20.渡良世!
読みに来ていただきありがとうございます。
無事、夢野と会うことができるのか。
それでは、ごゆっくりどうぞ。
「少しは、気を付けなさい!」
呪符の貼りめぐらされたドアを不用意にさわり、弾き飛ばされたオレをしり目に、なんの苦もなく、エン魔がそのドアをさらっと開く。
オフィス内に入ると、案の定、そこには、夢野と、そして、渡良世がいた。
「よぉ、高槻、久しぶり。」
渡良世は、高級そうなスーツに身を包み、どこから持ってきたのか、これまた、豪華な一人掛けソファーに腰かけて、あいさつの代わりに軽く手をあげる。
そして、オレの脇に立つエン魔に気付くと、ニヤッと不気味に笑う。
「おっ、それと、そちらのかわいいお嬢ちゃんはどちら様かなー?」
どうやら、渡良世にもオレとエン魔が見えるようだ。
「なーんか、おふたりとも、逝っちゃってる感じだねー。ま、俺も人のことは言えないかー」
オレとエン魔が、この世のものではないことが、わかっているような口振り。
そして、そのことに対しても、まったく動じず、口角を引き上げ、不敵に笑う。
エン魔がパープルサファイアの瞳に強い光を宿し、渡良世をにらみ付ける。
「言葉をつつしみなさい。わたしは、冥界の王にして死者の生前の罪を裁く神、閻魔よ」
渡良世は、一瞬、たじろいだようにも見えたが、すぐにヘラヘラと大爆笑する。
「これはこれは、気の強いお嬢ちゃんだこと、頭の方も逝っちゃってるのかな?」
エン魔は、ありえない屈辱に、涙目で語気を強める。
「わたしをおとしめる数々の所業、キミは、もう絶対、地獄行きだからね」
オレは、そんなふたりのやり取りなどは、まったく気にもとめず、かたわらにうずくまる夢野に釘付けになっていた。
「セ、センパイ……?」
戸惑いながら、消え入りそうな声を発し、うつむく夢野は、渡良世のすわるソファー脇の床にペタンとすわらされ、よく見ると犬猫のように首輪をつけて、鎖につながれている。
そして、その鎖の先は、渡良世に握られていた。
オレの目線に気づいた渡良世が、握った鎖を軽く上げながら言う。
「これ? オレの愛する子猫ちゃんがよくいなくなるからねー」
そして、わざとらしく困った風な表情を顔面に貼り付け、なおも続ける。
「それよりも、部屋に入る前には、ノックぐらいしてくれないと……。僕たちのあられもない姿を見られちゃうじゃないか」
そして、夢野に視線を移す。
「なぁ、詩織」
うつむきながらも首を縦にふる夢野。
「う、うん……」
オレは、この異常な状況に唖然としながらも、夢野に問いただす。
「夢野、これでいいのか?」
渡良世があきれたような仕草で、夢野に向けた問いの返答をさえぎる。
「失礼なヤツだなー。僕と詩織の愛の巣をジャマしないでほしいね」
渡良世が手に握った鎖をやや強く外側に引く。
当然それは、夢野の首輪が強く引かれるということだ。
夢野がそれに反応して、おぼつかない足取りで渡良世に歩み寄り、心をなくした表情で渡良世の膝の上に腰かける。
渡良世が夢野の腰を抱き。耳元で小さくささやく。
「詩織、お前からも言ってやってくれ」
ここへ来てから初めて、夢野がうつむいていた顔を上げた。
「セ、センパイ、お願いだから帰って」
やさしく言う夢野は、瞳にいっぱいの涙をため、にもかかわらず、笑みをかたちづくっていた。
それは、オレに対する感謝の表現なのか、どうにもならない状況へのあきらめなのか、とてもとても悲しい笑顔だった。
夢野ぉー。大丈夫かー。
次回、アレ、使います。
お楽しみに!!
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