにはオレとエン魔が見えていないので、前回同様、正面から気付かれずに侵入できると考えていた。
ところがだ。
ピッ。
『 -1 アクリョウポイントガ、ゲンサンサレマス』
『ポイントノゴウケイハ85デス』
――見えている!!
やつらの構えたライフルは、間違いなくオレを狙い、発射された何かが、オレの肩をかすめたのだ。
唖然とするオレを、エン魔が体当たりで弾き飛ばす。
「ソースケ!危ない!」
ライフルから発射されたものは、エン魔の体に当たり、水しぶきを上げる。
――えっ、なに? 水鉄砲?
ライフルから噴射されているのは、どう見ても水のようだった。
「ソースケ! 聖水よ、聖水!」
エン魔が叫ぶ。
やつらは、ライフル型の放水銃で聖水を噴射しているのだった。
「でーも、わたしは、ぜーんぜん、ヘーキ」
オレを見下すように、ニヤリと笑う。
平気なのはいいのだが、全身に聖水を浴びたエン魔は、水浸しになった服――というかコスチュームが体に張りつき、体のラインをくっきりと浮かび上がらせていた。
――ちょっとエロいぞ!エン魔さま。
オレは、そんなことを思いながらも、エン魔の得意げな態度に気をとめる余裕もなく、ただ、低い姿勢でエン魔のかげにかくれることしかできなかった。
「ほーら、ほら、ソースケ。もっとわたしを崇めなさい」
小さな胸をそり返して、なおも得意げに高笑いを決め込むエロエン魔。
――くっそー。こんなときに……。
「ん!!」
腹黒いひらめきを得たオレは、にやりと口角をあげる。
「そーら、エン魔さま。高い、高ーい」
オレは、エン魔の腰を両手でつかむと、高々と持ち上げるのだった。
ヤツら、見えてるし、聖水も地味に危険。
次回、エン魔さま、大活躍?
お楽しみに!!
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