第六話 奏爽律(2)
「駄目に決まってるだろそんなもん」
開口一番。反対したのは父親だった。
夕食のワンシーン。俺はまず、軽く話しをしてみた。ーもし俺がボディガードになるって言ったら、どう?そう質問した。
「どうして?」
俺はまだ自分や小姫の事なんて言ってない。ただ、父親はきっとこのタイミングで言うことについて、俺が将来ボディガードを目指してたいるのだと、真剣に受け止めている。
「危ないから」
「大金持ちになれるとしても?」
「金より命だ」
まぁ確かにそうだ。父親の言う事は分かる。
母さんは黙ってカニクリームコロッケを食べ始めた。父と子の口論には口出しをしない。それが我が家のルール。
金より命か。
そうだよなあ。俺、ちょっとヒーローみたいなのに憧れちゃってたよなぁ。
ー
ご飯を食べ終え、俺は部屋に戻って、ベッドの上で天井を見ている。すごいありがちな格好で物思いに耽っていた。
トントン、と扉を叩く音。父親だ。
「入るぞ」
「なんだよ」
「さっきの話、気になってな」
「ボディガード?」
「律、お前がそういう話をするのは、珍しいだろ」
「まぁ」
「父さんは、1から10までを否定するつもりはない。ただ、やっぱり命は大切なんだ」
「分かってるよ」
「分かってるなら、どうして、ボディガードなんだ?映画でも見たのか?」
「映画じゃ無い。俺にしか守れない人がいるんだよ」
「なんだそれ?女に惚れたのか?」
「順を追って説明するぞ」
そうして俺は父親に色んなことを説明した。
特異な体質の女の子がいるということ。
その女の子が色んな輩から狙われているということ。
俺はその子にとって特別で、ボディガードにうってつけっていうこと。
金はたくさんもらえるらしい、という事。
ただこの前は海に落ちたり、既に死にかけたということ。
でも、その時、俺がいなかったら・・・
「俺がいなかったら、小姫は助けられなかった」
「なるほど。そういうことか」
父親は難しい顔をしている。
「鹿美華家のボディガードとして、スカウトされてる。期限は1週間後だ」
「何?1週間後?」
「ああ」
「お前、そんなの現実的じゃないだろ」
「細かいとこは後からついてくるよ。今俺が考えてるのは、ボディガードになるかどうか・・・」
「そりゃ、お前、答え出てるだろ」
「え?」
「なりたいんだろ、でも俺の事気にしてる。母さんの事も」
「・・・うん」
「俺はな、金のために命を張るってのが、気に喰わないんだ。命の為に命を張りたい、そう思うだけで俺はお前を誇りに思う。惚れた女のためなら尚更だ」
「いや惚れては・・・」
「律!待ってろ。俺がお母さんと話をしてくる」
1時間後。
ボコボコになった父親が部屋に戻ってくる。
「ダメだった!」
マジかよ!