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飼い犬に手を千切られる勢いなんだが。  作者: 高 源
第1章 愛犬の腹を撫でるのはセクハラだそうだ。
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第1章② 転校生は狼チワワ。

あの後、岩井は転校生から、顔面にチョークを受けた。その投球フォームは、プロ野球の投手さながらであった。

質問タイムはこの後、誰も発言することなく幕を閉じた。

あんな自己紹介の後だ、もちろん彼女に転校生に対するおきまりの質問責めはなく、一人でポツンと窓の外を眺めているといった様子。

ボッチの気持ちは痛いほどわかる。といっても俺にはあんな奴だが岩井が話し相手になってはくれるが、あの子はその岩井にあの行動。さすがの岩井でも、相手しないだろう。ちなみに奴は保健室だ。そろそろ帰ってくるはず・・・。


「ただいまー!!」


噂をすればなんとやら、扉には額にくっきりとチョークの後を残した岩井の姿が。

あんな豪速球、いや、球というよりチョークだが、それを受けてヘラヘラしているとは、あいもかわらず頑丈なやつだ。空元気でないとは限らない。さすがに労いの言葉の一つでもかけてやるか。


「お疲れさんだな」


「うーむ、あの見事な投球フォーム。是非我が野球部に欲しい」


「お前帰宅部だろが」


・・・心配も無駄なようだ。

それにしても岩井は、どうも落ち着かない様子。どうせ便所だろ、そう思ったが束の間、奴はとんでもないことを言い出した。


「よっし!もう一回話しかけに行こう!」


「いやいやアホなの?!」


あんな暴力さながらのロケットチョークを喰らって、まだそんなこといいますかこの無能トリ頭は!

しかし岩井は、注意勧告を一切聞かず、なぜか俺の腕を引っ張り歩き出した。もちろん向く先は、あの転校生、犬飼ミカン。

必死に持つ手を引き剥がそうとするが、無駄に鍛えられた握力の前には成すすべがなかった。

そういえばこいつ、ある日急に体操選手になるとかいって、1日鉄棒にぶら下がってた時期があったな。


「待て待て待て!なんで俺も?!ひとりじゃないの?!」


「さっきは一人でダメだった、なら今度は二人!数で勝負!!」


「いや、一人ぐらいじゃ変わらんだろアホなの?!」


俺は教室の狭さを呪った。説得の時間はなく、ものの数十秒で、犬飼ミカンの机の手前に到着。

彼女はまだ窓の外を見ている。よし、今のうちに引き返せばまだ間に合う・・・


「やいやい転校生!元気かな?俺は元気、ってことはキミも元気。違うかな?」


「・・・」


馬鹿ぁぁぁぁっ!!?

え、なにその挨拶?!新しすぎない?!斬新すぎやしませんか?!

待て待て、その前になんだその顔。ドヤ顔してんじゃねえよ!決まってねえよ!!

ああもうダメだ、これで俺も地獄の右ストレートチョークの餌食か、母さん、父さん、そして愛犬ミカンよ・・・、私はここで倒れます。先立つ不幸をお許しください。


「にしても犬飼って、アラタと一緒じゃん?もしかしてもしかして、双子?」


「いや待て待て!それまでにしとけ!失礼だろ?!双子な訳ないだろ?!会ったこともなけりゃ、見たことも、聞いたこともありません!」


「・・・ちっ」


ひいっ、いま舌打ちしたよな?!

ヤバイよヤバイよ、琴線にふれたんじゃないのか!?

こっちすっごい睨んでるし、これはもしかしなくてもだな・・・!

ガタッ、と勢いよく立ち上がった彼女。

ああ、これで俺の高校生活は本当の意味で終わる。

棺桶には、犬の写真をどっさり入れてくれと頼んでおけば良かった。

しかし、そんな心配をよそに、彼女は教室を立ち去った。


「・・・助かった?」


しかしこの後、彼女は姿を現さなかった。

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