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狂想曲は続いていく  作者: 堀井 未咲
篠宮家のレクイエム
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その12

 流石に、深夜になると巧君と司君も睡魔に抗えなくなり、皆で休む事になった。

 とはいえ、呪詛の怨念がまた来襲するやもしれないので、私達一家と悠斗さん一家まとめて隣室の和室を襖を開けて就寝と相成りました。

 司郎君といちが不寝番で近くで待機すると言い出したのだけど、朝霧邸には二十四時間体制で警護スタッフが待機しているのと、媛神様の神使だけれども普通の人間と変わりがない体質の司郎君にも、休みは必定である。

 和威さんの休めのお言葉により、峰君を監視人にして使用人棟へ連れていって貰った。

 いちがくんくん鳴いていたものの、珠洲ちゃんの神水による結界と私の巫女の結界を二重に張り直して、納得してもらった。

 まあ、夜が明けたら、一目散になぎともえの側に来たがるだろう。

 その時は、充分に甘えさせてあげればいいかな。

 そうして、何事もなく翌朝になった。

 就寝したのが遅かったせいか、我が家の双子ちゃんはいつもの時間に起きてはこず、爆睡している。

 私達や悠斗さん一家も遅めの目覚めだったので、朝食よりブランチに近い食事を取る事にした。

 ああ、着替えは朝霧邸にいつ従兄弟達が手ぶらで泊まりに来ても大丈夫であるように、様々なサイズの服やら下着やら新品の状態で用意はされている。

 尊君という小学生もいるので、巧君と司君の着替えも勢揃いして、悠斗さん一家に進呈された。

 ただし、恵美お義姉さんが抜け目なく、ブランド品と見破り一悶着あったけどね。

 済みません。

 何せ、朝霧グループにはアパレル部門もあるので、椿伯母さんが宣伝も兼ねて身内に着させているのも、私は慣れてしまっているからか抵抗なく着替えてしまう。

 悠斗さんは学生時代に緒方家と篠宮本家から、ある程度は慣れておくように教育されているので(和威さんから聞いた)難なく着替えていたが、小鳥遊さんは娘の一言によって知り躊躇ってしまわれた。

 そこで、朝霧邸の出来る家政を任されている喜代さんは、すぐに就寝前に着ていた服は回収して洗濯しているからと押しきって、着替えさせる事に成功を納めた。

 いやまあ、悠斗さんと小鳥遊さんの体系的に、和威さんの服は合わないので、貸しようがなかったのもある。

 何せ、悠斗さんは篠宮兄弟一高身長で細身な体型、和威さんの服だと上は何とかなるも、ズボンは丈が足りないし、ウエストも余るおまけつき。

 和威さんは細身に見えるもそこそこ筋肉質であるので、決して太っている訳ではないのに、サイズ通りの既製品を試着すると見映えがよくない仕上がりになるというね、店員さん泣かせの客だったりする。

 なので、和威さんの服は椿伯母さんにサイズをリークして、オーダーメードなのを内緒にしている。

 だって、本人その辺り無関心だし。

 結婚してから付き合いが生じた椿伯母さんが、似合わない服を着ていると指摘して勝手に送ってくるんだもの。

 結婚式にもオーダーメードしたので、その時測ったサイズが何故か椿伯母さんに筒抜けだったしね。

 なぎともえの服と交じって、私や和威さんの服まで手配してしまう椿伯母さんに文句は言えない。

 まあ、和威さんの着心地がよくなったとの感想があるから、甘える事にした。

 椿伯母さん曰く、身の丈にあった服を着るのが常識なの。

 身内になったからには、衣服には困らせたくはないとのお叱りがあった。

 芸能人の穂高従兄さんも、朝霧グループの身内との情報解禁になり、椿伯母さんがここぞと衣服を誂えて、宣伝宜しくと歩く広告塔にしたそうな。

 既に、営業マンと教師の自分の息子達は言うに及ばず、胡桃ちゃんや旦那さんの服も自腹で購入しては送っている。

 穂高従兄さんが出演する番組の衣装は、全て朝霧グループのアパレル部門が押さえてテロップにも表示が出されていたりする。

 おかげで、業績アップらしい。

 そのボーナスに、更に衣服が進呈される循環に陥っているのだけど、従姉妹達は衣服関連の出費がないから穂波ちゃんは美容関係に、真雪ちゃんは交遊費にあてられると満更ではない様子だ。

 私は、家計費が抑えられて貯蓄に回せる一方である。

 和威さんは、なぎともえが保育園に通うようになったら、たまには友人達と遊びに行ってもいいのではと言ってくれた。

 まあね。

 東京に転勤になり、戻ってきた訳だから、友人達からはお誘いがあるのは確か。

 だけど、友人達の目的は私にではなく、双子ちゃんにあるんだなぁ。

 可愛い双子ちゃんに会いたい、遊ばれたいとの狂喜乱舞したラインが来てはいる。

 しかも、お誘いの場所は、幼児がいてもおかしくはないテーマパークだったりする。

 友人と幼馴染み達よ。

 私は無視かいと返信したが、さも当然にそうだと返してこないで欲しい。

 いや、友人よ。

 君達の中には、和威さんを鑑賞対象にしていたのもいるではないか。

 既婚者になったら、価値が無くなったのかい?

 幼馴染みよ。

 イケメンの和威さんの友人もイケメンだからと、セッティングしろとか言ってましたよね。

 結婚式の二次会で、肉食令嬢になっていたではないか。

 あれから、くっついた話しは聞かないぞ。

 もしや、枯れたか?

 ラインを送ったら、名家の御曹司とか金持ちは懲りたとか来たけど。

 何があったのよ。

 和威さん側からは何の情報がないので、皆さん彼女達の名誉の為に黙ってくれているのだろか。

 今度、その辺りを突っ込んでみよう。


「琴ちゃん。何か、もえ、凄い眉間に皺寄せて唸っているよ」


 ブランチが済んで、起きてこない双子ちゃんを心配して見守ってくれていた巧君が、食後のお茶タイムで待ったりしてした私に報告してくれた。

 神使の厳は、悠斗さんの側にゆったりと寝そべっているから、呪詛関連ではないな。

 また、悪い夢でも見ているか、先見の能力かな。

 気になって、寝ているもえちゃんの頬を柔かくつついて起こしてみた。


「もえちゃん。もう朝ですよ。お腹が空いてないかなぁ。なぎ君もおっきする時間だよ」

「うを。見事な眉間の皺だな」


 心配して和威さんも、もえちゃんの様子を見に来た。

 数回、つついて見たら、ぱちっともえちゃんは目を開いた。

 そして、私を認識するやいな、盛大に泣き出した。


「ママぁ~。いちゃ、ママ、ぢょっきゃ、いきゃにゃいでぇ~」

「あら、もえちゃん、どうしたの。ママは、何処にも行ったりしないよ」

「しりょきゅちぇ、きゅりょい、ひちょ、まぢゃ、いりゅう~」


 身軽に起きて、私に突進して抱き付くもえちゃん。

 そういえば、白くて黒い人は前にも言っていたなぁ。

 なんだろう。

 何かの符合だろう。

 必死に抱き付くもえちゃんの泣き声に、なぎ君も引っ張られたのかがばっと起き上がる。


「パパ、ママ、おんも、めめよ。しりょきゅちぇ、きゅりょい、ひちょ、ママ、つえちぇ、いっちゃうにょ」

「なぎ、パパは、白くて黒い人が誰か、分からないぞ」


 なぎ君は、和威さんに抱き付いて猛抗議している。

 年明け前から、それを警戒さしていたけど。

 ママとパパは全然理解不能です。

 と、疑問符だらけの私達と見守っている悠斗さん一家の元に、


「ああ、お邪魔するよ。小鳥遊家と悠斗君一家について、話しはつけたのだけど。琴子の方が事情説明が先かな」

「楓伯父さん」

「あ、朝霧社長。この度は、私の事情に巻き込んで申し訳ありません」

「いやいや、小鳥遊さんは悪くはないでしょう。そちらも、巻き込まれた側ですから、謝罪は必要ありません。父も、孫娘の婚姻により、篠宮家と緒方家、和威君の兄弟に嫁がれた夫人の家族も、朝霧家の身内と通告はしているのでしてね。身内に被害を与えた方々には、嬉々として改めて制裁していますよ。これで、小鳥遊家を狙う勢力は総崩れしましたから、安心してください」


 昨夜、お祖父様と暗躍していた楓伯父さんの登場に、小鳥遊さんは頭を下げ謝罪された。

 けれども、お祖父様は関係各所、裏社会の方々にも身内が増え、敵対するなら容赦はしないと通告はしていた。

 のだけど、小鳥遊家に裏社会の組織が手を出した。

 また、あの時の様に対テロ対策組織のプロの専門家を連れて、乗り込んで行ったのだろうなぁ。

 関東や東北、関西の裏社会の重鎮からは、敵対しないと念書を交わして互いに無関係を貫いていたはずか、何処かの下部組織がそれを破ってしまった。

 お祖父様的には報復するのは当然、約定を破るなら潰してやると息巻いた結果が、僅か一晩で落ち着いた。

 派手な抗争にならなくて安堵したわ。


「恵美さんにも、そのお子さん達にも、勿論悠斗君と小鳥遊さんにも接触禁止を念押ししてきましたから、もう騒動は起きないでしょう。まあ、血気盛んな若造がいても、組織が処分すると言い交わしてきましたから、二度と狙われる事はありません。まあ、暫くはうちのセキュリティスタッフをつけますので、お仕事に差し支えるようでしたら、人材派遣はまた考え直しますので、不都合があれば琴子経由でご連絡ください」

「数々のご恩情有り難うございます」

「いえいえ、親戚ですから、当たり前です。ああ、年始から大量生産するよう受注されたお仕事ですが、あれもあちらからの嫌がらせだったようです」

「……そうですか。それでは、私達に損害を与えて廃業が目的でしたか」

「そのようですね。敢えて、小鳥遊さんが断れない筋からの依頼で無理難題を吹っ掛け、納品された製品を不良品と偽り、違約金を支払わせるようでしたが、納品が不要なら、此方で取り引きをし直しましょう。ある子会社で、どうしても必要な製品ですから、三割増しの値で取り引きさせてください」


 あらら、大量生産の依頼もブラフでしたか。

 そうとう、腐った企業だった訳ですね。

 そうして、朝霧グループは廃棄するしかなくなった製品を、迷惑料込みなお値段で取り引きしたいと申し出た。

 楓伯父さん的には、朝霧グループと縁が出来たが、依頼を固辞してきた小鳥遊精機の製品を手に入れられる好機に恵まれたと喜んだようです。

 小鳥遊家も父の実家の武藤家と等しく、朝霧グループとは距離を起きたい派だった訳ですね。

 その姿勢は、逆に楓伯父さんの心証を良くした結末になり、小鳥遊精機を傘下に率いれたいのだろうね。

 この件だけでも、あちらさんは良い仕事をしたと称賛をおくりましょうか。

 他の遺産問題騒動の点では、心証悪いけど。

 それで、取り引きには後で互いの弁護士と会計士を交えて話し合う事となりました。

 で、次の問題は私にあった。


「もえが言う白くて黒い人だけどね。暫く、報道番組で騒がれるのを黙認する形になるが。あるアラブ諸国の石油プラント開発で朝霧グループに資本を出せ、それから朝霧の娘を嫁に加えてやると抜かす阿呆がある大臣と手を結んだそうだよ。既成事実を作れば、朝霧が黙ると安易に考えたのだろう。大々的に、報道するらしいよ。まあ、父は憤慨モノで総理大臣に阿呆をどうするか詰めよったみたいだね。慌てて、非公式の会談しているよ。私としては、昨夜から一睡もせずに活動されていて、父の体調の安否が気になって仕方がないけども」


 お義母さんがいない父は制御不能だから、出来ればなぎともえを借りだしたいくらいだよ。

 楓伯父さんが数種類の新聞紙を座卓に投げ出した。

 もえちゃんを抱っこして移動して、新聞紙を見たら一面にでかでかと朝霧グループの娘とあるアラブ諸国の王族との婚姻による、石油資源の優先的支援による恩恵がどうのこうのとある。

 しかも、ご丁寧に朝霧グループの会長の三女の娘とまで記載されていた。

 私の背後で、静かに怒りに満ちた冷気が漂うのは気のせいではない。

 あーあ。

 和威さんまで、お怒りだ。

 となると、あらゆる手段を講じて、報道した新聞社や報道局に報復がいくなぁ。

 私は、止める権利はないので、御愁傷様。

 和威さんの人脈を侮るなかれ。

 数日後の悲劇が目に浮かぶ。

 まあでも、我が家の双子ちゃんに憂いがなくなるならいいか。

 当事者は、放置一択です。


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[一言] 【妄想劇場】 >穂高従兄さんが出演する番組の衣装は、全て朝霧グループのアパレル部門が押さえてテロップにも表示が出されていたりする。 『この番組はMORN MISTと 御覧のスポンサーの提供…
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