第四十四話 強くなりたい(1)
芽衣ちゃんランドの一件があり、またしても小姫はしばらく学校を休む事になった。執事の爺さんから伝えられたのは、姿を眩ませるということ、そして、心理的なショックを和らげるという事。
その為小姫は3週間学校を休む予定になっている。
俺は自分の部屋で、ただ絶望していた。
ボディガードとしての意識が足りなかった。
一瞬でも、デート気分などと勘違いしてしまった。
その気の緩みが事態を招いた。
小姫の涙は、痛みだけじゃない。
楽しかったその時を壊された事・・・
そしてこれは俺も疑っているが・・・
あの日、あの場所に、敵が現れた事・・・
考えたくも無いが、可能性はゼロじゃない。
永遠乃芽衣が手引きをしているかもしれない、という事。
・・・強くなりたい。
くそったれ。
俺はイライラして、スマホを部屋の壁に投げつける。
ゴン、と音がして、ベッドに落ちた。
画面は全く割れてなんていない。
スマホの強化ガラスにも勝てねーのかよ・・・俺。
ー〝オマエさぁ、ボディガード名乗るなよ〟ー
優花里の兄が暗躍班にいる事なんて知らなかった。というか優花里も優花里であの男と何かありそうだけど・・・
ドンっ!!!
対抗するように、優花里の部屋からも壁を叩く音が聞こえた。
ー
気が付けば、俺は飛行機に乗って・・・
北国へ来ていた。久しぶりに海鮮丼を食べ、タクシーに乗り、その場所へ着く・・・
鹿美華研修センター。
俺にボディガードのイロハを教えてくれた師匠、ガンマンきよし。師匠に会いにきたのだ。
もっと、もっと強くなりたい。
守るだけじゃ・・・ダメなんだよ。
もう見たく無い。小姫の涙を。もう壊したく無い。小姫の日常を・・・
「授業は始まってるぞ!バキュン!」
相変わらずのカウボーイ姿で、ガンマンきよしは空の鉄砲を俺に向けて撃ってくる。即座にそれを避けた。
「先生。強くなる方法を教えてくれ」
「来ると思ってたよ!バキュン!」
「えっ?」
「1時間前ね、強くなりたいって来た人がいて、今訓練してる」
促され、センターの2階の武道館に行く。
優花里がいた。
ボクシングのサンドを蹴り上げて揺らしていた。
その生足はこの前投げ飛ばされた時に出来たのか、アザとカサブタだらけだった。
「遅えよ童貞。私の方が1時間分強くなれるな」




