第五十話 鍋パ
「色々あったのにいい度胸してるなお前は」
ぐつぐつぐつ・・・
「優花里ぐらいしかいないし」
ぐつぐつぐつ・・・
コンロと土鍋の乗ったテーブル。
それを挟んで俺と優花里が向き合っている。
ガンマンきよしとの修行後、帰宅した翌日。日曜。
実家から大量の野菜が届いていたのだが、修行していたので腐りかけていた。
そういうわけで優花里を呼んで鍋を囲っている。
俺も優花里も残念ながら料理に秀でていなかったので、とりあえず鍋にぶち込もうという話になった。
「明日から、また学校か」
「小姫ちゃんが心配だ」
優花里・・・
「あのふたりが仲悪くなるのは避けたい」
せっかく、鹿美華小姫と永遠乃芽衣が仲良くなったのに、芽衣ちゃんランドの襲撃事件で小姫が永遠乃芽衣を疑っているんじゃないか、そういうところからまたギスギスするんじゃないか・・・
それが心配だった。
「その前にお前は小姫ちゃんに謝れ」
「うん・・・」
そうだ。あの日、俺が強ければ・・・
しっかりしてれば・・・
小姫を守れたのに。
ぐつぐつぐつ・・・
「そんでお前は私を呼び込んでイチャラブするつもりか?」
「ちっ、違う!ほんとに!食材が余ったから!」
「そんな事言って、昨日の飛行機のコト、気にしてるんじゃねーのか?童貞?」
そういって優花里が色気のないニット姿の右肩をずらした。肩を出して、綺麗な肌を見せつけてくる。
アッハーンという効果音が聞こえた。
「いいから食えよ痴女」
ー
お腹が野菜で満たされた。
「じゃ、そろそろ帰ろうかな」
「うん、今日はありがと」
「あのさ、私は何回でも言うけど、お前の事が好き。振り向いてくれるの待ってる」
「分かった」
「分かった、じゃねーよ」
俺に腹パンを喰らわせ、優花里は去っていった。
バタン。
扉が閉まる。
別にエロい事をしたいわけじゃない。
でも、俺は・・・誰かがいないと辛かった。
自分の弱さが辛い。
また明日から、小姫を守れるのか。
そんな不安に駆られる。




