幼馴染の為に頑張る転生した王子様
気分転換に書いた短編、肩の力を抜いてご覧になっていただければ幸いです。
トラックに轢かれたと思ったら、気が付いたらなにやらキンキラキンな部屋にいた、そして自分の顔くらいあるおっぱいが目に前にあった。こよなくおっぱいを愛する俺は、迷いなくおっぱいにしゃぶりついた。そうか、ここは天国か、おっぱい星人である俺をおっぱい星へと帰してくれたんだな、神様ありがとう。
……と、現実逃避している間に、どうも俺の脳みそは自分が赤ん坊になってるのを、辛うじて認識できたようだ。それはそれとして、目の前のおっぱいを吸うのは続けるが。
「まぁまぁ、元気にお乳を吸って。元気な赤ん坊ですこと」
横から声をかけてくるのはメイド服のお姉さん……メイド服だと! そうか、ここはおっぱい星ではなく、メイド天国だったと言うのか!
「ううう……うえぇぇぇぇぇん! 良かった、良かったですわ。生まれてくれてありがとう! 私、私とても幸せですわぁぁ!!」
そして俺の頭を撫でるのは、目の前の巨乳……ではなく、金髪美少女だった。いかにもお姫様ってドレスを自然に着こなす超絶美少女は、笑顔で泣きながら俺を撫でる。ついでに抱き寄せられ巨乳に顔が埋まる。あぁおっぱい星はここにあったのか……。
しかし……嬉し泣きしてるから喜んでるのは分かるんだが、彼女たちは一体何語を話してるんだろうか? 少なくとも英語でないのは確かだ。まぁ俺は赤ん坊だから今は良い。
不意に巨乳から離されると、今度はメイド服のお姉さんがいきなり服を開け、金髪美少女よりも大きなおっぱいに俺を誘う。俺は抗う事ができなかった、する気が一切無かったともいう。
そしておっぱいから離されたことで気付いたんだが、俺の他にも赤ん坊がいるな。その子も一緒にメイドのお姉さんのおっぱいに導かれ、仲良くおっぱいを吸った。
そんなこんなで、おっぱい星人として充実した赤ちゃんライフを過ごしてるうちに気付いたのは、金髪美少女は俺の母親で、なんとこの国の王妃だ。マジか、俺って王子様? それ以前に俺ってば母親のおっぱいを吸って揉んで喜んでたのか、最低だ俺! でも赤ん坊だから無罪! 俺は悪くない。よし罪悪感消えた。
「クスクス、ジェイド様は甘えん坊ですわね」
最近分かったのはジェイドとは俺の名前だ、何度も呼びかけられれば流石に分かる。ついでにメイドさんは所謂乳母さんって奴で、一緒におっぱい吸ってたのは彼女の娘、リノアだ。所謂乳兄妹って奴か? 寝てるだけだと暇だからリノアとも遊んでやろう、はっはっは、ほっぺが柔らかいぞ、いつまで触ってても飽きない。あぁリノアは可愛いなぁ。
乳母さんは俺の世話が仕事な関係で、このリノアも殆ど同じ部屋にいる、メイドさんのおっぱいを堪能するときもリノアが一緒の時が多い。傍から見てると寝てる時以外、リノアの傍に居たがる俺は甘えん坊らしい、失敬な、遊んでやってるだけだぞ。その証拠にリノアだって俺が近くにいると嬉しそうにしてるじゃないか。
ただ数日に一回、無駄にキラキラエフェクトがかかってるイケメンが部屋に来ると、乳母さんは遠慮して別の部屋に行ってしまう。おう、親父よ、リノアが離れる時ぐずってただろうが、はよ仕事に戻れ。
しかし俺の内心は知らぬとばかりにイケメンは俺を甘やかす。忙しい合間に来てくれるのは、なんとなく察してるから愛想は振りまくが、はよ仕事いけ。俺がいないとリノアが泣くだろうが。
さて、俺って奴は妙に甘やかされてる。愛情たっぷりなのはありがたいが、コレって俺が前世の記憶なかったら我儘なガキになってないか? 物心ついた時からそれなりに教育はされてるけど、親父が家族の時間を取るとか言って頻繁に休みになる。
……まぁ王様やってて忙しいのは分かる、家族の時間を大事にするのは良いだろう。だが勉強の邪魔すんな親父。この世界には魔法があるって分かった瞬間から俺は勉強に忙しいんだよ。
そう、生まれ変わったこの世界には魔法がある、しかも王族は魔力が高い体質が多いって話だからそりゃ頑張るだろう。後は剣術とか浪漫だよな。人とか斬るのはごめんだけど、カッコよく使いこなしたいのは男として当然。
しかし、親父の意向のせいか教師たちも妙に甘い。隣で勉強してるリノアよりもテストとかの判定が甘いのが良く分かる。このままじゃいかん! 俺は魔法を使いたいし、剣術もやってみたいのだ。このままでは中途半端になってしまう。
と、言う訳で親父を説教した。勉強の邪魔すんなとはっきり言った。家族の時間に異論はないけど、ちゃんとスケジュール調節しろと。
親父はショックを受けた様子でなんか項垂れて執務室に籠ってしまった。まぁいい、お母様が上手く慰めてくれるだろう。俺は知らん。
翌年弟が産まれたから、どんな慰め方をしたのかは簡単に想像がつくな。ふん、どんなイケメンでも下半身が満たされれば、大抵の悩みが片付くのはどんな世界でも共通と言う事か。
それからというもの、教師陣は妙に張り切り勉強も訓練も厳しくなったけど望むところだ。リノアがちょっと涙目になったけど許せ。可愛いぞ、辛かったら慰めてやろう。
断じて俺に幼女趣味はないが、リノアは同い年だから抱き締めたりしてもセーフ。ぱっちりお目めの、おっとりした印象の美幼女であるリノアは、抱きしめると真っ赤になって逃げようとジタバタするので前世だったら通報モンだが、ここは専制君主制国家で俺は王様の子供。咎める人はいない、だけど女の子が嫌がる事はアウトだ。
しかし俺のセクハラは愛情があるし、周囲の大人たちは生温かい目線で俺たちを見てるのでセーフに違いない。
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17歳になった。親父に似て俺はイケメンであるようだ、育ちのよさげなお嬢さんたちからアプローチを良く受ける。ただ俺はリノアとデキてるので、上手くあしらいつつ日々勉強だ。
なんというか既に王宮では俺とリノアの関係は公然の秘密らしい。バレないように気を使ったんだけどな? ただ訓練の休憩時間で膝枕してもらったり、リノアが風邪をひいたときは王子の権力フル活用で看病したり。忙しい合間に手を繋いで城下町でデートを繰り返した程度なのに。
どこが気を使ってるんだって? 当然リノアを拘束しすぎて気疲れしないように気を使ったり、デート中楽しんで貰えるように細心の注意を払ってるぞ。キスやハグや口説き文句は二人きりの時しかしないから、なんでバレたんだろう?
「バレないと本気で思ってる訳ないよねジェイド」
「うん、リノアはモテるから気が気じゃない。アピール大事、常識だな」
世界一の美少女であるリノアがモテない筈がない。俺が言うんだから間違いない。貴族が集まる学園を卒業したらどんな手を使っても結婚を認めさせよう、とか暢気に考えていた日常は……ある日突然崩れた、リノアの病という形で。
原因は瘴気と呼ばれる毒のような魔力。この瘴気は強力な魔物が産卵の時期に周囲に巻き散らかされるもので、不幸にも我が国の近くの山中をドラゴンが産卵場所に選んだのだ。
古来よりこの国は瘴気が蔓延ると異世界から聖女を招き、浄化して貰う儀式があるのだが……遅い! そんな儀式、悠長にしてる間にリノアが苦しんでるだろうが! 記録によれば浄化には一年以上かかるじゃないか!
俺が騎士団を率いてドラゴンの討伐を急ぐように進言したが、父は頑として認めない、曰く俺は跡取りだからだとか……ふざけるな。惚れた女が苦しんでるのを前にして他人頼りなんて俺は認めない!
「だったら継承権なんざ弟に譲る! それで俺は跡取りじゃねぇ!」
会議場の大理石でできたテーブルをぶった斬り飛び出した。親父は何とか抑えるように命じるが、今の俺を捕らえることは出来ない。むしろ俺の主張に同調した若い騎士たちが馬や食料、装備なんかを用意し、付いて来てくれた。
ドラゴンの産卵場所に選ばれた山中は不自然なほどに静まり返っていた……いる。デカくてヤバいのが。しかも俺たちに向かって叩き付けられる殺気が尋常じゃない。
漂う瘴気の濃さはもはや猛毒のプールを泳いでるかのようで、考えなしで突っ込んでたら死んでたな……ははっ、くそ喰らえ、リノアと結婚するまで絶対に死なねぇよ。
徐々に強くなる瘴気と、ドラゴンから放たれる殺気。どうも俺たちの金属鎧の音が気に入らないようだ。チッ、デカいくせに細かい奴め。そし瘴気の霧の中を突き進む俺たちに業を煮やしたのか、とうとう直接的な手段で排除することにしたようだ。
ドラゴンの羽ばたきで瘴気が吹き飛ぶ。開けた視界には全長20メートルを超える、羽根つき糞トカゲが俺たちを睨みつけている。
「おい! 俺がドラゴンを抑えてる間に卵を破壊しろ」
「はっ! 殿下に勝利の女神が微笑むと信じております」
研究者によると、瘴気を発するのは魔物の卵が原因らしい。って事は卵を壊せば瘴気は徐々に消えていくだろう。同行した騎士たちは散開し、バラバラに山頂にあるであろう卵を目指す。そして俺はドラゴンと対峙する、力を貸してくれよリノア!
騎士たちの狙いに気付いたであろうドラゴンは山頂に戻り卵を守ろうとするが……逃がさん! 背を向けた一瞬で間合いを詰め、無防備な翼を斬る! 素手で。
魔法ってのは接触状態で放つのが一番効果があるので、体術と組み合わせて、触ると同時に発動する『斬撃』の術で翼を裂いたのだ。イメージは前世で好きだった漫画のキャラ。山羊座の人のアレである。
翼が無くてもドラゴンの強靭な四肢は山頂まであっという間にその巨躯を運ぶだろう。俺に背を向ければ斬られると理解したドラゴンは、巨体に見合わない俊敏さで襲い掛かって来る。
速い! 振るわれる爪、牙は躱すので精いっぱいだ。距離を取れば、縦横に繰り出される棘の付いた尾が岩を砕き、散弾のように俺に襲い掛かる。そして足を止めればまたその爪牙が振るわれる。
爪も牙も、俺の金属鎧なんて紙のように切り裂けるだろう。しかしその巨体故に大振りで、少しずつ斬撃でドラゴンにダメージを与え続ける。牙を躱せば首を、爪を避けて胴を斬る。流石のドラゴンの身体は岩をも切り裂く俺の拳でも浅くしか斬れない、だが十分。卵を壊せば俺の勝ちだ。
そんな油断が良くなかったのか、それともドラゴンの知能を甘く見過ぎていたのか。このドラゴンが砕いて脆くなった岩場に誘導されていたのだ、爪を躱し胴を斬ろうとした瞬間。ドラゴンの尾が地面を叩き、砕けた岩盤が足場を奪う。
「しまっ……」
そして振るわれる剣よりも長大で鋭い爪が俺の首に迫る。躱せない。受けられない。迫る爪、一瞬の後に訪れる死……弾き飛ばれて岩場に叩き付けられる。ヤバい骨が何本か折れた。ダメージで足に力が入らない……なんで俺生きてるんだ? 首と胴が泣き別れでもおかしくなかったのに。
ドラゴンを見ると……前足から血を流してる? よく見れば爪が、いや前足が切断されてる……あの切り口は……俺? 俺がやったのか。
ドラゴンの怒りの咆哮を前にして俺は妙に落ち着いた気分だ。痛む身体に鞭打って何とかドラゴンに近づく、ドラゴンは後ずさる。前に出る。ドラゴンは下がる……。
さっき俺はどうしたんだっけ、先の感覚を何とか思い出そうとしながら、何故か出来ると確信し歩を進める。ドラゴンは片方の前足を失いながらも、全身を沈め俺を睨む。来るか……。
全身を駆動させた20メートルを超える巨体が飛びかかって来る。小細工一切なしで、最期に己の最も頼りとする牙に全てを込めて、俺を食い殺さんといわんばかりに。
だが俺にはドラゴンの巨体がひどくゆっくりとしか見えない。圧縮した時間の中右手に意識を集中、研ぎ澄まされていく魔力。身を捻って牙を躱す。
ひどく遅い時間の中で、ドラゴンの首に手刀を当て……そのまま巨体を両断した。最後の一瞬、ドラゴンの口が開き、聞き取りにくい、けれどもはっきりと……。
―――汝の名は……。
「ジェイドだ。そして御身に感謝を、今我が拳は竜殺しの剣として完成した。銘は竜殺し」
―――ふっこれも天地の理、力及ばねば消えるのみ……見事であったジェイド……おぉ我を討ちし竜殺しよ永遠なれ。
そして……ドラゴンが事切れたと同時に、俺もまた意識を失った。
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どうやら騎士が助けてくれたようだ。目を覚ますと寝室だった。なにやら賑やかで、外に意識を向けると王宮の中庭から笑い声と楽し気な音楽が聞こえてくる。
「目を覚ました?」
「リノア……起きても大丈夫か?」
暗い寝室、部屋にはリノアだけだ、俺が出立するまで病に苦しんでたのに、大丈夫なのか?
「うん、瘴気による病の特効薬はドラゴンの血でね。一番最初に飲ませて貰ったよ」
「そうか……良かった」
全身骨折して動けないが、リノアが元気になったなら、親父に啖呵切ってドラゴンと戦った甲斐があったというものだ。
安心したらまた眠たくなってきたので、瞼を閉じる。そして意識が落ちる前、唇に温かく柔らかいモノが触れた気がした。
怪我が治ったらその後が大変だった。親父やらお母様には怒られたあとで号泣されるし、以前よりアプローチしてくるお嬢さんたちが増えた上、他国のお姫様達から結婚の申し込みが多くて、ゆっくりできやしない。
しかも俺が戦ってる間に召喚したらしい聖女様とやらも、なんか馴れ馴れしいし……困る。こっちの都合で呼び寄せた人なんで、あんまり強くも言えないのがとても困る。リノアが拗ねるのが最も困ってる。
よし、ドラゴン討伐のお祝いの席で大々的にリノアにプロポーズしよう。それで縁談攻勢は止まるに違いない。
その後、すったもんだの挙句リノアとの結婚を周囲に認めさせ、数年後に国王に即位した。親父はまだまだ現役の癖にさっさと隠居したのは、お母様とイチャイチャしたいからだとか。くそっ、俺もリノアとの子供が一人前になったら隠居してやる。
王になり忙しい合間を縫って、お腹の大きくなったリノアとの時間を楽しみながら。そんな未来を誓うのだった。
読んでくれた皆さまありがとうございました。
最初乙女ゲームの攻略対象に転生話を書こうとしたら何故かこうなった。