第五十一話 パープル・カード(1)
翌日。いつもの場所でハイヤーから降りてきた小姫を俺と優花里は迎え入れる。
「おはよ」屈託のない笑顔の優花里。
「おはよう」と小姫。
「おはよう」なんとか挨拶のできた俺。
小姫に、何か言わなくちゃ・・・
「おはようございますわ」
独特の挨拶で、永遠乃芽依が現れた。
「芽衣ちゃん・・・」
小姫は、言葉を詰まらせていた。
「小姫ちゃん、先日は私達のセキュリティが甘くて、あんな事になってしまって・・・本当にごめんなさい」
永遠乃芽依は、その長い髪が道路に着きそうな角度で、深くお辞儀をした。
「小姫、ごめん。俺が弱かったせいだよ」
同調して、何とか謝る。
「ふたりとも、大丈夫」
小姫は笑顔になった。そう、安心した俺たちの前に・・・
「こんにちわ」
背筋が凍る。
「お、お前・・・」と優花里。
優花里は〝兄貴〟とは呼ばなかった。おそらく、小姫に隠したいからだろう。この前は小姫は意識を失っていたから、この二人が家族である事を知らない。
優花里の兄が現れた。何故?このタイミングで?
「よぉ、永遠乃のお嬢ちゃん」
優花里兄が永遠乃芽衣を指さした。
「あっ、貴方は・・・どなたですか?」
永遠乃芽衣はあの日、優花里兄を目撃しているが、ほんの一瞬、尚且つもう3週間も前の事だったので、覚えていないようだった。
「俺は今日からオマエ達の学校で教師をやらせてもらう〝大遅林優介〟だ」
おお、おそ、ばやし???
小早川の反対???
つーか、偽名かこれ。
優花里兄が・・・教師に?
「永遠乃財閥の支援を受けた学校って事で、お嬢ちゃんには挨拶しとかないとね、って事でよろしくな!」
そう言ってその場を離れようとする大遅林の前に優花里が立つ。
「どういうことだ・・・」
「言った通りだよ。教師をやらせてもらう」
掴み掛かろうとするその手をすぐに弾き、優花里の肩をポン、と叩く大遅林。
「全くもって、元気のある生徒たちだな」
優花里の顔が・・・歪んでいる。苦虫を噛んだ、そんな時の顔があるならそれだ。
「優しそうな先生ですわね」と暢気に喋る永遠乃芽衣。
何の為に来たんだ・・・
優花里の兄貴・・・
そのまま学校まで、歩く。
途中、ほんの少しだけ小姫と永遠乃芽衣と距離を置いて、優花里と並んで歩く。おかしい・・・顔色が悪い。
(おい、童貞・・・)
(その呼び方やめろ)
(・・・外されたんだ、肩を)
(えっ!?)
優花里は右腕をぶらん、と垂らすようにしていた。
コイツ・・・兄貴に肩を叩かれた時に・・・
我慢したのか・・・
兄貴も妹も、尋常じゃない。




