第九話 研修センター(1)
バキュン!はい!死亡!
市民センターぐらいの大きさの思ったよりショボい建物が、鹿美華ボディガード研修センターだった。
建物に入るや否や、カウボーイの格好をした男に、指で作った銃で撃たれる。
「なんですか急に」
「律くん!君!今死んでたからね!残りライフ29!」
「は?」
「バキュン!」
もう一回撃たれる俺。なんなんだよこのカウボーイ。
「はい!残りライフ28!最初の訓練だ!ライフ0になったら退場だからね!」
「何なんすか!カウボーイのおっさん!」
「僕の名前はガンマンきよしだよ!バキュン!」
残りライフ、27になる。
撃ちすぎだろコイツ・・・
「自分の命を守れない奴が、他人を守れると思うなよ!バキュン!はい!律くん残り26!」
もう、訓練が始まってるって事か?
俺はとりあえず走り出した。
あのガンマン男から逃げる為に。
つーかガンマンきよしって何!?芸名!?
「バキュン!あっ!外した!」
架空の銃を撃っているみたいだが、当たったかどうかはガンマンきよしの匙加減らしい。
とにかく俺は走った。
建物の構造がよくわからん。
チラっとフロア図を見る。
1階と2階しかない。
とりあえず2階だ!
階段を登る。
登り切った瞬間。
ちーん。
エレベーターからきよしが現れる。
「バッキューン!残り25」
慌ててターンをして階段を降りる俺。
「いいかい律くん!階段なんて追う側からすればボーナスタイムなんだ!」
そう言って、あり得ない段数飛ばしできよしが俺よりも先に1階へ到着した。
「バキュン!はい!残り24!」
「おい!おっさん!俺が圧倒的に不利じゃねーかよ!」
「言い訳すな!ばきゅん!」
えーっ!厳しい!残りライフ23!
つかいつまで続くんだこれ!?
再び態勢を立て直し、階段を上がる俺。
踊り場で折り返し・・・
すぐ後ろから凄い段飛ばしで上がってくるきよし。
・・・今だ!
俺は振り向いて、きよしに回し蹴りをする。
ブンッ!パシッ!すぐに掴まれる。
「なんだろうね、ガチ感が足りないのかな」
バキュン!バキュン!
残りライフが21になる。って・・・
俺の足を掴んだきよしの手が離れない。
片手だぞこれ・・・なんて握力だ・・・
「律くん。高校2年生だったかな?もちろん、人を殺した事はおろか、喧嘩もそうそうないだろう」バキュン。残り20。
「あ、ああ」
「君みたいな甘ちゃんがどうしてスカウトされたのか理解に苦しむ」バキュン。残り19。
くそう。力を入れても、全然うごかねぇ・・・
こんなふざけたカウボーイに、言われ放題、撃たれ放題。悔しい。悔しすぎる。
「俺だってな!喧嘩ぐらいした事あるわ!」
身体の全体重を、ガンマンきよしに預ける。
ドサドサドサ・・・
ふたりで階段の踊り場に倒れこんだ。
「小学生の時だけど・・・」