第三話 鹿美華小姫(3)
車ってのは、重たいんだな。そんな事を思っていた。どうやら海の上を渡る高速道路から俺たちの車は爆発か何かで脱線し、海へ落ちた。
車はすぐに浮かぶのだと勝手に思っていたが、あれよあれよと海底に沈んでしまった。
沈む間に、すぐに車内は海水で満たされた。
その間に俺たちはまず、ベルトを外し、社内外の水圧が同じになった瞬間にドアを開けた。
こういう時、窓ガラスを割るらしいのだが防弾ガラスが仇となった。
そして、運転手、爺さん、俺、小姫は水面目指して泳ぎ始めた。結構沈んだと思ったけど、海面は直ぐ近くに思える。
その時、俺よりも上にいた小姫の様子がおかしくなった。
コイツ!足をつってる!
そんな、ポーズしてる!
そしたらパニックになってる!口からゴボゴボ空気を出してる!ヤバい!
そうか!俺しかいない!今こいつを救えるのは!
俺は小姫を抱き抱えて、とにかく泳いだ。
水面に4つの顔。
「ぶはぁっ!大丈夫か!小姫!」
反応しない小姫。
「小姫お嬢様は、海水を飲まれています!何とかしなければ!」
あれだ!心臓マッサージ的な事をして、口からクジラみたいに水を出すやつ!
「ってココ!水上だぞ!」
近くに陸地が見当たらない。
「救難信号は出しましたが・・・」
ドライバーは冷静だ。
「おい、しっかりしろ!小姫!」
抱き抱えているので、小姫の顔が近い。海水で濡れてる感じが・・・エロい。いや、今はそこじゃない!つーか、唇の色青!やばいぞこれ!
ブオオオオオオオン!
遠くから、船の音・・・小型の素早い船がこっちへ向かってくる。
「助け舟か!はぁ!助かったぜ!」
「違う!あれは我々のものじゃありません!」
執事が言う。そう言ってる間に、俺たちの元へ小舟が来た。
見るからに黒服エージェントみたいなやつが2名いて、俺たちに向かって声をかける。
「その女を渡せ」
「それは出来ませんな」と爺さん。
「ちょっと!待て!小姫はそれどころじゃない!海水を飲んでるんだ!唇も紫だ!助けるのが先決だろ!」
・・・え?
黒服が俺に向けて、銃を向けている。
「我々に与えられている条件は、生死不問だ」
え?デッドオアアライブってやつ?
その瞬間。船が爆発した。俺たちもその衝撃波で流される。もうついてけねーよこの展開。それでも俺は小姫を離さなかった。
ドドドド・・・・・強い風。
ロケランを持った男が、ヘリに乗っている。
「いやぁ〜、遅くなっちゃってスマン!」
かろうじて聞こえる声。味方か・・・