第二話 鹿美華小姫(2)
「ちょっと待て、恥ずかしいから下ろす」
そう言って俺は小姫を下ろした。近くで見ると結構可愛いし、小ぶりだがおっぱいがある。
「貴方、誰?」
「制服見りゃ分かるだろ、同じ学校の者だけど」
「そう。でも今日で私は転校するわ」
「え?」
「お礼を・・・というか、その前に、ちょっと、手を出して」
俺は手をパーにして出してみた。何かもらえると思ったからだ。
小姫は俺の手を握ってきた。
それも、恋人繋ぎというやつで。
「なっ」
「驚きたいのは私の方よ」
「は?」
「まずはここから離れるわよ」
「ねぇねぇ、意味わかんない」
「いいから」
そう言って小姫は俺の手を取り、俺を執事が倒れた所まで戻る。執事は倒れながらもハイヤーを手配していて、俺たちはそれに乗った。てか展開早すぎ!
ゴゴゴゴゴ・・・とタイヤが道路を擦る音が聞こえる。
「小姫様?この方は?」
「この人、私に触っても何も無かった」
「なんと!?」
「ほら、お前、触ってみて」
急にお前呼ばわりされる俺。俺は差し出された小姫の手を握ってみる。恥ずかしい。
「熱くないのですか?小姫様?」
「うん」
「な、なんと・・・」
「ちょっと!すいません!さっきからおふたりで会話が進んでいて、俺にはサッパリ分かりません!」
「これはこれは・・・」
「お前、将来の夢は?」
小姫は唐突に夢を聞いてきた。
「と、特には・・・強いて言うなら、金持ちかな?」
「金持ちにしてあげるわ。私のボディガードになりなさい」
「は?」
と、その瞬間、ハイヤーのガラスにヒビが入る。
ル!ルパンで見たやつだ!銃弾がガラスに刺さって、放射状にヒビが入ってる!
「え?なにこれ?狙われてる感じ?」
「その通りです。ですがご安心ください。防弾ガラスでタイヤには空気は入っておりません」
「え?大丈夫なの?」
「援護が来ますから。そのうち」
随分と余裕な表情だな。爺さん。
というかさっき襲われた爺さんの足が変な方向に曲がっている。
「じいさん、大丈夫なの?足?」
「大丈夫ではありませんよ。でもこんな怪我、小姫様の苦労に比べればなんて事ありません」
???よくわかんねーな。
「なぁ、全然意味が分かんねーんだけどさ、色々教えてくれ。なんでボディガード?ってか何で小姫・・・さんは狙われてるの?」
「私が特異な体質だからよ」
「え?」
「小姫お嬢様は、他人に触れられると、その箇所からじわじわと火傷していくのです」
「・・・お前を除いてね」
「ええっ!?」
「その身体を研究に使おうという輩が絶えません。涼しい顔している製薬会社も、裏の人間を通して小姫様に迫っているのです」
つまり、小姫は特別な人間ゆえに狙われていて、俺は俺で小姫にとって特別な人間って事か。
「お前はどういうわけか私に触れても、私は傷まなかった」
「どういう訳なんだ」
「お前は何か特別な事情があるのか?」
ええ?俺?
ただの高校生で、部活やってなくて、親はフツーで・・・
「いや、特には無いと思うけど」
「まぁいい。後々調べるかもしれないしな」
「ええーっ!つーかボディガードになるなんて言ってねーんだけど」
その瞬間、ドライバーが伏せて!と言った。正確には、伏せまでしか聞こえなくて、その瞬間大きな爆発音が耳を打ち抜く。鼓膜が破れたかと思った。
ふわっ、からのひゅーん。
車が!飛んでいる!
いや!飛んでいるというか!落下している!
これ、あれだ!遊園地のやつみたいな感覚!
「うあああああああ!!!!」
シートベルトしてて良かったぁーっ!って今はそれどころじゃねぇー!
「ご安心ください!この下は海です!」
ドライバーが流暢に喋る。安心できるかよ!