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プロローグ
どのくらい戦って、走っただろうか。
そんなことも考えられないくらいに、疲れていた。
「兄さん、早く!まだ追っ手がっ!」
「くそっ、ここは俺がなんとかする。おまえは先に行け!!」
「なんとかって・・・無理だよ、もう体力も無い!」
「いたぞ!あそこだ!」
追いつかれてしまった。たくさんの敵に。
「まだあんなにいるのかよっ、ほら、早く行け!」
「でも。」
「早く!!」
「っ!」
ごめんなさい、兄さん。
私を怨んでかまわないから。
一人で逃げた私を・・・
―*―*―*―*―*―*―
「大丈夫ですか?何があったのです?取りあえず、手当をしなければ。あなたの名前は?」
「・・・」
声を出したつもりなのに、まったく出ていなかった。
たしかに、ここへ来るまで飲まず食わずだったから、仕方がないだろう。
(オレが代わりに話してやろうか?)
いいえ、結構よ。今あんたを出すくらいなら、話せない人と思われたほうがマシ。
「取りあえず城に連れて行こう。誰か、手伝ってくれ。」
城?この人は誰なんだろう。
そんなことを考えながら、私は意識を手放した。