10.夢野!
今回も、読みに来ていただきありがとうございます。
夢野VS餓鬼です。
それでは、ごゆっくりどうぞ。
――夢野ぉぉぉー。 なにやってんだお前!!
場違いな夢野の登場に驚きをかくせないオレ。
巫女風の装束を着込んだ夢野は、倒れている餓鬼を封印すると、すかざず、背後から近づくワイシャツの餓鬼に向き直る。
左手の指に呪符をはさみ、手刀を結んだ右手を前に構える。
ジリジリと間合いを詰めるワイシャツの餓鬼。
餓鬼は、自分の間合いまで入ったとみるや、素早く夢野に飛びかかる。
すかさず夢野が右手の指で空に星形――五芒星を描く。
同時に結界が夢野と餓鬼の間に展開する。
餓鬼の腕が結界に触れると、触れた部分が真っ黒な細かなすすのようになって、チリチリと燃え尽きていく。
しかし、夢野の結界は、持続時間がそれほど長くはなく、数十秒で消えてしまうようだった。
さらに、餓鬼の腕も、しばらくすれば、ムクムクと生えかわるように再生していく。
結界が消失すると、待っていましたとばかりに、ふたたびワイシャツの餓鬼が飛びかかってくる。
夢野の指が空を走り、ふたたび結界を展開する。
餓鬼が結界のすきをついて夢野に襲いかかるのが先か、夢野がすきをついて餓鬼に呪符を貼るのが先か、夢野と餓鬼のにらみ合いが続く。
飛びつく餓鬼に向けて、幾度となくそうしたように、ふたたび結界を展開した、次の瞬間、ワイシャツの餓鬼が、足元に倒れている呪符で封印した餓鬼を持ち上げる。
そして、それを盾代わりにして、結界に突撃してきた。
結界に直接触れることとなった封印された餓鬼は、全身を黒い炭のかたまりに変化させていく。
黒い炭になった餓鬼を突き破って、ワイシャツの餓鬼が結界内に侵入する。
盾となり、炭と化した餓鬼の体は砕け散り、細かなチリのようになって大気の中に燃え尽きていく。
夢野は、虚をつかれて、身動き一つすることができない。
ワイシャツの餓鬼が夢野に飛びかかり、夢野の両腕をおさえて、地面に押し倒す。
夢野にまたがり、下あごから大量のよだれを夢野の顔にたらしながらも、突如、動きを止める餓鬼。
盾を使ったとはいえ、体のあちこちが炭化し、再生まで少々時間がかかるようだ。
「やばい、やばい、やばい」
悪霊まっしぐらのオレも、さすがに夢野を見捨てることはできない。
「エ、エ、エン魔。 早く、早く、いっ、行くぞー!!」
オレは、エン魔の腕をつかむと、部屋のドアを押し開けた。
すると、なんと目の前には、押し倒された夢野と、夢野にまたがるワイシャツの餓鬼。
気が動転気味のオレは、我を忘れて餓鬼に向けて体当たりを試みる。
ありったけの力で駆け出したオレの体当たりは、なんと餓鬼の体をすり抜けて思いっきり空振った。
つんのめって地面にたたきつけられるオレ。
といっても、まったく痛くもかゆくもない。
――なんだコレ!
痛くもかゆくもないのはよいのだが、霊体的なオレの体は、物質をすり抜けてしまうのか、こちらからもまた、文字通りまったく手も足も出せない。
ということは、今のオレにできるのは、風を起こすことぐらいしかないことになる。
「エ、エン魔! なんとかしてくれ!!」
半狂乱でさけぶオレ。
エン魔が、いかにもご機嫌ななめというように、ななめ上を向き、ジロリと横目でオレをにらむ。
「ソースケ。 いい加減、少しはわたしを崇め奉りなさい」
言い切った後に、急に力なくボソボソとつぶやく。
「と言っても、今できることはなにもないんだけどね」
唖然としながら、なおもさけぶオレ。
「こっの、だめエン魔! だめエン魔! だめン魔!!」
「なっ、だめン魔言うな!」
ありえない屈辱に、涙目で語気を強めるエン魔。
そうこうしている間にも、ワイシャツの餓鬼は、少しずつ体を再生し、動きを取り戻し始めていた。
ねばつくよだれを、さらに大量にたらしながら、片手を夢野の胸にかけようとする餓鬼。
苦悩にゆがむ夢野の顔。
夢野は、足をバタつかせ、胸にかかった手を振り払おうと腕をつかむが、餓鬼の力に到底かなうはずもない。
――くっそー。 オレだって触ったことないのにー。
んなこと考えてる場合じゃない。
――なにかないか、なにかないか、なにかないか……。
餓鬼の長い爪が夢野の胸、その白い肌に赤い筋を引きながら潜り込もうとしていた。
夢野があぶない!!
聡亮は、夢野を救うことができるのか?
お楽しみに!!
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