善人なおもて、悪人をや
もちろん、永井豪先生の作品のヒーローは好きです。
いじめられて、強くなりたかった頃、仮面ライダーの素晴らしき能力に、どれほど憧れたことでしょう。
叶わない願いに直面するときの無力感は、たとえ小学生低学年のときでもありますね。
わたしは改造手術で失敗されたゾッカーのB級要因である。
別に悔しくも、残念でもないと思っている。
優秀な能面ライダーに負け続け、次々と爆死していく後輩の改造人間を見てきた。
胸が痛む。
みな、改造前は良い人ばかりだった。
すこし性格に問題があったり、悩みがあって職場からはみだしてしまったりしたところを、ゾッカーのスカウトマンやウーマンに目をつけられ、高待遇でのヘッドハントという誘いに乗ってしまったり、妖艶なスカウトウーマンのハニートラップに嵌まり、あるいは蜘蛛の毒、あるいは抜け出せない蜘蛛の巣に自由を奪われる。
自らの意思で、悪に容赦ないライダーに立ち向かう者などいない。
ほんの一部のぶっ飛んだサイコパスが数人いただけで、みな被害者なのだった。
なんとかして、この窮状から皆を救いたい。
もともと組織への忠誠心はなく、裏切ることへの負い目も感じない。
しかし、ライダーも彼の仲間も頑なで、勧善懲悪への意欲は既に度を越しているようで、社会で怖れられている誘拐や殺戮、洗脳などのゾッカーの所業も、ずいぶん誇張されつつある。
わたしは、組織にばれないように、この日記を記す。
まもなく、総力戦となり、アジトも研究施設も、職員の憩いの場であったカフェテラスも破壊される。
そこで働く改造人間のお姉さんも逃げ切れる可能性は少ない。
たとえ逃げられたとしても、社会に復帰できる見込みはないだろう。
願わくば、神よ。
阿弥陀如来でもいい。
生き延びることができた哀れな同胞に、救済の手を。
まったく、悪意はありません。
ただ、どこにいても、社会や組織で落ちこぼれる存在はあります。
わたしたちは、なにを希望に生きていけばいいのだろうって、これは人からの評価とか関係ないですね。
一種の孤独感のようにも思えます。