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狂想曲は続いていく  作者: 堀井 未咲
篠宮家のカプリチオ
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閑話  篠宮家のクリスマス

 結婚1年目のクリスマス。


 私、篠宮琴子は、悪阻が酷くて都内の病院にて、入院していた。

 イブには、和威さんが手造りケーキを持参してきた。

 その出来映えに、腹が立ったのは内緒である。

 料理出来ない嫁で悪かったな。

 勿論、食べれなくて、持って帰って貰った。

 あの、ケーキはどうしたのか、疑問に思っていたら、甥っ子の静馬君と姪っ子の梨香ちゃんが食べたらしい。

 悔しい。

 食べたかった。

 まだ、産まれてもいない双子ちゃんに、クリスマスプレゼントが届いた。

 なんと、双子用のベビーカーと電動バウンサーにチャイルドシートである。

 どちらかと言うと、母親むけな気がする。

 でも、有り難く使わせて貰おう。



 結婚2年目のクリスマス。


 昨年のリベンジだ。

 9ヶ月になる双子を和威さんに任せて、万能家人の彩月さんに教授して貰いながら、ケーキを作った。

 酷い出来に涙が出た。

 何故にお菓子類は全滅になるのか、不思議でしょうがない。

 目分量が駄目なのか。

 きちんと、計らないと駄目らしい。

 母屋のお義姉さんが、双子用の可愛らしいケーキを手造り。

 また、泣けた。

 ママの、手造りより出来映えがよい。

 なのに、なぎともえはママのケーキに突撃。

 顔と両手をクリームだらけにしてくれた。

 嬉し涙が出た。

 作って良かった。

 今年のクリスマスプレゼントは、多岐に渡って縫いぐるみやら、布製の積み木やら。

 梨香ちゃんから、着ぐるみ風のロンパースが届いた。

 着せてみた。

 何故か、皆さん写真撮影会が始まった。

 朝霧のお祖父様。

 電車の模型は早すぎな気もする。

 仏間一杯にに組み立てたレールを走る電車になぎ君が、夢中で見ていた。

 もえちゃんは女の子らしく世界的に人気な熊のぬいぐるみを離さなかった。

 緒方の叔父様。

 ばかでかいクリスマスツリーはもうありますから。

 母屋と、離れ。

 私達の家の分までは送りすぎです。

 しかも、天然もみの木はないですか。

 処分に困ります。

 後日、家人の方が薪割りしているのを目撃。

 そうか、母屋のお風呂に五右衛門風呂があった。

 囲炉裏もある。

 竈も。

 燃料になるのか。

 それで、薪が貯蔵してあったのか。

 成る程。



 結婚3年目のクリスマス。


 今回こそ。

 リベンジ。

 どうだ、見事な出来映えに満足。

 写メ写メ。

 あっ。

 やられた。

 スマホを探している間に、イチゴが食いしん坊さんに、食べられた。

 ケーキにも被害が。

 何でも、止める暇がなく顔を突っ込んだようだ。

 なんて事だ。

 して、やられた。

 半日がかりで費やした、ケーキが台無しである。

 けれども、犯人は何故か泣いている。

 どうしたの。

 ママ、まだ怒ってないじゃないか。

 一歳9ヶ月になるなぎともえは、片言の喃語でママ、やーよ、と泣いている。

 何が起きたのか、説明をプリーズ。

 和威さんによると、ケーキに夢中になるあまり、相手をしてくれないママに、鬱憤が貯まっていたらしい。

 何度も、ママを呼んで泣いていたらしい。

 いかん。

 マイベイビーズを叱れない。

 ママの方が、ごめんなさいだ。

 ケーキは諦めた。

 キッパリとお義姉さんの、ケーキで祝いましょう。

 3年目のプレゼントは、絵本や知育玩具が多かった。

 緒方家より、またもや大きなサンタクロースの靴下型のお菓子セットが届いた。

 あのう。

 まだ、子供たちは食べられないお菓子が混ざっていますがな。

 仕方がないので、和威さんの職場のお子様に進呈させて貰った。

 しかし、一番喜んでいたのが、お菓子や玩具ではなく、朝霧家からのリュックサックだった。

 再び、ウサギとクマの姿を象ったリュックサックを背負った、双子ちゃんの撮影会が始まった。

 可愛らしいから、私も混ざった。

 皆さん、可愛いのは正義らしい。

 後日、リュックの値段を母に聴いて驚いた。

 あるメーカーに特注したオーダーメイドだった。

 通りで、瞳の部分がガラスにしては輝きが違うと思った。

 本物の宝石だった。

 お祖父様。

 なに、一歳児に持たせてくれやがりますか。

 双子ちゃんが、片時も離さないから、返せやしない。

 和威さんが、お出掛け以外は仕舞っておこうと、説得した。

 頷く双子ちゃんに、賢さの片鱗がみえた。



 結婚4年目のクリスマス。


 今年は、東京で初めて過ごすクリスマス。

 はじめからケーキは買いました。

 と、思いきや。

 母方の伯母より、ケーキが届いた。

 それも、二個も。

 誰がたべるんじゃい。

 我が家の食いしん坊ちゃんかな。

 そんなに、食べたらご飯が食べれないよ。

 3日掛けて食べきった。

 そして、恒例のクリスマスプレゼント。

 事前に、リサーチ済みです。


「「ママ。しゃんたしゃんに、わちゃしちぇ、くぅしゃい」」

「はい。分かりました。ちゃんと渡すね」

「「あい」」


 サンタクロースに渡す手紙には、広告から切り取った写真が貼ってある。

 切り取ったのも、貼ったのも、和威さんである。

 それを、篠宮・緒方家連合と、武藤・朝霧家連合に、それぞれ渡した。

 そうしておかないと、同じ物がプレゼントされてしまうからだ。

 それだけ、欲しいと強請ったのが、珍しいのだ。

 普段は与えられる贈り物に満足して、我儘を言わないなぎともえだけど。

 今年は、自分たちから欲しいと言い出した。

 切っ掛けは、ご長寿番組のアニメ。


「「たあたんと、おにゃじにょぎゃ、ほしい。なぁくんも、もぅたんも、にょりちゃい」」


 一緒に見ていた和威さんに、指差したのが三輪車だ。

 三輪車かぁ。

 とうとう言い出したと嘆いたら良いのか、やっと甘えて欲しいと言い出したと喜んで良いのか。

 思わずに和威さんと、顔を見合わせた。

 時期が時期だけに、サンタクロースに頼もうかと、和威さんは双子を諭した。


「しゃんちゃ、くりょしゅ?」

「なあに?」

「クリスマスに、良い子にしていた子供たちにお菓子や玩具をくれるおじいちゃんよ」

「去年は、ウサギとクマのリュックを貰っただろう」

「「あい。しゃんちゃしゃんに、おねぎゃい、しゅりゅ」」


 こうして、カタログを取り寄せては、いやいやを繰り返して、やっとこさ決まった。

 のは、良いのだけど。

 悩むのはパパとママである。

 三輪車が欲しいと言ってくれたのは良いのだけど、4家の落とし処はどうするのか。

 結果。

 なぎ君の分は、篠宮・緒方家に。

 もえちゃんの分は、武藤・朝霧家に。

 と、することになった。

 決して、違う三輪車にしないでと、お願いつきで頼んだ。

 その際に、二人の署名入りでお手紙を書くのを、提案したのも和威さんである。

 両陣営に、呉々も間違いがないようにと言い含めた。

 果たして、イブの朝。

 彩月さんの部屋に隠した三輪車を、静かにリビングに運んだ。

 起きてきたなぎともえは大興奮。


「「ママ。パパ。しゃんちゃしゃん、きちゃ」」

「うんうん。なぎ君ともえちゃんが、良い子だから、来てくれたね」

「良かったな。朝御飯食べたら、公園に行こうな」


 念願の三輪車を前に、ぶんぶんと首を振るなぎともえ。

 どうやら、変な装飾のない普通の三輪車にご満悦してくれた。

 良かった。

 口を酸っぱくして、言い含めて。

 お祖父様から、キャラクターの物でなくて良いのか、問い合わせがきたけどね。

 流行りのキャラクターはいらないのだよ。

 欲しいのは、アニメに出てくるヤツだから。

 訝しげる双子を前に、サンタクロースからの電話だと信じて出たがるのを、何度誤魔化したことか。

 パパとママからは、幼児が食べれるお菓子を詰め合わせした。

 泣いて喜んでくれて、パパとママも大満足だ。


 しかし、私達夫婦は舐めていた。

 裏側で4家が、結託していた事を、知らなかった。

 お山の篠宮一家が上京した。

 クリスマス当日は各企業でパーティが開かれているのを、知っていたので油断した。

 イブに4家が大集合して、パーティが開催されるとは思いもしないでいた。

 現実のサンタクロースが、各自プレゼントを用意してくれたのを知るまで、後数時間。

 今年も、沢山のプレゼントに囲まれる双子ちゃんの撮影会が始まろうとしていた。

 彩月さん、恐るべし。

 なぎともえの礼服だけでなく、私の衣装まで準備されていた。

 下着までぴったりだった。

 き、際どいな。


 その夜。

 酔った和威さんに、襲われたのは言うまでもなし。



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