プロローグ
この物語は、とある本と少年が出会った事から始まる冒険の書。
少年の名はファラン、彼は気が付いた時から身なし子だった。記憶に両親の事は全くなかった。今日生きるのも必死であった。顔は金髪のよく似合う男前だったが何せお金がない。だから彼は同い年の子達と比べれば身長は低く、痩せこけていた。
彼は今日食べるのもやっとでスラム街から出てきてはこの村の食べ物を盗んで食いつないでいた。
ーー地球の現代
川原雫33歳は、Webデザインを手掛ける仕事を引き受ける会社に勤務する男だ。彼が勤める会社は、大手企業と言う訳ではなく、その下請けの会社に勤めていた。
彼は、どこにでもいそうな顔をしており、会社と家の往復だけを行う平凡な人生を送っていた。
趣味は、休みの日にやるゲームや漫画本などが好きだった。
彼の勤めている会社はいわゆるブラック企業と言う奴で、朝早くから夜遅くまで働かされていた。金曜日だった彼は、疲れが溜まりきっていたが夜中にフラフラしながら歩いていた。
彼の前に今まで見たことも無いような美しさの黒髪の女性が今まさに車に轢れようとしていた。
川原は、何かに取り憑かれたかのように体が勝手に動きだし彼女を助けようとした。すると彼女の口許が笑みを浮かべて彼は暗闇へと落ちた。
ーーファラン
彼は、今日とうとう食べ物を盗んでいた村で捕まった。
村人達は、彼をどうするかで揉めていた。ある者は「痛めつけて返せばいい」またある者は「ここに住まわせてなんとかしてあげよう」とだがこの村も貧しかった。領主の税金の取り立てが厳しく村人が食べて行くのがやっとだった。
とうとう困り果てた村長は、村から少し外れた悪魔の祠に彼を3日間閉じ込める事でお灸を据える事にした。
入り口は厳重な鉄の扉の鍵を開けて祠に彼を放り投げて、栄養がない彼は意識を失った。
ーー川原雫
気が付くと真っ白な空間に一脚だけ凄く豪華な椅子があった。そこには、髪の毛と髭が伸び放題伸びたじいさんが座っていた。薄い布地で出来たワンピースみたいな服を着ていた。
「川原雫よ、ワシは全能の神ゼウスなり、そなたは死んだのだか異世界に転生するチャンスをやろう。そなたを送る異世界は文明の発達が遅れている世界だ。主には一つだけ能力をやろう。その世界は魔法が使える世界だから、主には全能の魔法を贈るとしよう。蘇ったら魔力を高める特訓をせよ。では去らばだ」
俺にも喋らせろよっと突っ込みを入れる間もなく、暗闇へと引き戻された。
ーーファラン
彼は暗闇から引き戻された。ここは真っ暗で何も見えない。壁を便りに彼は奥へと奥へと進むしかなかった。
(ここはどこなんだ。死んだのか。)
彼は何も分からないまま奥へと進む。そこだけには松明が焚かれていた。そこには、何か分からないが厳重に魔方陣が描かれた中央に古びた本が一冊置かれていた。
ファランは文字が読めないが、彼はどうしてもこの本が気になった。魔方陣の真ん中に置かれている事で封印されている事は、彼は想像で分かったが、この好奇心を抑えつける事が出来なかった。
ファランがこの本にそっと触れると彼の頭がカチ割れるような痛みが走った。そこで彼の頭の中には自分の前世が地球の川原雫として生きてきた時の記憶が泉から水が湧き出すように頭の中で思い出しゼウスの言葉が思い浮かんだ。体からは魔法の力が湧き出した。魔力も少しだけ涌いてきた。あまりの負荷に彼は気を再び失った。
再び起きるとファランは不思議な感覚になった。川原雫としての人格になったのだ。
(この世界に来て魔法が使えるのは分かったが子供になってるじゃないか確かファランだったな。彼の記憶も少し残ってるんだな。悲惨な人生だったんだな可哀想に)
そう川原雫、いや今はファランは思った。そこで手に持っていた本を開けると、封印されていた魔方陣の文字が変わっていき本が空を飛び、本の中からさらに紅く光る魔方陣が浮かび上がり車に轢れようとしていた美しい大人の女性が出てきた。
「やあ雫、今はファランだったわね。妾は堕天使悪魔のベリアルって言うんじゃ。よろしくのぉ」
顔が小さく美しい黒髪の女性は、今は背中から漆黒の羽が生えていた。
「お前のせいで俺は死んだのか?」
「んーちょっと違うかな。妾だって被害者なんぞ。主に出会うまで天使だったのだが、ゼウスのじーさんにこの世界の悪魔の書を破壊する為に堕天使に落とされたんえ」
妖艶な笑みを浮かべる。目は大きく鼻が高く時折見せる八重歯が可愛い、少し話し方が残念だが……。
「主に取り憑き勝手に体を動かして殺した。すまぬ」
「だから天国とか地獄ではなく異世界転生だったんだな。死んだからもう仕方ない10歳からやり直すよ」
「そー言ってくれると有り難いのぉ。妾と一緒に世界中の悪魔の書の破壊を手伝ってくれるかえ?」
「そうするしかないんだろ?まずここから出るぞ。盗みをした罰で居るんだ。脱走するぞ」
「うむ分かったえ、妾に任せるんだえ」
そう言って完全に魔方陣からベリアルが出ると俺と同じ位の可愛い少女へと姿を変えた。
「え?」
「あぁ妾は主と成長してくじゃ」
そう言って松明を手に取り入り口の方に走った。そしてベリアルが『獄炎』と言うと真っ黒な炎が飛んで行き重い鉄の扉が吹っ飛んだ。
そこから必死に走り逃げた。だがファランは忘れていた。空腹だった事を。
そして森を抜けた所であまりの空腹に目の前が再度暗くなった。
評価を付けて頂けたらこれからの作品の執筆活動に頑張れます。
よろしくお願いします。