みくびるな、家電の進歩と孫の成長
はじめまして!
初投稿のド新人、ユルイです。
アメトーーク!の家電芸人を見て思いつき
手軽に読める短編に挑戦してみました。
題材変えていつか長編作りたいです。
「はい、子供電話相談室です」
「もし、もし」
幼い女の子の声だ。
「はいもしもし、何ちゃんかなー。お名前教えてもらってもいいかなぁ」
「ミーコ」
「ミーコちゃん、あら、可愛いお名前。こんにちはミーコちゃん。ミーコちゃんはいくつかなー」
「4つ」
「4つかー、そっかぁ。今日はどんなお悩み相談かな」
「うん、おばあちゃんがねー、あのねー、やさしいの」
「おばあちゃんが優しい。いいねー、優しいおばあちゃん。うんうん、それで」
「あのね、おばあちゃんね、おばあちゃん。まえね、ミーコにおこってばっかりだったの」
「うんうん、そっかぁ。前は怒りっぽかったのかなー」
「でもね、ミーコがね、このまえね、おさらをわっても、ごはん、のこしてもね、あとね、いろいろね、おこらなくなったの」
「うんうん。優しさかなー」
「おばあちゃんは、まえのほうが、なんかね、こわかったけど、たまにおやつとかくれたとき、やさしくてわらっててよかった」
「うんうん、ミーコちゃんは厳しいけど、元気なおばあちゃんが好きなんだね。なんで、優しくなったんだろうねー」
「なんで……」
電話ごしのミーコの声が急にどもり少しの時間が経過する。今迄の話し方からすると違和感を覚える。すると
「うん、あのね、あのね……なんか……」
声がうわずり、震えていた。
「パ、パパとね、ママね、しんじゃったの……」
「えっ!」
新米オペレーターの晴美は思わず声をあげた。隣の暇そうな先輩と目が合う。先輩、恵子は眉をひそめた。
「クルマでね……、ミーコのね、おむかえにむかっ……ヒッ。おっきい……ヒック。おっきいダンプカーが……」
4歳の女の子がしゃくりあげながら、思い出すのも辛いであろう事実を絞りだすように言葉にする。
「そんな……」
晴美は恵子の方を見ながら口を押さえている。恵子は只事では無いと感じ、晴美の手元のメモを見る。おばあちゃん、優しい態度、変化、パパママ、事故死、そう書かれていた。
「たぶんね……ヒッ。おばあちゃん……ヒック。そ、それから、だ、だと」
「うん、うん……」
「まえの……ヒッヒック。ミーコにおこってもげんきな……。だったおばあちゃんに……」
「ミーコちゃん……うぅっ」
晴美は何か答えたい、伝えなきゃ、だが涙が止まらない。今すぐこの子の力になりたい。でも涙が止まってくれない。感情が頭の中でのたうち、冷静さを喰い散らす。先輩、この場合どうすれば…。横目で恵子をみると号泣していた。
ダッダッダッダ、ガシャッ
遠くから走ってくる足音と地面に落ちるスマホの音
「おばあちゃーん、ああぁぁぁあー」
「ミーコ、あぁ、ミーコ、ミーコや。ごめん、ごめんよ、ごめんなさい。おばあちゃんが悪かった。
元気出さなきゃダメだよねー。ミーコが元気で頑張ってるのに、おばあちゃん暗かったねー。ホントごめんねー。よしよしよしよし。許しておくれ、ごめんよ。ごめんなさい、ごめんなさい
ごめんなさい」
晴美のヘッドホンからミーコの泣き声とおばあちゃんなのだろう人物の声が微かに聞こえて来る。
「辛いのはあんたなのにね。ばあちゃんの事、気づかってくれて。優しいのはあんたの方だよミーコ
。ほんとにこんなに……、うぅっ……」
暫くの後、鼻を啜りながら
「もしもし、あ、どうもすみません。孫の相談にのって頂いたようで……」
少し上ずった声を、咳払いで元に戻し
「本当にありがとうございました。孫が私に相談出来ない事で悩んでたので、そちらの番号を伝えたのですが……。これからはこの子と一緒に、娘夫婦の分まで、明るく前向きに生きていきます」
晴美はまだ引かない涙をハンカチで抑え鼻を啜りながら
「いえいえ……グスッ。何のお役にも立てませんで申し訳ありません。優しいミーコちゃんに、いつまでもお元気なおばあちゃんでいてあげて下さい」
「はい、ありがとうございます」
「それでは、失礼致します……」
そういって、晴美が電話を切ろうとすると
「ん、あぁ、ほらっ」
ガサガサッ
「お姉さん、ありがとっ、バイバイ」
明るく元気になった、女の子の感謝と別れの言葉が聞こえてきた。
「うん、ありがとう。強くて優しいミーコちゃん。バイバイ……」
電話が切れる。
周りの同僚が心配そうに見守る中、晴美は恵子の胸で嗚咽した。
スマホって意外と硬くて、モニターも割った事ないです。アメトーーク!では当たり前ですが家電寄りなので、孫寄りな話にしてみました。