第十九話 秘密(6)
ストーカーが現れ、優花里に殴られたその日を例えばファミレス事変などと言うのであれば、それから1週間が経過していた。
あの日以来、業務上の会話以外、優花里と会話を交わしていない。
き、気まず過ぎる・・・
今日は下駄箱で小姫と並ぶ。
「おはよう」
「おはよう」
なんだ、最低限の挨拶は出来るのか?
「・・・仲良くやって欲しい」
それだけ言って、小姫は階段を登っていく。
俺たちは普段小姫と距離を取ってるのに、分かるのか、コイツ・・・
って言われてもなぁ。
めちゃくちゃに羅列されていく数式など上の空で
俺はあの日の事を考えていた。
どうして、俺、最低!って言われて殴られたんだ?
よく分かんねーよ。童貞だし。
「じゃあ、この問いの答えを、律くん!」
「どわっ!」
「どわっ!じゃねー!話聞いてろ〜」
どっと沸くクラス。
ったく、ついてねーよ。
しかもよく見てみりゃあのストーカー男、甘山がずっと笑ってやがる。ムカつくぜあの野郎。
そうだ。
まずは、分かんねーけど、優花里に謝ろう。
そう思った日の放課後、異変は起きる。
いつも通り、小姫が下校の準備を始め、俺たちも合わせるように準備をする。優花里との会話はまるでない。今日が何色の水着を着ているのかも分からない。それぐらいに優花里を見てない。
階段から昇降口へ向かう時、俺は優花里に口を開いた。
「あ、あのさ・・・この前は、ごめ」
「おい、集中しろ童貞」
「えっ?」
小姫の前に立つのは、永遠乃財閥のお嬢様、永遠乃芽衣。
「ごきげんよう、鹿美華のお嬢様」
「こんにちは」
その変わらない熱量にイライラしている永遠乃。
「ちょうどね、人手が足りなくて」
「そうですか」
「手伝いなさい、と言いたいのですわ」
永遠乃が小姫に指をさす。すげー嫌な感じだ。
「ごめんなさい・・・お迎えがあるので」
「私は永遠乃芽衣よ」
「そうですか」
「いい?この学校では私がルールなの。私がやれと言ったら皆やるわ」
「・・・ごめんなさい。とにかくお迎えが」
熱量の変わらない小姫に嫌気がさした永遠乃芽衣の両手が、小姫の肩に触れようとする。
「何ですか!?あなたたち!?」
永遠乃の右手を俺が。左手を優花里が掴んでいた。
「まっ、その!仲良くやらない?」
俺は永遠乃に言う。
「私なら暇だけどー?」
優花里も気を利かせた。
「私は鹿美華さんに命令してるの」
「・・・わかりました、やります」
小姫!?




