3話
夕方ーー
森に太陽が飲み込まれて、周囲の木々黒く染まり始めている。
あの後、斬り殺した狼達の死骸をポチに回収させ、俺達は洞窟を出た。
痩せてはいたが、それなりの数がいたので数匹の死骸はテキトーに捨てていく。
「あの…ご主人様…」
首の無い狼の死骸を投げ捨ていると、後ろからポチが質問する。
「なんだ?」
「どうして、死体を捨てているのですか?」
せっかく手に入れた貴重な食料を捨てて進む。ポチはそれがとても不思議そうだった。
「がさばるから、それと標的は多いがこっちも動きやすい。」
「標的?」
ポチは首を傾げている。俺はため息を吐くと、この駄犬に再度説明する。
「血の匂いを嗅ぎつけ他の獣に襲われたら面倒だ。複数の場所から血の匂いがする状況にして、撹乱させる。不要な分の死骸を捨てる俺達の移動速度は速くなるから、より遠くに逃げられる。少し頭を使え、ポチ」
「はい、ごめんなさい…」
しゅんとし、悲しそうな顔をしたポチが、トボトボと俺の後を付いてくる。
最後の狼を勢いよく投げ捨てて、しばらくすると、目の前に小さな川が流れていた。俺達はそこで身体に付いた返り血と服を洗い流し、適当な枝を物干しにして、また移動する。
「あぅ」
ドテッという転倒音が後ろから、聞こえた。振り返ると、枝に足をすくわれたポチが転んでいた。初日は身体中に傷を作りながら、付いて来ていたポチだか、今日はかすり傷ひとつどころか、昨日の傷も残っていない。
朝に[肉体改造]いじった自己回復強化は今のところ続いているようだ
倒れているポチを起こすついでに少し肌をちねって見るが、これも反応が無い。ポチ自身も、転んだ時に違和感があったようで、不思議そうにこちらを見ている。
今まで直感的に使っていた[肉体改造]スキルだか、案外使い勝手の良いスキルのような気がする。
まぁ時間は腐るほどある。しばらくは貰った能力の検証と制御の為に森に潜伏する事になるだろう。
また転んで時間を無駄にしたくないので、片手に狼の死骸を持ちながら、ポチの手を引いて移動する。
狼を殺した所から、かなり離れたから、そろそろ次の寝床を確保しておきたい。