激突!人間の幼女とゴブリンの男
「ガルルルルルルルルルルルルルルルッ」
おいらはこの瞬間ーーー。
いつから居たのか。
昼食のベーコン卵サンドをーーー。
音の方へ視線を滑らせると。
口に頬張ろうとしたところでーーー。
地面に四つ脚を立て。
その手がピタリと止まりーーー。
動物が敵に威嚇するそれのように喉を鳴らし。
開いたままの口と同じくらいに目を見開いてーーー。
低い姿勢から鋭い視線を向けて。
目があった拍子にアホみたいな声が「あああ??」と漏れ出ていくとーーー。
歯を剥き出しにした幼女が。
そんなまさか、とこめかみから一粒の汗が流れ落ちたときーーー。
タイミングを見計って、大きなゴブリンに向かって地面を蹴った。
ーーー人間の、幼い女の子に命を狙われたのだった。
「ガアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」
「ギャァあああああああああああああああ!!」
ある日の昼の事でございます。
人里離れ、魔獣も寄り付かない深い森の茂みで、二つの奇声が鳴り響いたのでございます。
って、そんな平和なもんじゃなくって!
「キシャアアアアアッ!!!」
一糸纏わぬその子供は一切の手加減なく、何度も飛びかかってきた。
「なになになになに?!?!?!うっわっぶないっ!」
おいらは一度目を座ったまま上半身だけでふいっと避け、二度目は地面を転がって寸手のところで躱す。そうしていい加減立ち上がろうと腰を持ち上げるとーーー。
『ブッッ!!!!』
「ーーーーーーーあ…」
力んだ弾みで盛大に屁をこいてしまった。
小さく声が出てしまったのは、恥ずかしさからではない。
「シャアアアアッーーーーー……!!!?ゲフッげふけふ、けふっ……」
それを吸ってしまって、咽せた挙句、パタっと倒れてしまった幼女を思ってのことである。
「きゅうううううぅぅ……」
「……おいらのせい、だよね」
目を回し、泡を吹いて倒れた幼女においらは誰もいない森の中で辺りを見回したのであった。