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飼い犬に手を千切られる勢いなんだが。  作者: 高 源
第1章 愛犬の腹を撫でるのはセクハラだそうだ。
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第1章④ スプーンは甘え。

忘れかけていた悪事を暴かれ、あのおっとりとした母にボコられ、さらには恥辱を心に刻まれ、意気消沈。

やりすぎた、と謝られつつ目の前に置かれた母からのプリンはいつの間にやら手元になく、蓋を開けずにそれを不思議そうに見回す名探偵ミカン。


「それ、俺んだぞ」


一応、正論のはずなんだが、彼女は学校で見せたあのおっかない目をこちらに向け、グルルっ、と唸って見せた。

これは話を戻そう。


「ほんとに、君は俺の最愛のミカンちゃん、でよろしいのでしょうか?」


本当はもっと強く言いだしたかったんだが、どうも自然と下手に出てしまう。

彼女はそれを無視、視線はプリン一択といったところか。

楽しみにしてはいたが、このまま話を聞いてくれないと進まないと思い、仕方なく差し出すことを決意。

今この時の意味不明な状況を解決出来ると思えば、安い犠牲だ。


「それ、食べていいぞ?」


少し注意がこちらに向いた気がした。

お、好感触か?

しかし、その考えは外れていたのか、まだプリンを見ている。


「食べたいんじゃないのか?」


「わか・・い」


そう尋ねてみると、彼女はなにやらボソボソっと呟いている。

あまりに小さい声なものだったから、もう一度訪ねることにしてみたのだが、


「あの・・・」


「食べ方が分かんないって言ってんの!!!」


周りのものを吹き飛ばす勢いで怒鳴るミカン。

いきなりの大音量に唖然としていると、彼女は顔を真っ赤にし、潤んだ目でこちらを睨んでいる。


「ば、馬鹿にしてんでしょ」


「え、いや別に・・・」


「昨日の夜までは犬だったんだから、しかたないでしょ・・・っ!」


彼女が愛犬だったなんて、まだにわかに信じがたい気持ちではあったが、シュンとした姿の可愛らしさに、どこか面影を感じた。

・・・信じてみるか。


「はあ・・・」


「な、なによ」


「そうならそうと、早く言ってくれりゃいいのに」


容器に引っ付いたプラスチック製の蓋を、ぺりぺりっと剥がしてやると、いままでの鬼の様な形相が一瞬、純粋な眩しい笑顔に変わった。


「か、かわい・・・」


しかし、そう思ったが刹那、彼女はプリンのカップに顔を埋め、周りにカラメルが飛び散るのを気にしてない様子で食べ始めた。


「おま、犬食いはやめろっ!スプーンを使えスプーンをぉぉぉ!!!」


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