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トントン拍子に進むとドキドキするが、悪いことが起きるとは限らない

本日ギリ、2回目の投稿です。


2話前の話で、未成年からは治療費を受け取らないはずが1000ルーク受け取っている記述があったため修正しました。

全体の流れは変わっていません。

 2回目の休憩を終えたところで、残すはロミーら子供達だけになった。

 軽い症状の人が多かったのと、数をこなすうちに回復魔法に慣れたのとで、楽に、そしてスムーズに回復魔法が使えるようになった。そうでなければ、あれだけの人数をこなせなかったと思う。

 

「こんにちは、私はヒカリ。あなたの名前は?」

「ティナ」

「ティナは、どこか痛いところとか、苦しいところとかはない?」

「うーん、よくわかんない。ごはんを食べた後にお腹が痛くなることがあるけど、ご飯を食べずにいても痛くなるし」


 ティナは、ロミーと野菜くずをもらっていた女の子だ。ロミーもそうだが、茶色の髪に茶色の瞳とやわらかい雰囲気を持っている。顔つきもかわいらしいのに、やせ細っていて顔色が悪い。栄養状態がよくないのは間違いないが、胃腸も弱っているのだろうか。

 体を確認していくと、手足は骨が浮き出ているのに、妙にお腹が出っ張っている。もしかしたら、お腹に変な虫でもいるのだろうか。


 ティナと同じような症状の子供は他にもいたので、荒れた胃腸の回復と害虫を死滅させて体外に排出するイメージでヒールをかけてみた。直後、お腹がゴロゴロするという子が何人も出てきたので、見立ては間違ってなかったんだと思う。

 あ、ちゃんと冒険者ギルドのトイレをゴードンに案内してもらったよ!?


「この子はどうやって育ててるの?」


 そう、問題は赤ちゃんだった。どうみてもまだミルクが必要なはずだ。当然ながら、ロミーたちが母乳を与えられるわけがない。


「ロミーお姉ちゃんが稼いだお金で近所の人からミルクを分けてもらっているんだよ!」


 誇らしげに答えたのはルカ。ティナと同じ10歳で、男の子のなかでは最年長、頼れるお兄さんを自負しているのかな?


「ロミー、どのくらいのミルクを分けてもらっているの?」

「それが、よくわからないの。ハンスを抱いてそのまま母乳をあげてくれるから」


 ハンスというこの赤ちゃんも栄養失調状態で、体力がかなり低下してしまっている。そのせいであまり泣かないのだ。広場に来てからかなりの時間が経っているのに、いまだにハンスの声を聞いていない。


 「知り合いで赤ちゃんがいる人いないかな?多分、ルカのいう近所の人もさほど母乳が出ていないんだと思う。早く母乳をあげないと、この子の体がもたない」


 野次馬らも帰りやることがなくなったため、近くで見ていた衛兵たちに声を掛ける。

 ハンスにもヒールは一応かけたが、回復魔法は栄養失調状態を改善させることはできない。早急に栄養を与えなければ、命の危険があるのだ。


「俺の姉貴が子供産んで間もないけど、どうすんだ?」

「できれば、そのお姉さんにハンスの乳母をやって欲しい。報酬は払うから」

「わかった、ひとっ走りして聞いてくるわ!」


 報酬がいくらかも聞かずに走って行ってしまう。たしか、クルトって名前だったかな?一度に何人も紹介されたから、うろ覚えだ。


「じゃあ、ハンスは別として、今日はこれで終了だね」

「あぁ、よくやったな、ヒカリ。こんなちっこい体で宣言通りによくやった!」

「そうだな!ヒカリはよくやったぜ!」

「昨日のあれはガキの戯言じゃなかったんだな!」


 最終的に集まった非番の衛兵6人(クルトも含めれば7人)が口々に讃えてくれるが、肝心の1人がまだやってきていない。この計画がとん挫してしまう可能性もまだ残っているのだから気は抜けないのだ。


「それにしても、たくさん集まったな」

「ほとんどが野菜やパンですけれど、木のカゴを置いて行った人もいますよ。現金は6000ルーク集まりましたね」

「んじゃ、いつまでもここにいても仕方ねぇが、どうすっか」


 予定では、青空治療院(!?)の成功を祝って宴会を開くことになっている。飲むのが好きな彼らは、このイベントも酔っぱらうための口実にする気マンマンだったのだ。


「おーい、みんなぁー、遅くなって悪かったなぁー、話がついたぞー」


 キーパーソンであるテオが通りの向こうから走ってきた!


「おぉ、うまくいったか!?」

「問題ないよ!うまい具合に姉さんに会えたからね!ほら、鍵も預かってきたよ!」


 この世界で初めて出会った人間、テオは、なんと実の姉がこの町の領主の息子に嫁入りしていたのだ!この町に常駐していないため、朝早くから姉たちが住む町まで馬を駆けて、大事な任務を遂行してくれたのだ。


 これは私の計画になかったことで、昨夜テオから提案されて計画を大きく修正させることになった。よい方向への修正だったので、どうしてもうまく話しを付けてもらいたかった。

 彼の提案というのは、前から姉やその夫を通して依頼されていたことで、この広場にある彼らが所有する建物を信用できる人間に貸したいということだった。


 町の中央にあり、立地条件としては最高によい物件なのだが、なにせ町自体がそこまで裕福ではない。そのため借り手がいなくて困っていたのだ。

 ただ、今回はただ借りるのではない。まだ資金力がないため、破格で、あるいは出世払いということで借りる必要があった。交渉役であるテオの手腕が問われていたのだ。


「聞いて驚くなよ!な、ななな、なんと、出世払いでいいとさ!」

「おおーっ!」


 男どもの野太い声が辺りに響く。


「さ、さ、みんなを案内するよ。名義は一応俺にと思ったけど、ヒカリの話をしたら姉さんが食いついてさ、そんな面白い子なら子供でも構わないって、ヒカリを家主に認めてくれたよ」


 何も面白いことをした覚えはないんだけどなぁー。ちょっとモヤモヤするけど、まぁいいや。


 現状を飲みこめていないロミー達も引き連れて、全員でその建物に向かった。

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