イジメの対象は嫉妬
(イジメの対象は嫉妬)
次の朝、学校に行くと、何だか(変な空気)が漂っていた。
「おはよう」と、寿里は、いつものように元気良く云うが(シラー)とした感じが
した。隣の席の由美も小さい声で「おはよう」と、云っただけ???
(なんだろう?この空気?)寿里は一生懸命考えた。
休み時間は、ほぼトイレの時間で、最近いつもいっしょに行くようになっている由美に、いつものように
「由美トイレいこう?」と、誘うと、「うん、後でね……」と云って離れて行った。
寿里は仕方なく一人でトイレに行くことになった。
トイレの便座に座ると少し時間を取って(何だろう……)考えると少し情けなくなった。しかし、ここで負けてはいけない!
一人で歩いていると、隣のクラスの景子が近寄ってきて寿里にささやいた。
「寿里、先輩と良い中だって?佳織達が別行動するって、云っていたわよ」
「エーッ、バカバカしい!第一それって何が悪いのかしら?」
「そう、交際なんて誰もがすることよね、でもね、佳織たちあの3人が話していたの、寿里が別行動するから困るって皆に云っていたわよ。私、あの人たち嫌いだから教えておくけど……寿里を信用しているわ」
寿里はすべて理解できた。
「みんながよそよそしいから、変だと思っていたわ!教えてくれてありがとう」
「うん、頑張ってネ、これもイジメの一つネ! イジメってエスカレートするらしいから
気を付けてネ」
「うん、分かった!景子、私があの人たちに負けると思っている?」
「勿論、思ってない!寿里は強いもの!」
景子は小学校の時からヤマハピアノ教室でも一緒だったから心配してくれたのだ。
(さて!どうしょうかな?)景子と別れて歩きながら考えた。しかし、良い案はそう簡単に浮かばない。とにかく、普通に、普通に、行動しよう……と、自分の心に言い聞かせた。
教室に入り机に向かい次の国語の教科書を開いた。
その途端、教科書の何ページかが破けているのにびっくりしたが、寿里はすばやく席を立って一回りくるりと回った。その動作は驚くほど速かった。
それは三人の様子を見るためと、あたりの状況を確かめるためだった。
すぐに、佳織、亜紀、優奈のこちらを見ている姿が目に入ったのだ。
寿里は(やはり)と、思った。
寿里は何も無かったように着席すると、その時担任であり国語の小西始先生が入って来て、授業開始!
小西始先生は、ちょっと、きゃしゃでニヒルな感じのするのが、女の子に人気があった。
男男していない、優しさのあるテノールの魅力ある声がたまらなく良いし、服の着こなしも感じが良くて誰でも手の届く距離にいるような男性でもあった。小西先生の淡々としている行動も魅力に見えた。
第一声
「今日は、皆が好きな{百人一首}だったネ、さあ、予習してきたかな!?」
小西が期待して云うと、ほとんどが、いやいや、と云う仕草で頭を横に振っていた。
「あれれ……どうしたんだ?元気な優奈君どうぞ……どれからでもいいから読んでみて!」
「ハイ、先生、いろいろあるのです。部活で疲れたりして、とても百人一首は頭に入りませんでした!……漢字の読み方、分かりません、すみません」
優奈が云うと皆同調したように、頭を上下に動かし同調した。
「面白いのだがなあ~、読み方が時代を表して歴史の面白さが分かるのだよ!頭を集中しないとできないよ!優奈君頑張りなさい」
「はーい、ごめんなさい、次からやってきます!」
「次は、寿里君、どうかな?どうぞ」
「はい、教科書を忘れてしまいましたが、読んでみます」
皆が驚いた。
寿里は誰にも、意地悪する佳織達にも、遠慮することないと確固たる思いで席を立った。
(はるすぎて なつきにけらし しろたへの ころもほすてふ あまのかぐやま)
「寿里凄いじゃないか!素晴らしい!寿里君、君の好きな和歌なのかい?」
「そうです。今の季節を合わせました」
「そうだな……春も過ぎたからネ、皆もこうして関連付けて覚えると覚えやすいよ」
小西のことばは、クラスの一部のみんなには羨望になったようだが、新体操の3人仲間には嫉妬のかたまりになった。
寿里には予想していたことでもあるだけに、絶対に負けるものか!特に佳織達三人には弱みを見せたらいけないと思う気持ちでいっぱいであった。
昼休み時間も教室でも全然口を利かなくなって寿里とは別行動を取る佳織、優奈、亜紀は
「佳織、また、やられたネ、今度は体育館で勝負しよう……そうだよネ」
「うん、優奈に任せるよ、優奈はゲーム好きだから、何でも考えちゃうもんね」
優奈はすかさず
「嫌い!小西のバカ!私に恥かかせやがって!佳織何とか云ってよ」
優奈はさっきの指名されたのが気に入らなかったようだ。すると佳織が憎しみをもって
「そうだよネ、面白くもない百人一首なんて、覚えたくもないわ!そうでしょう?」
無理な正当化をした。
「亜紀黙っていないで、何かあったら云いなさいよ!」さっきから、黙っている亜紀に矛先を向けた。
「だけどネ、佳織、小西先生覚えさせようと一生懸命よ!百人一首、きっと試験に出るかもよ、とにかく覚えて置かないと、また寿里の独り勝ちになってしまうわ!でも、暗記しているって敵ながらアッパレね!」
「悔しいったらないわ……どうしょう」
しょんぼりなった佳織がそこにいた。優奈が元気づけるように
「そうっか……そうね!勝負は体育館でしよう!」
「そうだネ、そうだネ、体育館に行こう」
「寿里、まだ来てないわネ、寿里のボールは良く磨かれているわネ」
亜紀が寿里のボールを持って眺めていると、
「それ、かして!」
佳織が取りあげたかと思うと、蹴っ飛ばして、転がったボールを優奈が拾った!
「全く、どうしようも無いわネ」
と、云いながら棚に遭った安全ピンで軽く突いた。
「空気が長持ちするようにネ……」
三人が頭を寄せてアイコンタクト!
「…………」