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2.小悪魔?



 もし、今度、生まれ変われるようなことがあるのなら、不真面目上等、欲望のままに、勝手放題生きてやる。


 空間の一点をなにげなく見つめながら、とりとめのないことを考えていると、突如、ほんの目と鼻の先に鋭い稲妻が走る。

 一帯が強い光に包まれ、一瞬でオレの視力を奪い、もはや真っ白で何も目に映らない。

 と同時に響きわたる強烈な轟音。


 ――ら、ら、落雷?


 轟音と共にたたき付ける爆風に低い姿勢で耐えながら、手のひらで目をかばいつつ薄目を開くと、不気味な髑髏や妖獣をあしらった巨大な玉座が目に飛び込んできた。


 唖然として見上げていると、かたわらに何かの気配。

 その何かは、間違いなくオレの右隣りに何の前触れもなく突如出現した。


 こんな訳の分からない場所にいれば、何が起きてもおかしくはないと身構えてはいたものの、突然の状況に、膝立ちの低い姿勢から身動き一つできない。


 ふと気づくと、視野の端に、緋色と黒で形づくる異様な影が入り込む。

 恐怖のあまり依然として硬直し、身動きひとつできない。


 それでも、なんとか目玉だけを横に流して、となりの何かに恐る恐る焦点を合わせた。


 ――?!


 この柔らかそうで、それでいて張りがあり、この艶というか何というかは、もしかして、女の太ももでは?

 あまりにも場違いな太ももとの遭遇に、オレの視線がしばし固まる。


「キーモイ、キモイキモイキモイ、キモイ!」


 頭上から機関銃のように、けたたましく浴びせかけられる叫び声。


 見上げると、パープルサファイアの輝きを宿した瞳の少女が、まるで気味の悪い害虫でも見つけたかのようにオレをにらみつけていた。


 さらりと長い銀色の艶やかな髪が、光を反射して虹色になびいている。

 王冠のような髪飾りとその両端に見え隠れするのは、まさかとは思うが角のようにも見える。

 緋色と黒を基調とした和洋折衷とでもいうような、ドレスというかコスチュームを身に着け、そり返るようにしてオレを見下ろす。


 その姿を何かに例えるとしたら、小悪魔といった印象だ。

 しかしながら、やや露出しすぎではないかと思うのはオレだけだろうか。


「キミは、もう、取り調べをするまでもなく地獄、地獄、地獄決定!」


 言い放ちながら、いかにも「イライラしてます」といった足取りで玉座に向かう。


 と、その小悪魔的な少女の小さな胸元あたりから何かが転がり落ちる。

 少し大きめだが、丸いコンパクトを思わせるそれは、オレの目の前までクルクル回転しながら転がってきた。


 よくよく見ると、それは、どうやら鏡のようだった。

 オレは、鏡を手に取ると、なにげなく鏡面に目をやる。


 すると驚いたことに、そのこまかな細工の施された鏡には、オレ自身の生前の様子が映し出されていたのだった。

 しかもそれは、オレの人生の一場面を映像として切り取ったものだ。


 驚きをかくせないオレに向かって、オレよりも驚いた表情で少女が近づく。


「ちょっ、ちょっと!」


 少女は、慌てて鏡を奪い取ると、ふたたび玉座に向かう。

 そして、なかば這い上がるようにして座面まで登ると、やっとという感じで腰かける。


 巨大な玉座は、彼女には大きすぎて隅にちょこんと腰かけた格好。

 黄金に輝く髑髏の細工をあしらった肘掛けには、どう見ても抱きついているようにしか見えず、当然、足は地面に届かずブラブラとしている。


「まったく、唐突にやってきたと思ったら、浄玻璃鏡(じょうはりのかがみ)をのぞくなんて、もう絶対、地獄行き!」


 どうやら慌てて準備してきたようで、少々、とっちらかっているようだ。

 よく見ると、瞳には涙をためていて、もしかしたら直前まで寝ていたのかもしれない。


 少女は、手のひらで口元をかくすようにすると、よりいっそう瞳に涙を浮かばせる。

 そして、ひと呼吸おくと、改めてオレに話しかける。


「で、何か言い残すことある?」


 オレはややかしこまって、率直な疑問を口にする。


「これって、もしかして例の異世界への転生ってやつじゃないのでしょうか?」


 目をパチクリさせて、一瞬、固まる少女。


「キミ、アホなの?」


 あきれ顔で続ける。


「キミは、わたしを誰だと思ってるの?」


 足を組み替え、髪に指を通すとサラッと髪をなびかせる。


「ほーら、ほら、分かるでしょ。畏れ、崇め奉りなさい」


 少女は、決めポーズをとって威厳を示し、気づきを促そうとしているのだろうが、オレの記憶の中には、まったく引っかかるものがない。

 それよりも何よりも、さっきからあることが気になって気になって、まったく話が頭に入ってこない。


 少女は、焦れに焦れて、そしてあきらめたように言う。


「これだから、今どきクンは、神も仏もないんだもん」


 小さくため息をつくと、改めて向きなおる。


「わたしは、冥界の王にして死者の生前の罪を裁く神、閻魔」


閻魔大王、登場!!

エン魔は、まさか自分がごつくて恐ろしい赤い顔の男神として、人々に知れわたっているとは思っていないのでした。

エン魔との掛け合いが続きます。

次回をお楽しみに!!



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