19.不死身?
今回も、お付き合いよろしくお願いします。
いろいろ登場しますが……。
それでは、ごゆっくりどうぞ。
廊下に張られた結界を避けるために、やむを得ず、エン魔の託宣に従って、オフィス内に足を踏み入れたオレ。
薄暗いオフィス内に目を凝らすと、三人の巫女装束の女性が何かしらの作業をしている。
よくよく見ると、神社などでよく見かける、いわゆる破魔矢を作っているようだった。
ただ、少し違うとしたら、その矢は、お守りのためではなく、実際の矢として使用できる様相を呈していたことだ。
破魔というくらいだから、オレにとって、かなり危険なにおいがする。
三人の巫女は、不自然なドアの動きに、一瞬、いぶかしむような表情を浮かべたが、オレのことは、やはり見えないようで、気を取り直して、ふたたび作業をし始めた。
オレは、なんとか気づかれずにオフィス内を抜けて、三階へ続く階段にたどり着くことができた。
「おっそーい」
エン魔は、オレの苦労にも気を留めず、涙目であくびをする。
――ほんとムカつく!
三階に上がると、想像した通り、やはり四階に上がるには、またもや反対側の階段を使用しなければならず、最初の階段の方に戻る形だ。
そのためには、廊下の結界を避けるために、やはりオフィス内を通る必要があった。
ある意味、危険に対する構えがしっかりとできているとも言える。
オフィスへのドアを、できるだけ静かに開き、後ろ手でそーっと閉める。
その瞬間、耳のすぐ横のドアに、もの凄い勢いで、何かがぶつかる衝撃が走った。
身動き一つできずに、横目で見ると、きね形のつかの両端にほこを象徴化した鈷を付けた法具――独鈷杵が突き刺さっていた。
すこし、ずれていれば直撃だ。
さすがに法具ともなれば、これもまた、タダでは済みそうもない。
改めて、オフィス内に目を凝らすと、巨大な人影が二つ。
修験装束、いわゆる山伏の格好だ。
薄暗い中でも、筋骨隆々の引き締まった体躯が見て取れる。
男たちは、錫杖を持って、仁王立ちに構えるが、やはり、オレが見えているわけではないようで、にらみ付ける視線は、まったく別の方向に向けられていた。
独鈷杵は、何か霊気のような気配を感じ取って、反射的に投げたものだろう。
オレは、意を決して、二人の間をそっと通り抜けようと足を踏み出す。
一歩、また一歩と、慎重に足を進めていく。
男の呼吸音が、静まり返ったオフィス内に、異様に響き渡る。
男たちのちょうど真ん中、男たちに挟まれた形になる。
ここで、錫杖を振り回されたときには、たぶん、ひとたまりもないだろう。
錫杖が、チャリと音を発するたび、心臓が縮み上がる思いがする。
オレに心臓があるかどうかはわからないが……。
それでも、オレは、なんとか気づかれずに二人をやり過ごすことができた。
階段に腰かけ、ひまそうにあくびをするエン魔と合流し、四階にあがる。
そして、今まさに、オレとエン魔は、夢野と渡良世がいると思われる四階オフィスの前に立つこととなる。
自分の仕事場でもあったオフィスに、なんとなく懐かしさを感じる。
オレが、そんなことを思いながら、ドアに手をかけた、次の瞬間、ふたたびオレの体に鋭い痺れが走る。
「うご、あご、うご……」
弾き飛ばされ、床に転がるオレ。
そして、頭の中に響きわたる音声。
ピッ。
『 -5 アクリョウポイントガ、ゲンサンサレマス』
『ポイントノゴウケイハ86デス』
床に転がるオレを、エン魔が呆れたように見下ろす。
「少しは、気を付けなさい!」
エン魔が言うには、悪霊ポイントが0になると、オレは、消滅するらしい。
いわゆる、祓われるというやつだ。
どうやら、オレは、不死身というわけでもないようだ。
――や、やばいぞ、オレ!
よく見ると、ドアには、無数の呪符が貼りつけられていた。
結界も危ないが、独鈷杵、呪符にも気を付けないと。
次回、ついにヤツが登場します。
お楽しみに!!
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