13.暗冥門
今回も、読みに来ていただきありがとうございます。
この世は、根本から変貌してしまったのか?
それでは、ごゆっくりどうぞ。
オレたちは、今、コンビニの地下にある核シェルターとおぼしき部屋にいる。
夢野を助けた後、ふと足元に目を向けると、餓鬼と化してしまったコンビニ店長風の男が、首にかけていたネックレスを見つけたのだった。
よくよく見ると、そのネックレスの鎖には、あまり見たことのない、かなり特殊な鍵が付けられていた。
その鍵が、この地下室の扉をあけるものだったのだ。
扉は、異常に分厚く、さほど広くはない室内だが、数週間は暮らしていけるだけ準備が整えられていた。
ミネラルウオーター、缶詰などの非常食、薬品、自家発電用の燃料、空気清浄機など、外部と接触を断っても生きていけるよう設備されている。
コンビニの店内にも、かなりの食料が残っていた。
コンビニ店長は、ひと際、慎重な性格だったのか、自家用の核シェルターを準備していたのだろう。
とは言っても、諸外国では、日本と違って、核シェルターの普及率は、もっと高いと聞いたことがある。
しかし、地下に核シェルターがあって、いつでも避難できるという安心感が、逆に仇となったともいえるかもしれない。
念のためと思い、テレビ、ネットを確認してみたが、すべて機能していないようだった。
オレは、これまでのいきさつを、かいつまんで夢野に話した。
夢野は、初めは信じられないといった表情で聞いていたが、しだいにオレの話を受け入れてくれた。
今のこの状況から、何があってもおかしくはないと思ったのかもしれない。
そして、その夢野もまた、信じられない言葉を口にする。
「私、呪力で鬼を封印できるの」
夢野が言うには、夢野の血筋は、代々、夢宮神社に仕える神職の家系であり、夢野自身も巫女として奉仕しているのだという。
ただ、腑に落ちないのは、オレが生きていたとき、夢野はごく一般的な両親と暮らしていたはず……。
閻魔帳が散らばったことにより、根本から、この世界は変貌を遂げしてしまったのかもしれない。
――そんなことどうでもいいか。
そう言うオレも、悪霊なのだ。
今さら、夢野が、何者でも驚きはしない。
ただ、無事でいてくれさえすれば……。
オレは、そんなことを思いながら、夢野に入れてもらったインスタントコーヒーをすする。
生前――もちろん死んだのはオレだが、会社で夢野が入れてくれたコーヒーの味だ。
どうやら飲み食いしたものは、腹には溜まらないが、味は感じることができるようだ。
騒霊的には、飲み物が消えていくように見えているのだろうか?
夢野がミルクたっぷりで甘々のカフェオレを、両手で口元に運ぶ。
「センパイが、居眠りしてたんで、起こさなきゃと思ったら、突然、大地震……」
オレが、デスクで突っ伏して居眠りしていたときに――いや、すでに死んでいたのかもしれないが、全世界を廃墟に変えてしまうような天変地異が起こったのだ。
天空が裂け、裂けた空間から光が漏れだす。
それは、徐々に広がり異空間へ続く巨大な穴となって、光の粒子を噴きだす。
限りなく噴き出される光の粒子は、美しく輝く光の吹雪となって、この荒れた世界に降り注ぐ。
同時に、地面が避け、裂けた地の底から真っ黒なすすが漂い始める。
それもまた、都市の中心部を飲み込む巨大な穴となって、闇のすすを、激しく吐き出した。
天空からの光と地中からの闇とが互いに融合し、それは、あたかも、光と闇で織りなした巨大な柱のようにそびえ立ち、この世のものとは思えない光景を創り出したのだった。
エン魔が珍しく神妙な面持ちで補足する。
「理が乱れたとき、第六天魔王の槍によって穿たれる第六天魔の暗冥門。もちろん、今までも、そして、未来永劫、創り出してはならなかったはずのものよ。」
それは、美しくも残酷な圧倒的力を見る者の心に刻み付け、畏れと敬いの念を抱かせる。
この天変地異の直後から、オレの行方は、まったく分からなくなってしまったのだそうだ。
そして、この時から得体の知れない不気味なモノが現れるようになる。
奴らは、人を襲って食べる。
いや、実際にはさっきも見たように、食べるのは人でなくてもいいのだろう。
食べられた人は、奴らと同じようになって、満たせない空腹を満たすため、襲い、そしてまた、むさぼり食う。
甘々のカフェオレをゴクリとしながらも、悲しげな表情の夢野。
「私にできるのは、封じることだけ」
夢野がなんだか神社の巫女になっていた。
次回も聡亮と夢野とエン魔の掛け合いが続きます。
お楽しみに!!
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