見たもの、それは予想以上
シルエットを頼りに見つけた人は、確にライト様だった。
しかし、まるで別人かと思うほど、彼とその周りの状況は酷いものだった。
彼は、服の大半を赤く染め、周りの敵と思われる人は既に息絶えている。それだけなら私も驚くことはない。しかし、死体の腹部は中が見える程荒らされ、彼が自分の顔にかかったと思われる返り血を舐めていれば、いくら血を見慣れていても流石に驚く。
「ライト、様…」
どのような状況なのですか?
そう聞こうとしたが、それ以上声を出すことは出来なかった。
「ミーナ、走ってきたのですか?お疲れ様でした。でも、この通り、もう終わったので大丈夫ですよ。」
「ぁ…」
いつも通りの笑顔を浮かべて近づいてくるライト様に、少しだけ心が落ち着いたが、相変わらず声を出すことは出来ない。
(おい、大丈夫か?)
大丈夫なわけがない!今何をすべきなのか頭が回らない。
ライト様の"中"のことについて確認しなきゃ。騎士団の皆を呼んで、足下の味方の回収もしないと。いや、ここは危険かもしれない?
もうわけがわからない。心の準備はしてきたつもりだったが、実際こうなると、そんなものは意味の無いことだった。
「ミーナ?」
(早く聞けよー。もし何かしてきても、オレは準備できてるぜ。)
「……わかった。」
「え?」
ライト様の疑問を無視して、大きく深呼吸をする。
「ライト様、足下の敵をその様な状態にしたのはあなたですか、それとも、"中のもの"ですか?」
「なぜ…そのことを、」
「"中のもの" だったらどうするんだ?」
「っ!」
今、確に殺気を感じた。
「私が人ではないと断言できるか?私がライトではないとなぜ言える?見た目はそのままだというのに。」
わかるに決まっている。口調、雰囲気がまるで違う。今の彼をライト様と言うのは無理があるだろう。それに、
(どう考えてもオレと同じ部類のやつだろ。)
レイもこう言っている。
(でも、まずいな。国王様の意志が全く感じられない。そいつは、言葉通り乗っ取ってる。)
「あなたは…なんですか。ライト様を返してください。」
「ん?私か?私は、」
彼は、不敵な笑みを浮かべて言う。
「死神だ。」