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狂想曲は続いていく  作者: 堀井 未咲
篠宮家のオラトリオ
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その25

このお話はフィクションです。

創作です。

現実ではありません。

大事なので、記しておきます。

何かは、本編にて。

 珠洲ちゃんと司朗君といちにお任せして、隣室に移動する。

 既に、お義母さんとお義姉さん達は揃っていた。

 いや、居心地悪そうにお茶をしていた。


「遅くなりました。お義父さんとお義祖母様はどうされました?」

「お母さんは長時間の移動で疲れたのか、違うお部屋で休んでいるわ。光太郎さんは、緒方の親戚に回収されたわ」


 一人だけ、のほほんと寛いでいたお義母さんが説明してくれる。

 お義祖母は分かりましたが、お義父さんが回収とはいかがな説明だろうか。

 まあね、お義父さんは緒方の後継ぎをけって、篠宮家に婿入りした人。

 何でも、トレーダーとして有名人だったらしくて、株の流れを読み解くのが優れていた。

 緒方の麒麟児と呼ばれていたそうである。

 そうした能力で、篠宮家の資産を増やしている。

 お零れに預かろうとしている方々が、今でも前触れなしに押し掛けてきているのを知っている。

 今回も、その流れだろうか。


「ほら、緒方本家の次男だったかしら? 子会社を潰してしまったでしょう。雅博が出向しても、駄目だった会社。あれに追従して、何社か不渡り出しそうなんですって。だから、名目上は顧問役になっているのだから、働けってことらしいわ」


 ああ、その話でしたか。

 雅博さんの尽力虚しく、潰れたというか潰された会社。

 兄の親友の里見さんの恋人を巻き込んだ、お見合い事件。

 朝霧家の弁護士を立てて、恋人さん実家と絶縁したとか。

 成人している娘の電撃結婚を取り消そうと、裁判を起こしかけていて、無論のこと裁判所は取り合わずに結婚は成立している。

 それで諦めればいいのに、兄の背後にいる朝霧家にすがろうと、新婚家庭に乗り込んできた。

 お祖父様の耳に入ってしまい、里見さん夫妻を避難させる目的で海外に転勤になりました。

 本当なら、四月に予定されていたのだけど、時期が早まり年明け早々に海外に行ってしまうことに。

 それまでは、セキュリティの凄い朝霧家所有のマンションにて生活されている。

 十中八九、億ションだろうな。

 里見さんが海外に転勤になると、兄のフォローは誰が担うのか。

 甚だ、不安が募る。

 里見さん以外の親友は、悪ふざけに荷担する人達ばかりになる。

 常識人の不在は、どうなることやら。


「あら。不愉快な事を思いださせてしまったわね。ごめんなさい」

「あっ、違います。ええと、その潰れた会社の社長令嬢が兄の親友の奥さんになられて、騒動を起こした家族と縁を切って、海外に行ってしまうので。その旦那様は、破天荒な兄のフォロー役でしたから、寂しいなぁと」


 お義母さんの謝罪に、自分でも何を説明しているのか分からない説明になってしまった。

 うん。

 今の今まで、お見合い事件を彼方にやっていたよ。

 当事者になった和威さんも、忘れているはず。


「そうなの? 琴子さんのお兄さんに接したのが少ないからかしら、そうは見えないのだけど」

「ええ。雅博さんの付き合いで何かのパーティーに参加した折りに、とても丁寧に対応していただいたけども」

「そうですよ。うちの工場に視察されて、最後の最後の挨拶で琴子さんのお兄さんと気付いた私にも、朗らかに笑って許してくれたわ」


 お義姉さん達は、兄と接触済みでしたか。

 世間は狭いなぁ。

 今一、兄の職種を把握していない妹です。

 水無瀬と朝霧の協同出資する会社に、就職したのは知っているけどね。

 本人は、何でも屋の部署にいると宣っている。

 確か、臣さんともお仕事していたのだよね。

 今度、詳しく聞いてみよう。


「あと。琴子さんの従兄弟さん達も、バラエティー豊かな職に就かれているのに驚いたわ」

「朝霧家のお仕事されていると思っていたら、俳優さんやゲーム会社の営業職に、小学校教師や外務省勤務、老舗料亭の後継ぎでしたね」

「お一人だけ、朝霧グループのお仕事されているのよね。後継ぎ問題で揺れない為かしら」


 お義母さんやお義姉さんは、不思議に思っているのも仕方がない。

 佳子お義姉さんが言った通り、穂高従兄さんは俳優、海翔従兄さんがゲーム会社、大地従兄さんが教師、真雪ちゃんが外務省、穂波ちゃんが料亭。

 朝霧グループに関わっているのが、篤従兄さんと我が兄。

 恵美お義姉さんが言うような問題ではないのだ。


「実は、朝霧家にはある家訓がありまして。学生時代に、ある一定の金額を働いて稼いで来なさいと、あるんですよ」

「まあ、朝霧家のお子さん方がなの?」

「はい、お義母さん」


 そう。

 朝霧家にある家訓が、バラエティー豊かな職種に就く切っ掛けとなっていた。

 穂高従兄さんと海翔従兄さんはそれぞれの親友に誘われてだし。

 大地従兄さんと真雪ちゃんは、高校生時代にお祖父様の妹夫妻に才能を見出だされてアルバイトした結果。

 穂波ちゃんは料亭を継ぐはずだった最上の伯母様の意志を、継ぐ形で中学卒業から女将修行をしていた。

 兄は水無瀬関連のアルバイトしていて、私だけが家訓に従っていない。

 実は、私は水泳競技でジュニア時代から、水泳漬けな毎日だった。

 でも、硫酸浴びて、その選手生命を絶たれた。

 学問も怠らず、進学校に入学していたので、転校はしなくて済んだのだけど。

 和威さんは凛として前を向いていたと、私を評してくれていたけども、やはり一年間は苦しかった。

 自由に動かせない肩と、ひきつる肌に、苦しくて苦しくて陰で泣いた。

 静かに怒る父と、派手に怒りまくった母。

 両親の前では、泣けなかった。

 どうしても、耐えれない時はお祖母様に縋っていた。

 お祖母様にもう選手でいられないと、言わせて未来を閉じた。

 酷い孫だと理解していたが、先見の巫女に断じられて矜持を保つしかいられなかった。

 そうして、なら翻訳の路に進もうかと悩んでいたら、和威さんに捕まった。

 うん。

 捕まったが、正しい。

 あれよ、あれよと言う間に、婚約していたし。

 働くより、花嫁修業が先にだった。

 私は水泳漬けだったから、家事の一切を母に頼っていた。

 母も慌てて、家事を叩きこもうとした。

 何せ、私に料理の才能がからっきしだったから。

 レンジで温めることしか、できないでいた。

 兄に嫁の貰い手がないと、揶揄されるほど家事には疎かった。

 その点、母はゆくゆくは朝霧家を出ていくから、お祖母様が困らないように修業させていた。

 何をやらしても駄目だしの連続で、和威さんに愚痴を言ったら、家事は家人に任せるかと言うし。

 駄洒落かなと思っていたら、篠宮家には家人と言われているお世話係がいるのを教えられた。

 峰君を紹介されて、母が花嫁修業を倍に私に課した。

 若い男性に家事を任せて、楽をするなだ。

 母に及第点を貰えたのが、短大を卒業する間際であったから、いかに私がポンコツだったかが分かる。

 結婚して、すぐに妊娠した。

 しかも、双子をだ。

 篠宮家から万能家人の彩月さんが来てくれなかったら、朝霧家からの家政婦が派遣されていた。

 なぎともえのお世話と、序でに私の体調を見てくれる彩月さんがいてくれて大助かりしました。

 いい母親になろうと、一人で張りきり過ぎていたのを、周りを頼るのは弱音ではないと叱られた。

 何故か、和威さんも叱られていたのは解せないのだけど。

 そんなポンコツであった私は、働いたことがない。

 従兄弟達を、ある意味尊敬する。


「見習わせたい家訓よね。だけど、成功するの雅博だけよね」

「何となく、分かります。悠斗さんは他人に顎で使われるのを、由としないですから」

「付き合い易そうな隆臣君でも、殊に毒舌になりますものね」

「和威なんか、末っ子でしょ。おまけに、篠宮家の血を一番濃く受け継いでいて、私の父を彷彿させると周りが気を配りすぎ、上に立つ支配者の空気を纏いつかせて、顎で使う立場が板についてしまった。まともなのは、雅博だけよ」

「ですが、雅博さんもやらかしますよ。初めて、部下をもった日に早速言われたそうです。先輩は、恐い。人当たりよさげに見えて、羊の皮を被った獅子だって」

「悠斗さんもです。おとなしい小型犬に見えて、獰猛な狼だなって。取引先の重役に言われました。何故だか、それが気に入られてましたけど」


 お義母さんとお義姉さん達が、挙って溜め息を吐き出した。

 そうなのよね。

 何故だか、気に入られるのが分からない。

 和威さんも部長さんに、可愛がられている。

 新入社員が僅か一月足らずで問題起こしても、庇われた。

 背後に大企業の緒方家や、武門で名がしれた篠宮家や、婚姻で縁を結んだ朝霧家があるとは言え、破格な待遇されていた。

 謎だよ。

 媛神様の加護のおかげだろうか。


「康治以外の息子達も知る頃だろうし、この際だから打ち明けるわね」

「お義母さん?」

「うちの篠宮家は、元が墓守りなのよ。祭祀は宮司一家の篠原家に分かたれたけど、鎮守の人柱となられた天孫の(みささぎ)、お墓を守る防人(さきもり)の家系なの。篠宮家が所有するお山には、幾つもの名と血を捨てた天孫の皇子がお眠りいただいている。そして、あろうことに防人の娘が、皇子の子供を産んでしまった。密かに、時の天主様が認知してしまっているから、あちらの本流のお家に分家筋と知られてしまっているの」


 ほわっつ?

 何ですと。

 お義母さんの爆弾発言に、言葉が出てこない。

 水無瀬家よりも、稀有な血筋を篠宮家は所有しているではありませんか。

 あっ、でも。

 だから、お義祖母さんが言われた止ん事無いお家の疎開先に、篠宮家のお山が選ばれたのか。

 篠宮のお祖父さんには、妹が二人おられた。

 裏を読んだら、伴侶にと選出されていたのではないだろうか。


「とうに薄まった血筋を未だに縁戚と呼び、時候の折々にお手紙を戴くわ。私の父が亡くなった際にも、人知れず側近の方が弔問に訪れたわ。母の兄弟を奪った件も、忘れてはいないのよ。だからね、篠宮家からお山を取り上げようとしている方々を黙らすと、仰有るの。息子達を呼んだのは、その件にかこつけて顔を見たかったのだと思うわ」


 おおう。

 和威さんの行き先は、皇居ですか。

 そうですか。

 きっと、お祖父様やお祖母様は、知り得ている情報なんだろうな。

 お祖父様が、調査しない訳がない。

 兄も知っているとみていい。

 覚えていなさい。

 絶対に、兄のお嫁さんに、恥ずかしい過去を暴露してやるから。

 何倍にもなって、返ってきそうだが。

 やってみせよう。

 だから、お義母さん。


「巧や司が男の子で良かったわ。歳も離れているとは言え、もえちゃんが危なそうだけど。梨香や静馬もあちらとは微妙に年代が違うから、取られそうにならなくて一安心だわ」


 フラグがたちそうな話題は、避けましょう。

 独身な臣さんが狙われそうです、とは冗談でも言えないわ。

 ははは。


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