12.騒霊
今回も、お付き合いよろしくお願いします。
さて、騒霊化とは何なのか?
それでは、ごゆっくりどうぞ。
チャララ、ラッチャラーン!
『100ポイントニ、タッシマシタ』
『ソウレイカ、デキマス』
『ソウレイカ、シマスカ?』
――ソ・ウ・レ・イ・カ?
悪霊ポイントが100ポイントに達したことにより、オレは「ソウレイカ」とやらができるようになったらしい。
オレは、まったくわけがわからないといった意味を、表情にこめて、エン魔に視線をおくる。
風がおさまり、やっとのことでスカートから手を放すことができるようになったエン魔が、ふくれっ面で吐きすてる。
ソウレイカ――騒霊化。
「騒霊。要は、ポルターガイストのこと」
ポルターガイストといえば、物が空中に浮いたり飛んだりする現象だ。
怪奇現象をテーマにしたテレビ番組などで、そういった映像を何度か見たことがあるが、何か仕掛けがありそうで、にわかに信じがたい。
――ほんとうに、そんなことが起こり得るものなのだろうか。
オレは、試しに転がっている空き缶を持ち上げようと、嵐を巻き起こすときと同様――実際に嵐を吹かせたことはないが、心の中に浮遊する空き缶を思い描く。
「……」
空き缶は、ピクリとも動かない。
オレは、もう一度、さらに集中して念をおくる。
「……」
微動だにしない空き缶。
「ど、どうゆうこと?」
首を傾げるオレ。
エン魔が、呆れるにもほどがあるといった表情をしながら、空き缶に近づく。
「何やってんだか」
そう言うと、突然、空き缶を持ち上げて、オレに向かって投げつける。
オレは、空き缶を受け止めようと反射的に動くが、よくよく考えたら空き缶はオレの手をすり抜けるはずだ。
ところがだ。
オレの手は、しっかりと空き缶をキャッチしたのだった。
エン魔が鼻で笑うような目線を向ける。
「そういうこと」
エン魔が言うには、夢野のようにオレたちが見える者は別として、見えない者から見れば、空き缶は、ゆっくり宙に浮き、と思ったら、いきなり横に飛んで、今また宙に浮遊し続けているように見えているのだそうだ。
要するに、オレは、単に物がつかめる様になったというだけのことらしい。
だが、ただそれだけのことだが、これまで空気の様にそこにいるだけだったオレにとっては、なぜか言い知れぬ喜びのように感じるのだった。
「夢野!」
オレは、物がつかめることと再会の喜びをわかちあいたくて、手を差し出しながら夢野に近づき、握手を求める。
「センパイ!」
夢野も手を差し出し、一歩また一歩と足を踏み出す。
そして、オレは、熱い気持ちを乗せて、夢野の手をしっかりとにぎる?
と、次の瞬間、またもやオレの手は、夢野の手を素通りして、大きく空振る。
夢野は、突然のことに身動きすらできず、ポカンとした表情。
オレは、夢野の体をも通過してつんのめり、地面に転がった。
ご多分に漏れず、痛くもかゆくもない。
夢野は、体の穴でも探すかのように、自分の胸やお腹をパタパタと手で触れて、体に異常がないか確認している。
そして、なにごともないことに安心すると、オレの方に視線を向けて、心配げに見つめる。
「も、もしかして、セ、センパイって」
どうやら、夢野は、オレが霊体だということに気付いていなかったようだ。
エン魔が目を線のように細くして、少々引き気味に見下す。
「騒霊が動かせるのは、物だーけ」
要は、人に触れることはできないということらしい。
オレは、腹いせに、落ちていた小石を拾い上げ、エン魔に投げつけてみたが、石はエン魔の体を素通りして転がっていくだけだった。
何にも触れることができない霊体の切なさ。
次回、この世の状況が明らかになります。
お楽しみに!!
【応援よろしくお願いします!】
「面白そうな話だな」と思ってくれた方、下にある☆☆☆☆☆から、作品への応援お願いいたします。
面白かったら星5つ、つまらなかったら星1つ、正直に感じた気持ちで大丈夫です!
ブックマークもいただけると本当にうれしいです。
よろしくお願いします。
 




