第四十五話 強くなりたい(2)
「遊園地での出来事は共有されているし、君たちが3週間近く時間があるというのは聞いている」
ガンマンきよしがそう喋る間も、俺と優花里はサンドバッグ相手に、とにかく思うがまま、力を打ちつけた。ストレス発散になりそうだなこれ・・・疲れてきたけど。
優花里はいつにもなく、真剣な顔で取り組んでいる。
いかんいかん・・・俺も他人を気にしてる場合じゃない。
でも流石に右腕が痛くなってきた。
左腕でその硬い物体に力を与える。
「動けなくなるまでやってもらう」
ガンマンきよしは少し離れた位置から、スマホをいじりながら俺たちを見ていた。
ただ、その拳をぶつけていく。
気がつけば左腕も上がらない。それなら、右足だ。優花里の真似をして蹴りを入れる。
・・・ってあれ?優花里・・・蹴りの練習して、普通にパンツ見えてるぞ・・・おいおい、アイスブルーなんてキャラ通りじゃねーか。
「パンツ見る暇があるなら帰れよ」
優花里が冷たく言い放つ。なんか殺気立ってるなコイツ・・・
いや、優花里の言う通りだ。
ー
「はい!終わり!」
その合図があった瞬間、俺も優花里も倒れた。
俺は立ち上がろうとするが、産まれたての子鹿の様にプルプルと足が震えて立てない。
「いいかい、君たち。なぜそんなに疲れてるのか分かるかい?」
そりゃあ!体力の限界まで殴る蹴るを繰り返したからだろ!
「全身の筋肉を使ったからさ!君たちは最初、得意の部位でサンドバッグを攻撃し、そして疲れてくると普段使っていない身体の部分を使い始めた・・・君達はまず、全身を使う事を覚えてもらう!バキュン!!!!」
ガンマンきよしの空砲を俺と優花里は受けてしまった。
「それでいて、体力の限界が来ても、身体を動かさなければならない!君たちは今死んでたからね!」
ま、マジで動けねー。
「今日の練習は終わりだ!」
そう言ってガンマンきよしは消えた。
広くも狭くも感じる武道館で、俺と優花里は動けないまま、大の字で仰向けになっている。
「口動かすのも辛いな」
「しんどい」
無言の時間が続く。
それでも身体はなかなか戻らない。
ガンマンきよしが戻ってくる。
「おい、お前らあとちゃんと部屋戻れよ」
そういって武道館の電気を消した。
真っ暗になる。
嫌でも思い出す。お化け屋敷。




