番外編 HappyBirthday
注意、約一年前のお話です。
本日三月十四日は、我が家の双子ちゃんのお誕生日です。
世間はホワイトデーという日で、二月のバレンタインのお返しに男性が四苦八苦する日なのですが。
篠宮家に、なぎともえが誕生してからはお誕生日の記念日になりました。
そして、今年は週末がお誕生日(作中の創作です)という事で、なんと東京からお義兄さん達一家が揃って帰省してくれました。
「で、何故うちの母や父や兄だけでなく、お祖父様やお祖母様までいるの?」
「あら、可愛い孫やひ孫のお誕生日よ。勿論、お祝いにきたに決まっているじゃないの」
「うむ。可愛いひ孫を祝ってなにが悪いんじゃ」
お祖母様まで珍しくお祖父様の我が儘に同調するなんて、思わなかったけど。
うちの家族とお祖父様とお祖母様、篠宮家が管理するヘリポートを利用して、プライベートヘリコプターでやって来てしまった。
しかも二機でだ。
そのうちの一機に、たんまりとプレゼント積んで来たせいで、篠宮家の家人総出で、プレゼントを運ばせたのである。
篠宮家当主の康治お義兄さんは、にこやかな笑顔で迎えてくださったけどね。
事前に、連絡ぐらいして欲しかったよ。
ていうか、しなさいよ。
無茶苦茶恥ずかしかったです。
昨日の夜から、篠宮のお義母さんやお義姉さん達が、乳幼児でも食べれるご馳走の準備してくださっていたが、連絡なく突撃してきた武藤家一家とお祖父様とお祖母様の登場に、プチ混乱したから。
この中での常識人たる我が父とお祖母様が、何故に止めなかったのが不思議である。
「本当は、お姉様達とお兄様も来たがってたのだけどね。流石に、大人数での訪問は無しになったのよ。その分、プレゼントが増えてしまったけど」
ちょっ、伯母さん達までだなんて、無理だから。
いくら、篠宮家が藩の家老職を務め、下手したら藩主の家系より敬われていたとしても。
篠宮のお義父さんが朝霧グループと比べてはいけないが、大企業の緒方商事の跡継ぎになれた方だったとしても。
篠宮家は、山護りにして墓護りが根底にある武家の一門。
大企業の頂点である朝霧グループの経営者一門が揃って、わざわざ孫や姪の嫁ぎ先に来ないでよねぇ。
ただでさえ、男女の双子を毛嫌う篠宮家の分家がいるから、母屋ではなく離れの私達の家で身内だけでお祝いしようとしたのに。
とんでもない人達がきたせいで、急遽母屋でお祝いをする変更を余儀なくさせたのだから。
我が家の身内達よ。
嫁いだ娘や孫に恥をかなさないでください。
まあ、幸いながら、準備してくださっているお義母さんやお義姉さんが、満面の笑顔で母屋で祝えると喜んでくれたのが幸いだけどね。
康治お義兄さんも、身内だけで済ますと通達してくれて、双子に偏見がない家人達もお祝いを邪魔しようと乗り込みを企んでいる分家を、本日は分家の誰一人も入れない、追い出させると言ってくれて、張り切って門で足止め役をかって出てくれた。
そのかいもあり、なぎともえのお誕生日のお祝いは、身内だけでも和やかに開催された。
「「あーちょ、あーちょ」」
「わぁ、なぎももえも可愛いや」
「梨香ちゃんの洋服、すっごく似合っているよ」
梨香ちゃんが贈ってくれたのは、最近お義祖母さんと庭の家庭菜園に興味津々でお手伝いしたがる双子ちゃんが汚してもいい乳幼児用の作業服を模した服。
なぎ君はくまさんに、もえちゃんはうさぎさんがお気に入りと分かってきたから、取り外し可能なフードにはくま耳とうさぎ耳がついていた。
お義兄さん達に着てみて欲しいと言われて、着せてみたらなんて可愛い姿になったか、皆さんしきりに褒めてくれた。
が、作ってくれた梨香ちゃんにも称賛してあげて欲しい。
「あらあら、巧や司の時も梨香ちゃんが、可愛い服沢山作ってくれたの思い出したわ。良かったら、なぎ君ともえちゃんにお下がりだけど貰ってもらおうかしら」
「そうだね。巧と司の子に残したらと思い、大事にしまってあるけど。なぎともえに着てみて貰うのも良いね」
「でしょう? 本当は臣君にと考えたけど……」
「ああ、気にしなくていいよ。恵美義姉さん。もう、ふっきれてるし。いつまでも、引きずっていたら、あいつ夢に現れて説教されるよ。俺に子はいないけどさ。その分、姪や甥を可愛がることができるんだ。こんな幸せなことないよ」
奥様を亡くされた臣お義兄さんは、お子さんも同時に亡くされている。
だからか、姪や甥にはたいそう甘々な叔父さんとなった。
本日も、某海外王室御用達なブランドの玩具を贈ってくれ、和威さんと康治お義兄さんに、苦言だされちゃいました。
しかし、目下のところ我が家の双子ちゃんが、もっともお気に入りで歓声を上げたプレゼントが、司郎君が贈ってくれた中央にワンコの足型を押した折り紙で折った花の胸飾りというオチが。
まったく大人気なく、お祖父様達が悔しがっていたのを隠さないでいたので、主役の双子ちゃんが皆の頬にチューをしまくるご機嫌直しをしてくれた。
料理が苦手なママと料理が上手なパパが頑張って作ったお手製ケーキが、二番手なのが面目を保って良かったよ。
続いて、ねぇねとにぃにお手製のプレゼント。
我が母押しの巧君の身長より多きな○ーさんぬいぐるみは不評で、母は落ち込んでいたが。
大き過ぎて圧迫感が半端なかったのが敗因だね。
父のプレゼントは、無難な絵本だった。
兄?
兄は、まだ早いのではないかと思った電車の模型とおままごとセット。
が、半年後、なぎ君が電車にはまる要因になったのを述べておこう。
おままごとセットも、お山に同年代の乳幼児がいない為、使われるようになったのも巧君達にぃにが帰省するお盆休みからとなる。
そして、大問題となったのがお祖父様のプレゼント。
乳幼児用のオーダーメイドで仕立てたと思わしきくまとうさぎのリュック。
後日、その瞳部分が宝石と判明したり、隠しポケットにも小粒な宝石が偲ばせてあったりで、私が抗議したらもしもを見込んで隠し財産にしなさいと。
あのね、お祖父様。
和威さん、お義父さん(和威さんの実父)から生前分与でかーなーりーな株式贈与されていて、暴落しない限り配当金で生涯安泰な暮らしできるから。
私も母経由で、お祖母様から相続した財産あるし。
悪質な連帯保証人になって、財産ぶんどられなければ、充分な暮らしが保証されるから。
万が一の蓄えも、なぎともえの通帳に振り込み済みだから。
これ以上、お金かけないでちょうだい。
「マー、パー。いっ、ぱい、いっ、ぱい。うーちい。あーちょね」
「あい、うーちい、うーちい。ばー、じー、ねぇー、にぃー、おーじ、おーば、あーちょ、ましゅ」
なぎともえが、プレゼントの一部を抱え、私と和威さんに報告し。
嬉しいから、ばぁばやじぃじ、ねぇねやにぃに、伯父さんや伯母さんにありがとうを、二人で各自にお礼を言いに回っている。
言われた側は、ほっこりにっこり笑顔で動画やら写メやら撮りまくってます。
一部分家の皆さんには、双子ちゃんは嫌われてるけども、家人の皆さんも密かにプレゼント贈ってくれている。
ちゃんと好みを調べて、双子ちゃんが笑顔になるプレゼントは、大事に使わせて貰おう。
そして、恵美お義姉さん達がお下がりしてくれた服も大事にしまって、梨香ちゃんや静馬君達の子供にでも還元できるようにしたい。
お誕生日一日中問題は起きず、お誕生日を邪魔しようとした分家を排除してくれていた家人の方にもお礼しないとね。
はい?
既に、康治お義兄さんがご祝儀代わりに臨時ボーナスを配布された?
いやいや、我が家の事ですから、私達からもお礼はさせて貰いますからね。
ああ、はい。
我が家の双子ちゃんの「あーちょ」で、満足なんですね。
でも、それはそれで対策考えてますからね。
丁度良く、お祖父様がご馳走にと有名ブランドの鮪丸ごと持参してくれたので、急遽桜伯母さんのツテによって引退されていた料理長さんの鮪解体ショーが庭で始まり、私達で消費しきれなかった鮪の切り身をお裾分けさせていただきました。
他にも、高級品食材詰め合わせを配布させていただきました。
だって、食べきれない量持参してきたので、腐らしてどうするっての。
キャビアやフォアグラなんか、腐らせたら勿体ないでしょうが。
もう、主役の双子ちゃんが食べれない食材持ち込んだお祖父様のミスだからね。
「なー、いや、にゃい」
「もー、も」
案の定、見慣れない食材はなぎともえは嫌がりました。
涙目で、パパにすがって嫌々する双子ちゃんに、お祖父様は凹んでいた。
自業自得です。
乳幼児に、高級品食材は駄目駄目だった。
一口も食べず、巧君と司君も断念していた。
「ぷちっとするの、何か変」
「キャビアって、大人が食べる食べ物なんでしょ? ぼくいらない」
「実は、俺も苦手。お子様味覚でいいや」
「あら、なら私が貰うわね」
篠宮家孫世代で、食べれたのは梨香ちゃんだけだった。
でも、篠宮のお義父さんが焼いてくださったピザ(専用のピザ釜があって、びっくりした)の具材になったフォアグラは食べていたけど。
知らなかっただけかな。
なぎともえが初めて食べたピザはチーズ少なめな定番ピザで、チーズが伸びることにはしゃいでいた。
「パー、ぴしゃ、チー、おーしろ」
「マー、ぴしゃ、おーしろ」
双子ちゃんが言いたいのは、ピザのチーズが伸びるのが面白いかな?
この日一日で、楽しいこと、初めてなばかりなこと、沢山体験してはしゃいで、嬉しいことばかりなお誕生日は、あっという間に過ぎていった。
途中で力尽きて寝てしまったけど、始終笑い声が絶えない一日でパパもママも楽しく嬉しい日となった。
なぎ君、もえちゃん。
パパとママの元に産まれてきてくれてありがとう。
これからも、沢山の嬉しいや楽しいを体験して、成長していってね。
「なぎ、もえ。パパの可愛い大切な宝物の子供達。どうか、健やかに伸びやかに成長してくれな。その為になら、パパはどんな苦労も厭わないからな。パパにならせてくれて、ありがとう」
眠るなぎともえを撫でながら、愛おしく声かけする和威さんと夫婦になれて良かった。
「ただし、琴子は育児に無理は厳禁だからな。再度、無理して倒れたりしたら、彩月以外にも子守りと家人増やすからな」
「……はい。了解であります」
感慨に耽っていたら、忠告が。
やらかした手前、嫌とは言えないです、はい。
母にも忠告されたとは言えない。
こうして、最後は私にお小言が言われて、なぎともえのお誕生日のお祝いは終わりました。