1.異世界転生?
さて、転生ものを書いてみようと思い、始めました。
でも、これ、よく考えたら転生じゃないね。
後から気付きましたが、タイトルはこのままです。
それでは、ごゆっくりどうぞ。
オレは、高槻聡亮。
ごくごく一般的な中小企業のいわゆるサラリーマン……。
だったはずが、なぜか今、この世のものとは思えない空間にいる。
360度見渡す限り氷のような光沢を放つ地面。
それがどこまでも永遠と続き、それ以外に目に付くものは何もない。
果てしなく続く広い空間にもかかわらず、動く気力すらまったく起きない。
無限の空間に閉じ込められているという妙な感覚が体を包み込む。
だだ、気分は悪くない。
ここ何年も感じたことのないくらい体が軽く、爽快な気分だ。
もしかしたら、オレは死んでしまったのかもしれない。
死んだのであれば、今の状況にも、ある意味合点がいく。
ふと気づくと、オレはこの空間にいたのだが、その前は何をしていたのか。
頭の中の記憶を探ってみる。
――たしか、仕事場のデスクで終わりの見えない仕事を、それでも一つ一つ確実にこなし続けていたはずだが……。
そのあたりから記憶がとぎれる。
――眠ってしまったのか、あるいは……。
過労死というよく聞く言葉が頭に浮かぶ。
そう言えば、ここ何年も十分な睡眠をとっていなかった。
仕事に追われ、休日でも仕事を持ち帰り、自宅で仕上げる日々。
なかばそれが、当たり前のようになっていて、それがオレの日常だった。
特に、ここ二週間は、まったく寝ていないといってもいい状況だ。
ブラック企業と言いたいところだが、同期の渡良世大也などは、仕事はそこそこにし、休日は趣味やレジャーに明け暮れている。
渡良世は、とにかく要領がいい。
オレが寝ずにこなした仕事はもちろんのこと、他の社員の仕事も、まるで自分だけで片付けたかのような上司への巧みなアピールで、さほどの労もなく出世コースに乗っている。
まあ、ただ真面目だけがとりえのようなオレから比べれば、この社会が必要としているのは、ああいうヤツということなのだろう。
仕事に追われるだけの独身独居の生活。
その中で、唯一のなごみといえば、後輩の夢野詩織の存在だ。
夢野は、常に仕事にかかりきりで、真面目だけが取り柄のこんなオレにも、気をつかって声をかけてくれる。
「センパーイ大丈夫ですか。ちゃんと寝なきゃダメですよー」
やや赤く染めた髪をはずませながら、キラキラとした笑顔でのぞき込む。
「邪魔だ。邪魔」
とぞんざいにあしらってはみるものの、内心はまんざらでもない。
さらに、夢野は非常に気が利いていて、ちょっと集中力が欠けてきたなとパソコンから顔を上げると、意図を読み取ったかのようにコーヒーを入れてきてくれたりする。
一人残って徹夜仕事になったときなどは、夜食にと手作りのおにぎりを準備してくれたこともあった。
ボールペンの芯がなくなれば、代わりのボールペンを間髪入れずに差し出してくるなど、微に入り細に入り非常に気が利くのだ。
以前に、夢野のミスによる大がかりな書類作成のやり直しを、徹夜でフォローしてあげたことに、相当、恩義を感じているのかもしれない。
しかし、夢野の気配りは、なにもオレに対してだけというわけではなく、このフロアの職員で彼女を嫌う人は、まずいないだろう。
かの渡良世などは、夢野をお昼に誘ったりしていて、傍から見ていても大変仲がいい。
噂ではふたりは付き合っているらしく、ゴール目前ではないかとささやかれていた。
オレが死んだところで、その時点では、多少悲しんでくれる人もいるとは思うが、忘れ去られるのも時間の問題なのだろうとも思う。
待てよ、オレが死んだことによって、この空間にいるとしたら、もしかして、よくある――と言ってもファンタジーでの話だが、異世界への転生なんてことになるのだろうか……。
理解できない状況に混乱しているのか、忙しくて埃をかぶったままになっていたRPGゲームの設定のような展開を想像してしまう。
――よし! オレは、決めた。
もし、今度、生まれ変われるようなことがあるのなら、不真面目上等、欲望のままに、勝手放題生きてやる。
――もし、生まれ変われるなら……。
まずは、プロローグ的な部分でした。
次は、いよいよヤツが登場します。
お楽しみに!!
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