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ジムナスティックス  作者: ときわ
8/11

高等部体育館で男子機械体操部と

(高等部体育館で男子器械体操部と)


高等部には女子の新体操はあるが、男子は器械体操部だけである。

高等部の体育館は秋の大会以来だったから少しは勝手が分かっていた。しかし、何だか静かな雰囲気で話し声も聞こえないし、やはり大人かな?と寿里は思った。


寿里が入っていくと、キャプテンの足立健太が駆け寄ってきて


「隈君から聞いていたよ、ブジュリいや寿里君かな?こっちに来て」


(ブジュリだって、隼人兄ちゃんが云ったのかな?そんな噂になっているのかな)


と、考えながら後に付いていくと、足立が皆に紹介した。


「寿里……、って呼んでいいかな?」


「はい」と、言って寿里がうなづくと、すぐ、「あのー」と云ってから


「すみません、それ、あだ名ですけど、エジュリって訂正して読んで下さい」


「エッ、エジュリ?」


「そう、これから、心機一転、体操での新しいニックネームです」


 「わかった!面白いネ、エジュリは……」


足立が手招きをして部員皆を呼んだ。


「中学一年生なんだけど、宮崎寿里君だ!ニックネームはエジュリで呼んでくれ!

隈君の竹馬の友、隈君が云うには、新体操ではみ出しちゃったんだって! しかし、バネや瞬発力は器械体操向きだから、隅っこで練習させてくれ……とのことだ、皆よろしくな!」


「すみません、宜しくお願いします。お荷物にならないように隅っこを借ります!」


器械体操部の皆は穏やかな顔を向けて「宜しく」と云って紹介が済んで、それぞれの練習が始まった。


寿里も、すぐ隅っこにマットを借りての初練習をした。


最初、新体操でやっていた時のメニューで柔軟体操から始めたが、何だか自分だけの

世界に入れて落ち着いて練習できると感じた。


それから、寿里の毎日の練習が始まった。次々に密度を上げて練習するようになると

これでもか、これでもかと小さい動作を確かめていくようになっていた。


 誰からの支持も無い。怒られることも無い。


頼るのは自分だけ。自分を信じなければならない。


基本は忠実に。何回も何回も繰り返しの練習。ただひたすらに……!


まず、毎日行うのが腕立て伏せは体を操縦できる基本だと思ってしっかりやった。


前転、後転、開脚、前転開脚、後転開脚、倒立、倒立前転、倒立後転、倒立開脚、


倒立側転、ブリッジ、ブリッジからの後転、前転、跳躍、跳躍ひねり、跳躍開脚、


 それぞれ、何回も限りなく繰り返しの練習で、 三か月過ぎるころには、見違えるほど柔軟性が出てきた。今度は跳躍力、縄跳びに励んだ。


高校の体操部を見ていると何となく理解してきた。


 隈隼人とキャプテンの足立がやって来た。


 「やるじゃないか!すごいぞ!エジュリ!」隈隼人が早々に云った。足立がすぐに


 「これだけ出来たら本物だ!今度は動きのスピードを付けるために、高校生と一緒にやるようにしたらいいな」


 「そうだね、そうさせて貰ったらいいよ、寿里、エジュリだって?!アハハハハ」


 「ううん、どっちでもいいんだ!」寿里はそう思うようになってきていた。


 「俺たちもいつも寿里の練習を見ながら驚いていたよ!かえって高校生の方が参考にさせてもらっているみたいだよ」


 「ほら、寿里、褒められているんだよ!わかっているのかい」


 「うん、ありがとう、これでますますやる気が出てきたわ、遠慮なく広い床を使わせてもらいます。実は、いつ、お願いしようかと考えていたの!」


 「寿里のことだから、そうだろうと思っていたよ、アハハハハ……」


 隈隼人と足立が同時に笑っていた。



 規定の12平方の床に立つと何と広く感じるのだろう。深呼吸をして、走りこんで前転宙返りをしてみた。


何のことなくやりこなせたのに、安心した。おまけに周りの高校生選手が大きな拍手を送ってくれて、感動した。


 だれかれが、近寄ってきて、頭を撫でたり、肩をたたいたり、して喜んでくれた。


「エジュリ、良くやったな、いや、きっとやれると思っていたよ」


 「真面目に隅っこで良く練習したものな、」


 「すごいことだよ、今度はいつでも学校代表で大会に出られるよ!」


 「エジュリはもっともっとやれるよ!」


 それぞれ、器械体操部の部員が励まし喜んでくれたので(出来るってことはこんな気持ちにさせてくれるのかなあ)と、新しい発見のように思えてきた。


 いつでもどこでも気持ちが良くなるとテンションは上がり続けた。



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