第五十二話 パープル・カード(2)
全校集会が行われて、大遅林優介先生の紹介がさらっと行われた。大遅林は国語の先生らしい。
そんな事はどうでもよかった。
優花里の肩が外れたまま、休み時間。
意外にも小姫と永遠乃芽衣は関係が悪くなっているわけではなく、他愛も無い話で盛り上がっていた。
俺たちは遠目でその微笑ましい姿を見ながら会話する。
「おい、優花里。顔色悪すぎ」
「呼び捨てすんじゃねーよ童貞」
「早いとこ病院行かないと」
「ふたりで、ひと組の警護だ」
「分かってるけど・・・」
「ただでさえあのクソ兄貴がこの学校に来てるんだ・・・気は抜けない」
心配だ。つーか片腕使えない状況で警護なんて出来るのか?ちなみに今日の水着はシルバーだ。
こうして不安を抱えたまま、放課後になる。
大遅林が俺たちに接近してくる事は無かった。
「それじゃあ、また明日もお願いします」
小姫はそう言って、ハイヤーに乗っていく。
明日もお願いします・・・そうだよな。
小姫は俺たちを、信頼してくれている。
頑張らないと。守らないと。
ハイヤーを見送った瞬間、耐え忍んでいた優花里がふらっと倒れかけた。
「早く病院行こう」
「ああ・・・」
ー
保護者代わりに執事の爺さんがきて、その頃には優花里の肩はラグビー選手ぐらいの感じになっていた。ギプスで固定しているらしい。
「全治2週間の怪我だってよ。わたしゃ野球選手かいな」
やれやれ、みたいな顔をしている優花里。
「補充要員を充てます。優花里さんはゆっくりとお休みください・・・それにしても、どうして脱臼など・・・?」
執事の爺さんが優花里と俺に尋ねる。俺たちは顔を見合わせた。
優花里と優花里の兄さんの事、把握してないのか・・・?
これって、話をした方がいいのか?
「あの」そう言いかけて優花里が話を遮る。
「いやぁ、無駄に修行して身体が疲れちまって、それで体育のソフトボールでやっちゃったのさ」
適当な嘘を作り上げる優花里。
「そうですか。とにかくお気をつけください」
俺たちは爺さんの運転で自宅に着く。
互いの部屋に入る前、廊下で会話する。
「ゆっくり休めよ」
「私に会えなくて、寂しくなんなよ」
「ばか言え。つーか、なんで兄貴のこと、爺さんに話さなかった?」
「あの爺さんが手を組んでる可能性もあるだろ」
「んなわけあるかよ」
「とにかく状況がおかしい」
俺たちの任務は、あくまで小姫の高校生活のサポート・・・
それにしても、組織の事含め、分からないことが多すぎる。
「うん」
補充の要員か・・・ソイツが敵って事もありえる。
とにかく、頑張らないと。
小姫を守らないと。




