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廃墟の国  作者: 慧眼スイッチ
3/3

第二話

なし

「……あんた、どうして俺を助けたんだ?」

俺はベッドで腕枕しながら、隣で縫い物をしている彼女にそう尋ねた。

「何故、そのようなことを?倒れている人が目の前にいたら、普通は助けるものなのではないですか?」

「……最近ちょっと人間不信なもんで。純粋な善意とか、そーゆーのが信じるのはやめたから」

「……だから、自分で自分を撃ったのですか?」

哀しそうな瞳で、彼女はそう言った。

「……そんな親が死んだみたいな顔するなよ」

「でも、そんな悲しいがあったたのに、私……」

「所詮、赤の他人が自分の意思でしたことだ。あんたに責任は……、まぁ、見ず知らずの信頼できるかわからんやつに銃を渡した以外にはねーよ」

俺は天井を睨みながらそう言った。

「ま、そうは言っても助けてくれてありがとうな。ぐだぐだとほざいたけどあんたのおかげで助かったよ。えぇと……」

「クロエ・リズです。貴方のお名前は?」

「霞ノかすみのゆう。ありがとう、リズ。服とかまで世話になっちゃって……」

「いいえ、気にしないでください。それよりもサイズは大丈夫ですか?あいにく寝巻きに使えるような男の服はそれしかなくて……」

「いいや、大丈夫。それより俺の服ってどうした?棄てちゃった?」

「いいえ。幽さんの物ですし、手元にありますが、さすがにもう着れるような状態では……」

まじかぁ、と思ったがそれも仕方ないか……。海水に浸かっただけでもやばいのにその後血塗れにすればそりゃ、まぁもう着れる状態ではないか……。

「愛着のある服だったのですか?」

「いや、まぁ、着慣れた服だったから多少惜しかっただけだよ。心配どうも」

「そうですか。それは残念でしたね」

「……なぁ、ちょっと聞いてもいい?」

「ええ、構いませんよ。私にわかることならお答えできます」

俺はそう言ってくれた彼女に甘え、不足していた俺の現状に関する情報を集めることにした。

「今って何日?」

「九月の、八日ですね」

「何年?」

「神世歴四五二年」

「ここって、何処?」

「地名、ですか?」

「そそ、地名。ついでにこの辺の特徴ってか、気をつけた方がいいこととかも教えて。俺ちょっと遠くから来たもんでこの辺の土地勘が無いんだ」

「この辺は『岬街』と呼ばれています。西と北側には荒野があり、東側には海が、南側には川があって、その向こうは湿地帯になっていて、危険なモンスターが生息しているんです」

「モンスター」

「えぇ、モンスター」

なるほどね、この世界、モンスターなる存在がいるのか……。

「そいつらはあれで倒せんの?あのライフル」

「七.六二ミリ弾のライフルですからね……。小型のものなら倒せますが……」

「なるほどね……。どうもありがとう」

「どういたしまして。なにか、お役に立ちましたか?」

「まぁね」

正直、驚愕の新事実とか、曖昧すぎる情報が多すぎて、処理に困ったが、まぁ情報は無いよりはマシか。『岬街』、東側の海、南側の川、この家が水辺にあり、俺が倒れていたのは北か西の荒野だったという事実。モンスターなる存在の確認。ライフルの口径は、俺の世界と同じもののようだが……。

「奇妙なことを聞かれるのですね。まるで小説の登場人物みたい」

彼女は不思議そうな顔でそう言った。

「まぁ、ちょっと訳ありで」

実際、小説のような出来事に巻き込まれている身としては、その例えは少し身に染みた。

「んー、どうすっかなー」

色々考えてはみたが、現状手詰まりである。置かれている状況に対して、情報が圧倒的に不足している。

「なにか、困っているのですか?」

唸る俺に対し、リズは心配するようにそう聞いた。

「身の振り方とかね。当分はこの街を出れないとだろうから……」

現状行くあてがないどころか、この世界の知識すらほとんどない。これを困っていると言わずしてなんという。

「もし、良かったら、相談に乗りますよ?」

「いや、リズにこれ以上迷惑かける訳にも……」

しかし、リズは躊躇する俺をものともせずに手を差し伸べた。

「困った時はお互い様ですから」

そういう彼女の笑顔を見て、俺の心が少し疼いた。

御静読ありがとうございます

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