11.再会
今回も、お付き合いよろしくお願いします。
悪霊の聡亮も、さすがに夢野を見捨てることはできません。
それでは、ごゆっくりどうぞ。
「痛っ」
瞳が大きく見開かれ、夢野の顔が苦痛にゆがむ。
「!」
餓鬼の長い爪が夢野の胸、その白い肌に赤い筋を引きながら潜り込もうとしていた。
夢野は、必死になって餓鬼の腕を振りほどこうとするが、押し付ける餓鬼の力にかなうはずもない。
徐々に夢野の巫女装束が血の色に染められていく。
呪符さえ使えれば何とかなりそうだが、呪符を持つ夢野の左腕は、餓鬼に上から押さえつけられ、動かすことなどまったくできそうもない。
餓鬼の動きが完全に戻れば、おもちゃのようにもてあそばれ、死ぬまでの間、どれだけひどい目にあわされるかわからない。
――オレにできることは、何もないのか?
このまま、夢野が死んでいくのを見ていることしかできないなら、死んだほうがましだ。
――くっそー。もう死んでいた。
と思い悩むオレの脳裏に、あることがひらめく。
オレは、両の手を軽く握ると、竜巻がまき起こす、すさまじい風の流れを、意識の奥底に描き出すように強く念じた。
その風の流れは、低く地面を這うように進み、餓鬼の手前で大きくうねる。
そして、その風は、餓鬼の顔面めがけて吹きつける。
オレの念に呼応するかのように、怨霊的な青黒い炎がオレの体を包み込み、周囲の空間に異変を生じさせていく。
そよ風のような柔らかい風が、あたりにただよい始めた。
そして最後に、砂ぼこりを舞い上げながら地面を這うような一陣の突風が、叩きつけるように餓鬼に向かって吹き荒れる。
――角度、風速、よし!!
オレは、心の中で確信する。
ペシッ!
凄まじい勢いで舞飛んで来た呪符が、餓鬼の顔をたたき額に貼りつく。
と次の瞬間、餓鬼の体にけいれんしたような震えが走り、餓鬼の動きがにぶっていく。
押さえつけていた腕の力が弱まり、夢野の胸をえぐろうとしていた爪の動きが止まる。
夢野が手にしていた呪符を、絶妙な風の流れでさらい、餓鬼の額に吹きつけたのだ。
「夢野! 今だ!!」
気付くとオレは、あらん限りの声を振り絞ってさけんでいた。
が、そもそも、オレの声が、夢野にとどくはずがない。
ところが、夢野は、いぶかしそうな顔をしながらも、あたりをキョロキョロと見まわすようにしている。
――んっ?!
気のせいかもしれないが、オレは、一瞬、夢野と目が合ったような気がした。
そして、夢野は、かすかにほほ笑んだのだ。
夢野の瞳に凛とした力がよみがえる。
夢野は、力の弱まった餓鬼の腕を払いのけ、両の指を複雑に組んで印を結ぶと、なにかしらの呪文を唱え始めた。
餓鬼の動きが徐々ににぶくなり、完全に動きが止まる。
餓鬼を封印し終わると、夢野は立ち上がり、オレの方にふり返る。
「セ、センパイ?」
夢野が唖然として、立ち尽くす。
「夢野、オレが見えるのか?」
感動の再開を果たしたオレたちのかたわらで、風とたわむれスカートをおさえながら騒ぐエン魔。
「ソースケ、いいかげんにして!」
純潔、潔白のエン魔の白パンツ。
そして、頭の中に響きわたる音声。
ピッ。
『 +5 アクリョウポイントガ、カサンサレマシタ』
『ポイントノゴウケイハ101デス』
チャララ、ラッチャラーン!
そして、突然のファンファーレ。
『100ポイントニ、タッシマシタ』
『ソウレイカ、デキマス』
『ソウレイカ、シマスカ?』
なんとか夢野を助けることができました。
次回、ソウレイカします。
お楽しみに!!
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